昨日のこと。研修を終え帰宅した私。
乗務中は禁煙、マナーの問題は切実なので、これを期に禁煙することにした。
推敲の終わった新作を総合誌に投稿。採用されるとも思えないが、何となく。
寝る準備をしていたら馴染みの店から電話。先日のお礼を兼ねて顔を出す。
今日、研修は休み。
日がなモニターの前に座っていた。
といってもここ数日新しい歌は詠めてはおらず、応募作品の推敲に費やしていた。
明日の歌会は欠席なので、特別新しい歌は用意していない。
夕方、療養時代の仲間からライン。どうやら回復して他県に引っ越したらしい。事情が事情なので、地元には帰れないのだろう。
「現代短歌」12月号到着。師匠光本の作品をまず読む。次いで現代短歌賞の結果を読む。日頃お世話になっている波濤の寺澤さん(波濤賞受賞者)が佳作。昨年の県短歌賞では、彼が奨励賞(第二位)で僕が選外(第三位)だった。地元では僕には期待票の上乗せがある印象だが、本来の実力に関しては、僕は彼の足許にも及ばないことを知っている。
そういえば明日の歌会に、波濤選者の八島琢二先生はお出でになるのだろうか。
夜はグループ誌1月号の編集作業。ダイジェストは年末に放流予定。


(12日のライブでの一幕。T子様ありがとうございます。)

転職のため(というか再就職とするのが正しい)4日から10日まで秋田県横手市へ二種免許の合宿に行った。教習延長もなく無事卒業検定を終え、12日青森県免許センターへ。筆記は97点で合格、正式にタクシー会社への就職が決まった。
本社での研修に出版記念朗読会や文フリが重なり、出席を断念。当面仕事に専念する意味で、今後しばらく首都圏でのイベントへの出席はなくなった。その過程で多方面にご迷惑を掛けてしまったことが反省材料。
12日夜、まんぶるずでのライブ。スズッキーさんと組んで、歌のユニットとして参加。三曲歌い、合間に短歌の朗読を交えた。この間、個人練習の場を提供して下さった行き付けの店のママも、店の多忙な中駆け付けて下さり、恐縮しきり。こめぷろさんルートでいらした市民図書館長(「エディデヤ」同人)にも喜んでいただけたのは嬉しかった。
館長と打ち上げの時話したが、「生きぬくための詩68人集」を図書館で欲しいと思って申請していたら、私から寄贈があったとのこと。
今昼、さくら野デパート前で詩の師匠と偶然一緒になる。バス待ちの間、この間の経過報告や、『エディデヤ』4号の打ち合わせ。
今日は初雪。お約束の暴風雪である。本社から帰宅した際に届いたH先輩(けやきの会)からのメールに、寒さが和らぐ。
今夜は県短歌賞へ応募する三十首詠「桃の断章~Voules-vous~」の仕上げをしてから寝る。研修が始まれば、短歌どころではなくなる。正直な話、結社誌へ毎月提出する十首すら怪しそうだ。
昨日のライブの音源をアップしたら、来れなかったウヰスキー倶楽部(バンド仲間)から続々ライン。リクエストは「思い出のスクリーン」だと。

天:25露光る敷石ひとつ踏みそこね確ときめたる思ひが揺らぐ

何を「確ときめた」のか、この歌では明らかにはされていませんが、おそらく人生に関わる重大なことだったのでしょう。「露光る」とありますから、時制は朝でしょうか。夜通し考えて結論を出したにも関わらず、敷石に滑ったのをきっかけにその結論が揺らいでしまう。この歌は上句の描写が秀逸です。

地:69トラックに壊されしねぶたのむくろ見ゆ鮮やかなりし色の哀しさ

ご存知の方も多いと思いますが、私はとある大型ねぶた運行団体の人間ですから、この歌には特別惹かれるものがありました。運行を終えた翌日、八日は小屋の撤収作業が行われ、その際に賞を得られなかったねぶたは全てユンボで解体されます。私は毎年その瞬間に立ち会いますが、実にさびしいものです。ただ、結句「哀しさ」が少し言い過ぎですし、上句の韻律にも難があります。その分割り引かせていただき、地という評価をいたしました。

人:14夏の夜に明るい雨の降る日です昨日のわたしを捨てられそうな

外の天気の描写から視点が変わり、下句では心象詠となっています。昨日の私がどうだったのか、これは上句から類推するよりありませんが、具体的なエピソードは省かれています。その点で、若干天地の歌よりは薄味かもしれません。もう少し「昨日のわたし」を知りたいところです。

秀逸:24絶滅の危惧に触れつつうなぎ屋の暖簾をくぐる人ら明るし

うなぎの資源減少について詠まれた時事・社会詠の類です。絶滅に瀕したうなぎでも、食べたい衝動を抑えきれない人間の業が浮かび上がります。ただ、この歌からは主人公が店内にいるのか、外で傍観しているかは見えてきません。そこが残念でした。でもこの詩形ではこれが限界でしょうか。

秀逸:29しゃぼん玉四つ五つと飛び立ちてパチッと弾け蝶おどろかす

一読絵の見える歌です。さりげない様子を良く捉えられました。ただ、「パチッと」はやや表現として砕けすぎたきらいがあります。実際そう言う音は出ないわけですから。擬音・擬態語の扱い方は難しいですね。

