「勝利だけが全てではない」。これは、いわゆる勝負事では矛盾している言葉のように聞こえますが、囲碁や将棋の棋道、相撲道、柔道、剣道など、「○○道」と名のつく競技には共通する精神になっています。恐らく「武士道」の精神から来ているのではないかと思われますが、日本人的な素晴らしい文化の1つになっていると感じます。
この精神は、なかなか、外国人選手には理解できない可能性があると思います。分かりやすい例を挙げれば、カクザンが昔、某東南アジアの発展途上国の食品工場を訪問した時のお話があります。その工場は某日本企業が初めて進出した海外工場だったのですが、現地社員の教育に大変な苦労があったといいます。具体的にどんな苦労があったのかというと、衛生面でのことでした。食品工場ですので、衛生管理は大変重要なのですが、現地の社員は当初、テーブルの上を拭く雑巾と、床を拭く雑巾の違いが分からなかったといいます(床を拭いた雑巾で、平気でテーブルの上を拭いていたといいます)。担当者が何度注意しても、何がいけないのかがなかなか理解できなかったというのです。現在ではさすがにそういうことは発生していないようですが、最初のうちはそういうレベルでの社員教育で大変な苦労があったようです。日本人にとって極めて常識的なことが、世界中の人にとってはそうでもないということがあるということに、私たちはくれぐれも注意しなければなりません。当然、逆もあり得ます。すなわち、世界中の人にとって常識的なことが、日本人にとってはそうでもないということもです。
「勝利だけが全てではない」とか「勝てば良いというものではない」といった考え方は、日本人独特の側面があるため、日本人以外の方にはなかなか理解できない性質のもののような気がします。それだけに、外国人への指導には根気が求められます。
しかし、日本人選手が外国人選手から、真逆のことを言われている事例もあるようなのです。すなわち、「勝てばいいというものではない」と。少年野球の世界でそれは生じているようなのです。
以下、つづく・・・。