※9月20日、青森ペンクラブ講座(成田本店しんまち店二階ギャラリー)のレジュメです。
当世若者短歌事情
木村 美映(歌人・未来山脈社本誌歌評者)
・自己紹介
1969年青森市生まれ。弘前大学人文学科経済学部卒。元病院職員。
1980年、第25回全国学芸コンクール小学校短歌の部佳作受賞以降、歌作を継続。
波止場の会を経て現在は未来山脈社所属、光本恵子門下。『未来山脈』本誌歌評者。
けやきの会代表。短歌誌『美映』編集発行人。文芸誌「青森文学」編集長代行。
第33回全国短歌大会 優良賞
縮小に転じた宇宙に生きているロスト・ジェネレーションの憂鬱
平成25年度NHK全国短歌大会 入選
平成25年度伊香保短歌大会 入選(伊藤一彦選)
第1回河野裕子短歌賞 入選(俵万智選)
第19回与謝野晶子文学賞 入選
第67回青森県短歌大会 青森県知事賞 第68回同大会選者・青森県議会議長賞
第25回青函交流短歌大会 青森市議会議長賞 第26回同大会選者
第39回青森県短歌賞 準短歌賞
第14回未来山脈社新人賞
第 3回三文賞 佳作
第20・22回ときどき歌会 ベスト・オブときどき(最高得点者)
新聞歌壇「赤旗・読者の文芸」 入選二度
著書「生きぬくための詩68人集」(コールサック社)へ「回向」三十首
近刊「未来山脈選集2012年度版」へ「悪魔の証明(抄)」八首。
・アララギの終刊と結社組織の衰退
「アララギ」終刊(1908~1997)
角川「短歌年鑑」の統計によると (光森裕樹氏のブログによる)
1980年…335の結社と10万人以上の会員
↓半減
2012年…260の結社と4万7千人の会員
継承すべき文学理論の喪失
高齢化
・短歌総合誌の公募賞における「一発屋」の擡頭
短歌総合誌五誌による主な新人向け公募賞
「短歌研究」…短歌研究新人賞(未発表三十首)寺山修司
「短歌」…角川短歌賞(未発表五十首)中村雅之(江流馬三郎)、梅内美華子
「歌壇」…歌壇賞(未発表三十首)佐藤羽美 ※木村は2014年に応募(結果待ち)。
「現代短歌」…現代短歌社賞(個人歌集を発行していない者。三百首)※木村2013年予選 不通過。
「短歌往来」…ながらみ書房から第一歌集を発行したものから新人賞を選考。
かつては地元や結社で賞を取ってから、総合誌に応募するものと指導されていた。
スターを生み出すことが版元の目的、最近はインターネット系の派手な口語短歌が票を集める。結社や地方歌壇からの応募は軒並み苦戦。県知事賞受賞者でも予選通過程度。
現在は無所属の歌人がいきなり応募・受賞している。受賞後も結社に所属せず、いつの間にか消えていることが多い。
・結社から同人誌へ
「かばん」や「短歌ヴァーサス(休刊)」と「うたらば」・「うたつかい」の違い
ツイッターなどで仲間を集める。内輪のなれ合い的な評が多い。
・かんたん短歌、ケータイ短歌、そして胸キュン短歌
俵万智「サラダ記念日」、穂村弘「シンジケート」、枡野浩一「てのりくじら」
生活詠・時事詠はほぼ皆無。写生歌でなく空想による恋歌が圧倒的に多い。
虚構性が高く、歌の内容から作者本人を知ることはできない。
文語旧仮名は読めない・詠めない初心者~中級者レベル。つまり同じ口語短歌でも、
自由律短歌などの流れとは異なる自然発生的なものに過ぎない。
文芸というよりコミュニケーションツールの側面が強い。
部活・サークル的感覚で横のつながりを重視する。
イベント的なものが多く、流れが速い。
先人の歌を読まない傾向…結社への拒否感をも内在
※「現代短歌」9月号86ページ、楠誓英さんの提言内容
多くの場合「歌会」はTwitterの単なるオフ会と化している
・流通形態の多様化
文学フリーマーケット(年二回。東京と大阪)が始まったのが契機。
ネットプリント歌集・同人誌、折本…発表の「場」だけでなく、「謹呈」文化が形を変えたものとみて良い。(資料…私の出したネットプリント二種)
一方、「新鋭短歌シリーズ」、オンデマンド歌集など、あくまで「謹呈」を拒否する流れもある。
結社の指導なしに、誰もが気楽に出せるようになったぶん、粗製濫造気味。
評論の不在、批判を極端に恐れ誉め合いに終始している(故・小高賢さんの指摘)。
・これからの結社に求められるもの
結社所属歌人が減少する中、大手の「未来」、「塔」、「コスモス」は若手の育成に熱心で、会員を着実に増やしている。「現代短歌」7月号、大辻隆弘さん(「未来」選者)の論文より。
・最後に