ハワイ島北部に深い緑に覆われて、ワイピオ渓谷はある。
昔、この地は王たちの集う場所であった。
そしてカメハメハ一世が幼い日々を過ごした地でもある。
この渓谷の高い崖から流れ落ちているのが、ヒイラヴェの滝である。その高さは390メートルもあり、ハワイ最大級の滝としても有名だ。
皆がヒイラヴェを見ている
マウケレの輝く大地の上で
私は鳥たちのゴシップにまどわされない
ワイピオ谷のあちこちでささやかれているが
誰も私を捕まえられない
私は山々の霧だから
両親は私を愛してくれている
祖父母にとって私は愛するレイだ
この香りはプナからそよ風に乗ってやってきた
そしてヒイラヴェの滝にただよう
お話をくりかえそう
皆がヒイラヴェをみている
大変有名な曲であるためか、背景には諸説ある。
私の一番好きな話はこう伝わる。
ハワイ島東部のプナという地区からやってきた王族の娘と、ある若者が恋に落ちた。
ところが、ハワイの王族は一般人の恋愛を禁止していた。
二人は口さがない人々の噂話から逃れて、ワイピオ渓谷までやってきた。
しかし、そこでも追い詰められた二人は高い崖から身を投げるほかなかった。
命を落としてしまった二人。
それ以後、若者は岩となり、永遠に滝になった娘の涙を受け止め続けているという。
3番の「山々の霧」というのはふたりの隠れた秘密の逢瀬を意味し、5番の「プナからのそよ風」というのは王族の娘のことであるのだろう。
ラーラーケアとハカラオアという小川がワイピオ崖から谷へ落ち、ヒイラヴェとハカラオアというふたつの滝を作り出している。この二つはふもとで混じりあい、ヒイラヴェ川となり、この渓谷の主な河川のひとつとなっている。
まるで愛し合うふたりが手を取り合うように。
この曲を初めて聞いたのは20年以上前のことだった。
ハワイではゴルフ以外、興味の無かった私が、田舎の小さな店でCDを買った。
それが、イズラエル・カマカイヴォオレの「イン・ディス・ライフ」だった。
アルバムの一番目の曲、この「ヒイラヴェ」を初めて聞いた時の驚きを鮮明に覚えている。
穏やかなギターの響きとともに、素朴ではあるが体をすっぽり包みこむようなイズの声、これがハワイの音楽?
それまで知っていた曲とはまるで違っていた。
以来、ハワイアン・ミュージックは私を虜にした。
♬ Hi'ilawe by Israel Kamakawiwo'ole
参考資料
Huapala - ”Hi’ilawe"