真っ暗な夜道に
白月の光が微かに灯る
その月を背にふたりは互いに黙ったまま
静かに歩いていた

「どうして…」
「ん…?」

横を歩くジイルがメヒを見る

「どうして私が彼処に行くって分かったの?」
「ふっ、分かるよ
君だったらきっと、そうするだろうって
分かっていたからね」

メヒは立ち止まってジイルを見た

「私…彼奴を殺したかった
「お父さんとお母さんをあんな惨たらしく殺した奴が、
この世でのうのうと生きてるなんてふざけてる
だから私...たとえ自分が死ぬことになっても
彼奴を...、少しでも苦しめたかった」

目頭が熱くなり涙が込み上げるのを
メヒは拳を握り締め、口を真一文字に噤んで耐えた

ほんの少しでもいい…、
ふたりの痛みを彼奴に与えたかったのに、
それは叶わなかった

ぎゅっと握り締めた拳が痛い
何故だろう

手を開いて見ると、
掌が真っ赤に腫れ、所々鬱血していた

掌を開いたままメヒはジイルを見た
ジイルは苦笑いを浮かべて
その小さな手を攫むと、そっとメヒの前に屈んだ

「あれだけ握り締めていたんだ
痛くないわけ無いだろう?」

掌をそっと撫でると
懐から取り出した布を手に巻いた

「君の言う事は分かるよ
だけどね、死んだら終わりだ
もし彼奴が死ななかったら?
その後の奴の行く末を
君はその目に見ることは出来ないんだ
そんなの、後悔するだろう?」

メヒはこくりと頷く

「だから、その目で奴が苦しむのを
見届けるまでは死んでは駄目だ
分かったかい?」
「分かった

…………ねぇ、ジイルさん

巻くの、下手だね」

メヒが掌をジイルに見せる
手に巻いた筈の布がだるんだるんに寄れていた

途端にさっきまでのジイルの真面目な顔が
一気に真っ赤に染まる

「あゝ~ごめん!
どうもね、こういう事は苦手なんだっ」

ごめんなぁ~と心底申し訳無さそうに
眉を寄せるジイルを見て、メヒは漸く笑顔を見せた

 

 

 

 

 

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