オペラ【金閣寺】を終えて | 加耒徹の気ままにDiary

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東京二期会オペラ公演『金閣寺』


無事に千秋楽を迎え、

全ての公演が事故なく終われた事に、心より感謝し、そして全公演とも大変多くのお客様にご来場いただけた事御礼申し上げます。



そしてこの度は初日の公演、私の突然の体調不良により降板という選択を取らなければならず、

関係者の皆様、そして当日ご来場いただきました皆様に大変ご心配、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ありませんでした。



2日間通院、治療に励み、ゆっくりと声帯を休ませていただけた事により、


昨日の千秋楽では無事に舞台に戻ってくる事が出来ました。


初日の公演後には、皆さまから本当に多くの温かな励ましをいただき、何としてももう一度あの「金閣寺」の舞台に立ちたいと強く感じておりましたが、それが叶い昨日の舞台上ではいつも以上に集中した時間を過ごす事が出来たと思っております。



オペラというものは“気合い”だけでなんとかなるものではありません。


確かな発声と、安定した健康、リラックスした緊張感をもって、

やっとその役として舞台上でパフォーマンスが成立するものだと思っています。



当日も出演は最後まで迷いはしましたが、

皆様からの温かな励ましをエネルギーを受け、

自分自身の気合いも信じてみようと…。



お陰様で本番の時間になれば体調も問題無く回復し、ステージ上では今までに無いほどにリラックスして、

しっかりと自分の発声、役作りも活かせたのではないかと感じております。


ある方からは「普段よりものびのびいい声だったよ」と言われ、それも何だか複雑でしたが(笑)この特別な集中力の中過ごせた感触は、忘れないでおこうと思います。


劇場入りした時に、会う皆様から「本当に良かった」と、沢山言って頂け、

改めて私は本当に素晴らしい環境の中音楽をやれており、周りの人の支え合って生きていると感じました。


昨日は公演としては3日目だったのですが、

初日を迎えたのが私1人だけというなんとも珍しい状況にも関わらず、更に良い意味での責任感を持てました。



「金閣寺」という素晴らしい作品に携われた事はもちろん、

このチームで長いこと毎日稽古を積んでこれた事は今後の自分自身の声楽人生にとって、限りなく大きな財産です。

食事会とかも無かったですし、フリーの時間に皆様と過ごす時間は無かったですが、皆様の仕事に入った時の団結力が物凄く…私自身、日々の稽古時間が心底芸術に没頭出来る貴重な時間でした。



そして今回、宮本益光さんという尊敬する偉大なバリトン歌手の演じる溝口に、毎日稽古場で会えたのも幸せでした。

GPまでの日々もそれはそれは幸せな経験でしたので、毎日が「これで最後でも悔いなし」と思って稽古していましたが、

やはり本番をご一緒しないまま終えるのも悔いが残っておりましたので、昨日は本当のラスト溝口&鶴川を体験出来て良かった。やっぱり、益光さん演じる溝口…隣で聴いていて震えるほど感動しました。



初日来てくださったお客様には、加耒徹演ずる「鶴川」をお見せ出来なかったのは本当に申し訳無く、残念です。そして降板自体も直前の判断となった為、驚かせてしまいすみません。


しかし直前だったにも関わらず、代わりに演じていただいたダブルキャストの高田さんが素晴らしく務めてくれたと連絡もいただきましたので、私は治療に専念する事も出来ました。高田さんには感謝してもしきれません。



また、いつの日かこの黛敏郎さんの「金閣寺」に出会える事を楽しみに、

今日から鶴川ではなくひとりの歌手として過ごしていくとします。

…あまり変わらない気もしますが(笑)

こんなに素の自分と離れていない役に出会えたのも、感謝。



体調管理というのは声という生ものを扱う歌手にとって一生の課題になりそうですが、

今後も更に慎重に、休めるときはしっかり休む事も仕事の一つだと肝に銘じ、心して過ごしていきたいです。



加耒徹