デッドストックユニオン vol.33 『恋しくて』 | 落語・ミステリー(もしくは落語ミステリー)・映画・プロレス・野球・草バンド活動のよもやま話、やってます。好きな人だけ寄ってって。

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鎌田善和です。売れてない分時間はありますので、遅まきながらブログ始めました。記事は落語やミステリーが中心ですが、映画・野球・プロレス・草バンド活動(野球でいう草野球の事)もリストアップしておきます。気になる、興味がある、と思う人にだけ伝われば。

 今日は珍しく、「久々の」という形容詞を付けなくても良さそうなタイミングでの更新です。ただ内容はと言えば、これまた前回のように落語ミステリーとは何の関係もありませんので、その点はご了承ください。

 さて昨日、あのミゾレ交じりの雨が降る(”ボタ雪の中に雨が混じって落ちてきている”という方が表現としては正しいような気がしましたが)中、ウッディシアター中目黒で表題の舞台を拝見してきました。今日はそれについて書きたいと思っています。で、それについて書く前に、余談を1つ。東京周辺にお住いの皆さんは僕と同じ体験をされましたが、昨日は11月とは思えない寒い日でしたよね。11月としては観測史上初の積雪だの、最高気温が3℃だのと前日から大騒ぎをされていまして、かつ、ほんの数日前には最高気温が20℃に届こうかという日を過ごしましたからね、歳を取るとこういう落差には弱ります。人間だから何とかなっていますが、機械だったらエンストを起こすんじゃないのと文句の1つも言いたくなる気候に対応するため、準備万端に厚着をして出掛けました。すると、公共交通機関の乗り物が総て暑い!こっちは厚手のジャケットの上にダウンのベンチコートを羽織ってるんですよ、外を歩くのに適した仕様で。僕は中目黒まで地下鉄の乗継で移動したんですが、最初の地下鉄に乗って1駅ですぐにじんわりと背中に汗をかき始めまして。弱ったなと思いましたが、ベンチコートを脱いで手に持つのは嵩張って周りの方々に迷惑になりますからね、我慢したんですよ。幸い、2駅目でかなり空きましたので、それ以上汗をかくような状態にはなりませんでしたが、でも中目黒駅を降りて劇場に向かとすぐに汗が冷えてきまして、途中で、寄るべき用事もないのに、コンビニを見つけては、そこに入って体温調節をしました。でも、コンビニに寄る以上、冷やかしというのも気がひけますので、1軒目でのど飴を買って2軒目であったかいお茶を買って…ということになりますよね。まあ大した散財ではありませんが、特に今欲しいわけではないものを買ってポッケを膨らますのはあまり愉快ではありません。テレビ番組の”お天気コーナー”のようなところでは、家の中のヒートショックをやたらに注意喚起しますが、こういう”人為的ヒートショック”のように、ちょっと気遣ってくれれば避けられそうなものこそ避けて戴けないものでしょうかね。まあ、と言った年寄りの愚痴はこれくらいにして、本題に入るとしましょう。

 そんな思いまでして観に行った標記の舞台ですがね、いや~これが面白かった!!面白いだけでなく、実はほんの少し前に観劇した雀組ホエールズさんの舞台との不思議な共通点を感じましてね、個人的にはその相乗効果もあってより楽しめたんじゃないかと思います。しかも!!僕が座った席の斜め右後ろの席に、なんと、その雀組ホエールズさんの舞台に出ていらっしゃった女優さんがいらっしゃいましたのでね、余計にそんな気がしたのかもしれません。その方については後で書こうと思います。

