昨日は東京国立博物館の庭園でお花見をした感動をアップしましたが、今日は桜を「衣食住」に纏い愉しむ日本文化をアップします。上野駅から東京国立博物館迄私の脚で約10分を要します。その間桜を観ながら、ベンチに腰かけて「長命寺桜餅」を食べ、国立博物館の庭園でお握りを戴きました。
国立博物館の庭園方丈池の畔に枝垂れ桜が自生していてそのわきに椅子と卓が設えてあるのでランチしました
椅子の横に京都好みの紅枝垂れ桜が咲き誇っていました。紅枝垂れ桜は舞妓さんの花簪は紅枝垂れ桜を意匠しているのでしょう。一見すると「藤の花」の様ですが色が桜色です。昔から京都人は桜と云えば「山桜」ではなくて「枝垂れ桜」だったのでしょう。
京都円山公園公園の枝垂れ桜、昔から都では枝垂れ桜が桜の代表だったのでしょう
4月の舞妓さんの簪は枝垂れ桜です
ポスターに使われた鳥文斎栄之筆《金龍山桜花見》江戸時代・18世紀 は伝統の樹下美人図でした
文化(カルチャー)とは民族が自らの手で築きあげて来た有形・無形の成果の総体です。日本文化と云えば貴族や僧侶が保護し楽しんだ芸能や文学と想い勝ちですが庶民が日常に使用した茶碗も民謡も同じ日本民族の文化です。絹の着物が文化であると同時に木綿を紡いで織った絣も久留米絣や黄八丈浜絣の例をあげる迄も無く友禅に劣らない日本民族の文化です。
《振袖 染分縮緬地枝垂桜菊短冊模様》江戸時代・18世紀 は桜と小鳥が春を謳歌しています。此れを纏って花見に出かけたのでしょう
「細雪」は谷崎潤一郎の代表作ですが小説の冒頭は船場の四姉妹平安神宮内苑の枝垂れ桜を眺める場面に始まります。美しく裕福に育った四姉妹の幸福な状況は船場の没落と共に陰を差して行きます。
平安神宮の紅枝垂れ桜
八〇年台の映画細雪四姉妹は左から
長女・鶴子(岸惠子)、次女・幸子(佐久間良子)三女・雪子(吉永小百合)四女・妙子(古手川祐子)
下地が青い小袖これも枝垂れ桜が染められていました。
桜色を際立てるのは青色なのでしょう。京都南座で開かれる恒例の「みやこおどり」は八坂の舞妓・芸子が総員出て芸を被露します。上の小袖の下地は群青ですが「都踊り」で舞う舞妓さんの薄い青です。多分薄い青は鴨川の水の色で。舞妓さんの白い肌を最も美しく引き立てる色で西陣の匠が創作したのでしょう。
京都南座で開催される「都おどり」の舞妓さんの衣装は春を寿ぐ意匠です
先日日本画の女性大家がTVで画材を説明していました。筆で絵の具を下ろ画材には油絵では「カンバス」日本画では「和紙」もあるのですが陰影を際立たせる画材は絹だそうです。先ず絹の表面から表を描き、次いで絹の画布を浦返しにして陰影を際立たせる様に裏地に絵の具を落とすそうです。私は有田の「青絵」を想い出しました
東京国立博物館に展示されていた有田焼
東京国立博物館に展示されていた本阿弥道八の茶碗
有田焼の青は呉須(ゴス)という顔料で描かれています。その上に様々な顔料を乗せて二度焼きします。絹の画布を使って裏表から絵の具を落として陰影を表現する描法と有田焼の二度塗りは良く似ています。 【了】