少年チャンピオンRED特別付録「太平洋の亡霊」脚本つき | 錆びた館 分館3

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のつづき

石ノ森章太郎『サイボーグ009』最初のテレビアニメ化の際にあるオリジナルストーリーのうちの1話「太平洋の亡霊」いうまでもなく反戦アニメの傑作。自分も子供時代に見た記憶が強烈なのですが、なにしろ制作者たち(脚本辻真先 演出芹川有吾)が戦争体験者というのが強い。テレビがカラーになって見られる機会が少なくなったかと思いきや今は配信などでかつてより見やすくなってるはず。それが今、石森プロの早瀬マサトさんによってコミカライズ。これが10年前、20年前でなく今というのがまた意味のあることなのではないかと思います。というわけで、買ったのは10日前だけど今日の記事としました。

もちろんコミカライズそのものも今読まれるためのものとして書かれてて、まだ連載初回なので次が楽しみではありますが、問題はその特別付録の別冊脚本。現在の自分がアニメ制作者であるという立場からすると、読みはじめてすぐそのテンポの良さ、これ以上もないくらいの戦争に対する問題意識と同時に真珠湾、桜花、回天、夜光、もちろん零戦などの戦闘機に長門までという道具立てが娯楽としての要件も満たし、しかも問題意識の提示を少しも損なわないということと、その完成度に驚くだけではすまなくて。そりゃあ今これくらいのできの脚本渡されたらうれしくて万歳、ではあるのですが、仮にこの脚本を今もらって演出やれと言われたらどうか。当時よりは緻密でリアルな作画ができるようになってるし、作画枚数の制限も少なく、カメラワークなどの自由さも高くなってるのだからより良い映像ができて当然と思われるでしょう。ではそれと当時の映像比べてその分面白く出来が良くなるのかと言われると。そんな自信は持てるはずもなく。脚本としての恐ろしさはもし万が一演出のレベルも高くなく、作画もそんなに良くないものであっても、脚本の意図するところは微塵も損なわれない、というところにあるのですが、実際に制作された当時の映像ではそれをさらに膨らませたものとなっていて、頭が下がるばかりなのです。

コミカライズはどう進んでいくのか、連載の先がまた楽しみです。