第1章 技術士試験の公開情報から読み解く受験生の対策
第1章では、技術士試験の公開資料から、受験生がとるべき対応を解説します。文部科学省のホームページに公開されている情報から採点事情を推測し、出題予測、受験準備、受験で何をすればよいのかをお示しします。
第1節 技術士試験委員の構成―前文から出題意図を読み、公的見解を記述
まずは文部科学省の技術士分科会・試験部会(第38回)から、技術士試験の委員の構成を確認します。
1.令和4年度技術士試験委員(第二次試験)の構成
試験委員の構成については、①作問委員、②審査委員及び③採点委員とする。各々の役割は、以下のとおりとする。なお、試験問題の最終的な決定権限は、作問委員が持つものとする。
① 作問委員:問題案の作成及び答案の採点を担当するものとする。
② 審査委員:択一式の出題問題の正確性及び妥当性のチェックを行うものとする。
③ 採点委員:答案の採点を担当するものとする。
(注1)口頭試験は作問委員及び採点委員が行うものとする。
(注2)審査委員は総合技術監理部門のみで推薦が必要となる。
(中略)
5.その他
作問委員は、採点委員が当該問題の答案採点を的確かつ効率的に行えるよう、出題の目的、採点基準等を採点マニュアルに明確に示すこと。
(引用:文部科学省 技術士分科会 試験部会(第38回) 資料8 「令和4年度技術士試験委員(第二次試験)の推薦時期及び推薦数について(案) 」)
技術士第二次試験(一般部門)の試験委員は「作問委員」と「採点委員」の2種類です(審査委員は総合技術監理部門のみ)。これらの委員で多数の受験生の答案を採点するのですから、公平を期す必要があります。そこで採点マニュアルで作問委員と採点委員が「出題の目的」「採点基準等」を共有します。
「出題の目的」は作問委員の意図が示される部分で、これは採点委員のみならず受験生にも伝わらなくてはなりません(そうでなければバラバラの解答が集まってしまいます)。最近の問題の設問は定型化されていますので、この意図が読み取れるのは「問題の前文」しかありません。
受験生の立場からすると、問題の前文を読んで作問者の「出題の目的」が分かる問題を選ぶのが良いことになります。複数の問題から一つ選ぶ際、前文から作問者の意図が読み取れる方を選びましょう。
また、「採点基準等」は「公的な」見解であることが想定されます。作問委員の私的見解だと、採点マニュアルへの記述が難しくなり、また採点委員が公平な採点をするのが難しくなります。
受験生の立場から見ると、この採点マニュアルに適う論文を提出する必要があることから、論文に記述する内容は公的な見解を示した資料から引用する必要があります。受験生の私的な見解を論文に書いても、おそらく採点マニュアルにはないであろうことから、評価されない可能性が高くなります。