 今回のデッドストックユニオンさん(お名前が長いので、以降はDSUさんと省略させて戴きます)の舞台、雀組ホエールズさんの舞台同様、前回はいわゆる”社会的にメッセージ性が高い”内容だったのが、今回のは”エンタテインメント”性の方に重点が置かれていました。もちろんどちらの舞台でもそれぞれに、前回のような重いテーマの舞台であってもキチンと”エンタテインメントとして(下世話に言えば、いわゆる商業演劇として)充分に成立していた”のと同様、今回の作品でも、作者さんが伝えたいメッセージというか、舞台の根底に流れている主張といったものが話の体幹としてあるのに疑う余地はないのですが、それを伝える手法や舞台が進むにつれて巻き起こるうねりみたいなものに明らかな違いがありました。更に僕が面白いと感じたのは、「作者さんが主観的存在であるか客観的存在であるか」によって、それぞれの団体の色が濃く出るものだなあという点でした。雀組ホエールズさんの舞台に作者の佐藤雀さんは出ません。その代行のような存在が阪本さんなのでしょうが、阪本さんは雀さんの操り人形ではありませんし、雀さんも阪本さんにそんなことを望んではおられないでしょう。だから演出はされても雀さんの存在は客観的で、観客目線的です。それに比べてDSUさんの舞台は、主役とは言い切れないのですが、非常に重要な役どころに作者である渡辺熱さんが就かれる。だから舞台は情熱的でモロに主観的です。そんな風に毎公演で発するエネルギーが何処に在るのか分かりませんが、舞台は、そのお名前の文字通り、渡辺さんの”熱”エネルギーが核となって動いているのは間違いない。

 客観性は、場合によっては”醒めた視点”になって観客の心に距離を置きかねないし、主観性は”独りよがり”に陥りかねない。だから普遍的に言ってどちらが良いということはありません。また、客観的であっても、舞台は全て演出通りかと言えばそんなことはない。むしろ雀組ホエールズさんの、雀さんの演出が完了して仕上げられている舞台にこそ必ず”アドリブ”があって、瞬間”素”に戻る役者さんの表情が楽しめる瞬間が多々あります(これは雀さんと役者さん、役者さん同士の信頼関係を如実に示すものだと思います)が、DSUさんの舞台には、毎回が初回というような意味の心地よい緊張感がある。これは作者さんが舞台で重要な人物についているからこそ起きる心理だと思います。特に今回の『恋しくて』は、圧倒的に台詞の量が多かったり、録音されて舞台に流れる自身の心の声との掛け合いがあったりしますからね、間違えるわけにはいかない。その意味でも舞台上の役者さんにはある種の緊張が続いていると思いますよ。

 さて、それぞれの舞台にはそういった相違があるのですが、どちらの舞台も「こういう小劇場で行われるような演劇に、たくさんのお客さんに足を運んでほしい」という想いは共通しています。もちろんその想いには「1度でも足を運んでもらえれば、そのお客さんを満足させられる」という確固たる自信があればこそでしょうし、事実、それまであまり演劇との接点のなかった僕が、こうして雀組ホエールズさんやDSUさん、東京カンカンブラザースさんの舞台に足を運ぶことを心待ちにするようになっていますからね。

 今回は上手いこと、ネタバレさせずに記事を書けましたが、雀組ホエールズさんの舞台をご覧になっていない方にはよく分からない記事でもあったかと思います。となれば興味を持たれた方には、DSUさん、雀組ホエールズさんの舞台をご覧になることをお勧めします。雀組ホエールズさんの舞台はしばらくありませんから、まずはこのDSUさんのこの公演から如何でしょうか?今月27日までやっていますよ。

 最後に、雀組ホエールズさんの舞台に出ていらっしゃった女優さんのことですが、その方僕はFBでお友達にはなっておりまして、FBの中では親しくお話しさせて戴いておりますが、実際には、こちらが一方的に存じ上げている状態です。昨日、「ご挨拶を」、とも思いましたが、むしろこうした方が面白い(こういう悪戯的なこと、大好物なんです)かと思って、ぐっと我慢しました。本当だったら、「もしこの舞台にご出演されていたら、どの役をおやりになりたいですか?」とか「その役をどういう風に演じてみたいですか?」などとお伺いしたかったのですが、それはまたの機会に譲りたいと思っています。そんなわけで松村美生子さん、大変に失礼をいたしました。