どうやればよかった?(その3) | カクザンのブログ(岡山市の親子将棋教室)

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子どもたち、保護者の方に、将棋の楽しさ・魅力をお伝えします。次回教室は津山おもちゃ図書館教室が10/6(日)、高島教室が10/6(日)の予定です。また表町商店街将棋イベントを10/19(土)に開催予定です。

このシリーズは、8/28(日)に開催された、「第7回岡山県こども将棋教室交流戦」に岡南教室から参加したお友達(Dクラスとガールズクラス)の対局で、私が目撃した局面について、あそこでどうやればよかったのかを解説しています。今のところ全6回シリーズになる予定です。引き続きお付き合いください。


「定跡(じょうせき)」という言葉を聞いたことがあるだろうか?「定跡」とは、この局面ではこうやるのが良いという、いわば一番正しい指し方だ。将棋には無限の変化があり、「定跡」がない局面はたくさんある。その一方で、ここではこう指すのが正しいとされている手順もたくさんあるのだ。


初めて見る局面で、自分で考えて、正しい手を見つけることができるなら、定跡を知らなくても問題はない。しかし、将棋大会などで短時間に正解手を見つけることは不可能に近い。そういう時に、定跡を知っていれば指す手に困らない。なので、色々な定跡を覚えていくことが、将棋の上達の近道といえる。当ブログで紹介している「カニ囲い棒銀」は、ほとんど私のオリジナル戦法だが、それでも、ここで説明する指し方を覚えることは定跡を覚えるのと同じだと思う。



前置きが長くなってしまった。実は、今回はもう一つ前置きがある。それは、「定跡を覚えると将棋が弱くなる」という話があるということ。このことに触れておきたい。そんなことが本当にあるのだろうか?


実は、よくある話なのだ。ビックリしただろうか?弱くなるなら定跡なんか覚えない方がよいと思うかもしれない。しかし、それは違う。全く違う。定跡は覚えた方がよい。


一体どういうことかというと、定跡を覚えたばかりの時というのは、覚えた定跡の手順とか、形を覚えるのに精いっぱいで、相手がどんな手で来ても、覚えたばかりの手を指してしまうという傾向がある。だから負ける。定跡の手というのは、相手も定跡の手できたときでないと正しい手とはいえないことが多い。なので、相手が定跡と違う手できたときは、こちらも定跡とは違う手で対抗しなければならない。こういう指し方ができないから、定跡を覚える前よりも弱くなったと感じるだけなのだ。


なので、将棋が上達するステップを説明すると、

①定跡をおぼえる→②対局で定跡の手をためしてみる→③失敗する→④どこが悪かったのか研究して対策をねる→⑤新対策で定跡の手をためしてみる→⑥やっぱり失敗する→⑦もう一度研究しなおす→⑧もう一度挑戦する→⑨成功する→⑩自信がつく

・・・と、まあ、こんな感じだろうか?上の説明では3度目の挑戦で成功しているが、実際はもっとかかるかもしれない。それでも、定跡をものにするには、何度も何度も同じ手で挑戦することだ。こういうトレーニングは、頭だけでなく、体全身を使うイメージだ。ようするに「体でおぼえる」まで、続けるのだ。体でおぼえた将棋ほど強いものはない。



さて、図1は先手が「カニ囲い」を目指しているあいだに、後手が「飛」先の「歩」を伸ばし、▽86歩と突いてきたところ。当然、▲同歩の一手と思いきや、先手はなんと・・・?




(図1 ▽86歩まで)

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先手が指した次の一手は▲58金だった。この手は「カニ囲い」を完成させる定跡の一手なのだが、図1の場面では▲86同歩と指さなければならなかった。この対局の直前に、次からは「カニ囲い棒銀」でいくように助言したのだが、この助言が裏目に出た感じだ。先手は「カニ囲い」を組み上げることに神経が行ってしまって、▽87歩成が見えていなかったのだろう。「定跡を覚えると弱くなる」を絵に描いたような展開となってしまった。



(図2 ▽87歩成まで)

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図2の▽87歩成でこの将棋は終わっている。いくら丈夫な囲いをつくっても、こう簡単に「と金」をつくらせては勝てない。では、先手はどう指せばよかったのだろうか?初手からの指し手を示すので、盤に並べて研究してほしい。

○初手からの指し手:▲76歩、▽84歩、▲78金、▽85歩、▲68銀、▽86歩(図1)、▲同歩、▽同飛、▲87歩(図3)



(図3 ▲87歩まで)

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図1での正解手は▲86同歩だ。こういう風に「歩」と「歩」がぶつかったときは、大体取った方が良い。なので、「将棋入門コース」のお友達は、「歩」と「歩」がぶつかったら、必ず取るようにしよう(取ると自玉が詰んでしまうような場合は別)。


後手は▽同飛とくるが、先手はそこで▲87歩と今取ったばかりの「歩」を受ける。この手は「飛」取りなので、相手は「飛」を逃げることになる。そうしておいて、先手はゆっくり「カニ囲い」を完成させて、あとは「棒銀」の攻めをめざす方針でいけばよい。



そこで問題を出そう。図3から後手が▽76飛と「歩」をかすめ取ってきたらどうすればよいだろうか?3分考えてから下へ進んでほしい。











○図3からの指し手:▽76飛、▲69玉(図4)



(図4 ▲69玉まで)
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正解は▲69玉だ。同じようでも、▲58金だと▽78飛成と「金」を取られる上に「竜」まで作られて、先手は必敗形となるので要注意だ。後手の▽76飛はよくやってくる手なので、「78の金」をウッカリ取られることのないようにだけは注意してほしい。


◎本日の教訓

・定跡をおぼえよう

・「歩」と「歩」がぶつかったら必ず「同歩」と取ろう

・▽76飛には▲69玉


(以下、次回へ続く)




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