どうしてこんな事に……何故...?何故......?何故.......!?

父は?母は?
あの時、どんな顔をしてたっけ?
笑っていたのだろうか?

 

ふたりの顔が...............何も思い出せない




メヒはトンウンの家に居た

ムンチフとやって来た男と共に我が家へと向かった其処は血の海だった
見た事もない惨状、そして変わり果てた両親の姿
その両親の遺体を前に泣いて泣いて泣いて、
姿形も変わり、肉塊と化したその亡骸に縋りついたまま失神した
そして今、トンウンの家で放心状態で柱に寄り掛かったまま、
黙って焦点の定まらない目を天井へと向けていた

そばには血だらけの衣のトンウンが膝を正して座っており、
その目前にはメヒの両親の亡骸が、筵を被せて寝かされていた
血の匂いに引き寄せられ何処からとも無く蝿が湧く
その度にトンウンは集る蝿を真っ二つにたたき落としている
トンウンもまたうわの空だった

家にはムンチフと太った男ダルユンの他に数人がいた

「トンウン、しっかりしろ」

トンウンに寄り添う同じ顔の男達
ジェファンとユンファンは精悍な顔を苦しそうに歪めながらも
トンウンの肩に手を置き寄り添っていた

「やはり、此処一体は例の官吏の一族が支配しているようです」

痩身の男がムン・チフを見る
眉一つ動かさず黙ったまま続けろ、と視線を投げる

「小さな村なので国の目が届かないのでしょう
私利私欲の限りを尽くしています」

「えぇ、その通りです、ジイル副隊長」

トンウンはジイルに視線を向けた
その目は怒りで震えている

「彼奴等のせいで皆が苦しんでいます
特に官吏、彼奴は親の力を使ってやりたい放題だ
あるものは道端で邪魔だからと切り捨てられ、
あるものは顔が気に喰わないとひたすら殴られ、
またあるものは、魔羅が昂ってるからというだけで
無理やり突っ込まれ狂死しました
此処で死んだ奴は皆、彼奴のその日の気分で殺されたものばかりです」

「何て奴…」

ダルユンが吐き捨てる様に呟く

「あぁ、彼奴は人間じゃない」

トンウンは込み上げる不快感を何とか呑み込んだ
落ち着け、冷静になれと頭の中でもうひとりの自分が叱咤する
その葛藤と必死で戦っていた

「叔父さん.......私、何も知らなかった…」

メヒの頭の中もまたいろんな感情がぐるぐると駆け巡っていた
トンウンの話も、トンウンの友だというこの人達の話も、メヒにとっては寝耳に水だった
トンウンがメヒのそばに近付くとじっと視線を合わせた

「メヒや...義兄さんも姉さんも言わなかったんだよ
彼奴は姉さんだけじゃない、メヒ、お前にも目を付けていた
俺がお前に多節鞭を教えたのもその為だ」

成る程…
そういう事だったのか

ムン・チフはほんの一瞬メヒの鞭に目を向けた
子供に持たすには些か可怪しいと思っていたが合点がいく

この子を守る為か

「だけど、こんな事って… じゃあ、何?
父さんは顔が気に入らないからって切り刻まれたの?
母さんは?この村一、綺麗だったから?
そんなのって酷い!あんまりよ」

メヒの心に熱いものが込み上げ、目頭が熱くなる
想いを吐き出した瞬間、涙が溢れた
後から後から溢れた涙は頬を濡らし床へと落ちていく

「何であんな奴が…、
どうして平気な顔してあんな酷い事が出来るの?
我が物顔で生きているのよ!!!
神様は何故、あんな奴を生かしておくのよ!
答えてよ!答えてよ~!!!」

メヒの言葉は悲痛な叫び声へと変わっていった

 

 

 

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