「終盤は駒の損得よりも速度」の続きです。
図1の後手玉は「穴熊」で、「ミノ囲い」よりもさらに堅い陣形です。「穴熊」は王手がかからないので、先手が終盤の一手争いに持ち込むためには、囲いを弱体化させておく必要があります。「と金」をつくって「穴熊」の金銀をはがしにいく展開が間に合えば理想なのですが、そうも言ってられないことも多いのが実情です。そんな時は、大駒を切って相手の囲いを弱体化させておくことが、終盤特有の指し方になります。
(図1)
〇図1からの指し手:▲7ニ龍、△同金、▲同龍、△7一飛(図2)
図1ではスパッと▲7ニ龍と切ります。△同金、▲同龍と進んで、「金」2枚と「飛」1枚の交換は「2枚替え」といって先手が駒得なので悪くありません。が、ここは終盤なので、駒得よりも相手の「穴熊」が弱体化したことの価値が大きいのです。後手は△7一飛と頑張りますが・・・
(図2 △7一飛まで)
〇図2からの指し手:▲7一同龍、△同銀、▲4一飛、△8二玉、▲6三金、△1二飛(図3)
▲7一同龍、△同銀、▲4一飛が銀取の先手。対して後手△8二銀なら▲7ニ金で、また、△7ニ飛なら▲6三金の要領です。本譜の△8二玉は「顔面受け」。ついに穴熊から「玉」を引き出すことに成功しました。▲6三金は▲7一飛成、△同玉、▲7ニ金打ちの詰めろ。△1二飛はその受けです。
(図3 △1ニ飛まで)
〇図3以下の指し手:▲7一飛成、△同玉、▲5二歩、△6二飛、▲5三金打、△6三飛、▲同金、△7ニ金、▲5四銀、△6三金、▲同銀成、△7ニ金、▲5三金、△6三金、▲同金、△6一銀、▲7ニ飛、△同銀、▲6二金打、△8二玉、▲7ニ金寄、△9一玉、▲8二銀まで(結果図)
△1ニ飛には▲7一飛成、△同玉としておいてから▲5二歩。次に▲7ニ金の詰めろです。以下、後手は必死の防戦ですが、持ち駒に金がなくなったところで受けがなくなりました。「金なし将棋に受け手なし」は終盤の有名な格言なので覚えておくと良いでしょう。逆に、終盤に「金」があれば「頭金」や「腹金」など、相手玉を詰ますことができます。なので、終盤では「金」の価値が高いのが将棋の特徴といえます。
(結果図 ▲8二銀まで)