秀逸36海底のトンネルの闇押し寄せる魚とヒトの蒼い哀しみ

トンネルを列車が通過するとピストンのように海底の闇が押し出されていく。それは海峡に棲む魚や、対岸に別れて住む人間の哀しさをも運ぶ、という意味でしょうか。着眼点が面白いですが、やや色に寄りかかり過ぎかもしれません。蒼い闇が、必ずしも哀しみを意味するとは限らないからです。

秀逸64死の灰を浴びし漁夫の沈黙は六十年いま秘文明かさる

NHKスペシャルで先日放送されましたね。ビキニ環礁で被爆したマグロ漁船は、第五福竜丸だけではなかったということ。被爆体験を漁師たちはいままでその事実を明らかに出来ず、苦しい思いをされました。いい歌ですが(りょうふ)は本来(ぎょふ)と読むのが正しいですし、「秘文」はやはり「秘密文書」と表記したいところです。

秀逸:59麦わら帽目深に墓の草を引く眠れる父に寄り添いながら

なぜ主人公は「麦わら帽を目深に」かぶるのか、お盆と云う季節的なことだけではなく、おそらく泣いているのかもしれませんね。もしかすると亡くなったばかりなのでしょうか。歌としては完成されていますが、やや類型が多いようです。そこを割り引きました。

 

以下、佳作は番号のみ申し上げます。

181115192731353765番です。

 

(当日の全首評より担当区間1927

19ボリュームをあげて烏賊売る軽トラック朝の扉を開きつつ来る

佳作にいただきました。夏の朝の風景が描かれていますが、下句はややありきたりな着地点かと思いました。もう少しひねるか、さもなくば写実に徹するかのほうが良かったと思います。

20、うさぎ座の兎と二円の雪兎ならべて貼りし友からの文

消費税値上げによって、かつての80円切手、50円切手はそれぞれ2円切手を貼ることになりました。着眼点は良いのですが、以前うちのグループで出された歌に類型がありまして、残念ながらそれを超えませんでした。

21美少女の美術史展を気乗りせず訪えばいつしか惹きこまれゆく

先日まで県立美術館で行われていた「美少女の美術史」展を詠まれました。ちなみに現在は静岡で行われております。短歌関連では、穂村弘さんの「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」のイラストを手掛けたタカノ綾さんも出品されていました。この歌は主人公がなぜ「惹きこまれた」かの描写に欠け、ただの報告になってしまったことが残念です。

22大平のストーンサークル間近には北海道新幹線線路造られてゆく

ストーンサークルと新幹線、二つの歴史の隔たりを表現されたのでしょう。着眼点は良いですが、事実の報告から抜け出せていない印象です。また、字余りの下句にももう少し工夫の余地があるでしょう。

23担ぎ屋の訛声とびかう日本一長いホームも 杳きまぼろし

青森駅ですね。改札から乗車までのアプローチが長いですから、当時は担ぎ屋さんの需要も大きかったのでしょう。気になったのは、結句がやや安易なのと、その前の字空けです。これは必要ありませんね。

26、主治医より母の病状の告知あり確と受け止め施設を出づる

重大な告知だったのでしょう。私も母を看取った経験があり、思いを敢えて控え目に表現されたことには共感できますが、上句のリズムの渋滞がやや引っ掛かります。「母の病状の」と言うところです。「告知」とあれば「病状」は不要かと思います。また下句はやや説明調と言えるかもしれません。

27いくつかの雨かんむりの字をかけば雫したたるかすかなけはひ

佳作にいただきました。雰囲気を含めてとてもいい歌ですが、主人公が雨かんむりの文字を書く必然性が良くわかりません。そこをもう少し読み取る手掛かりがあれば、もっと上位に採ったと思います。

 

時間の関係でいささか駆け足の評になり、申し訳ありません。お許しください。以上で私の評は終わります。ありがとうございました。

傍観や沈黙という選択のために生まれたつもりはないが

SASPLのデモを報じる朝刊を読みつつ選挙事務所へ急ぐ

埋めようのない空虚さと孤独感 デモの列なら過ぎてしまった

この街に夜の八時が近づけば連呼の声もドップラーして

講堂に子らの観ていた映画にはエンドロールは流れなかった

空爆は今夜も止まずシーシュポスはそれでも岩を運び続ける

暗幕の中に息づく子どもらの瞳を僕の戒めとして

崩された防潮堤の向こうにも朝陽は射すということを知る

傍観も選択のうち今日明日に答えの出せない問いもあるから

音楽室の灯りは消され月蝕を見ながら唄うアメイジング・グレイス

※「うたつかい」十月号に出した歌に五首加え、さらに推敲しました。

浅虫へ向かう電車の網棚で麦藁帽子が笑っています

テラスから海を見ていた昼休み3ケルビンの熱が恋しい

無力だと知る夕焼けに照らされて二つの丘の夢を見ている

思い出と手をつながずに歩きたい過去完了形の恋があります

性愛の最中に聞いたさよならを居間の鏡はそっと見ていた

誘惑に乗ったつもりはなかったよ鏡に映るあなたを見ても

トモダチに戻りたいねと呟いてサイコロを振る流星の下

許されぬ相手に恋をしたことをわずかな僕のプライドとして

海沿いのカーブを曲がるクーペから君のリングは鈍く光って

もう君が来ることのないホールにはフォーレのレクイエムが響きます