「お前如きに名乗る名は無いと、言ったはずだ」
 

一層、強い殺気と共に凍てつく様な冷たい声音が官吏へと突き刺さる

 

「ぐっ...」


真っ暗な部屋の中で、誰から発せられたかも分からないその声の主を探して
官吏は辺りを見渡すが、向けられた視線は皆、一様に同じ様に見えた

すると、

かたん

戸が開き、また人が入って来た

一人は真っ黒の外套を目深に被った表情の見えぬ小柄な人物
そして、もう一人は大柄な身体つきをした男だった
視線を右へ左へと送ると、官吏の方へと目を向けた

その瞬間、官吏は息を飲んだ


間違いない………此奴が親玉だ


その身から放たれる圧倒される程の存在感と重圧が他のもの達とは明らかに違う

下手なことをすればただではすまない

官吏が押し黙っていると男が静かに言った


「どうして此処に連れて来られたか…分かるか?」

「………」

「答えろ」


他の者からの声が響く


最早、これまでか……なれば、、、


官吏は目を閉じそっと息を吐くと、再び目を開いた

 

 

 

 

 

 

 

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