数多くの類書の中から本書に目を通していただき、誠にありがとうございます。
本書は論文作成を苦手とする技術士第二次試験(一般部門)の受験生、特に今年こそ合格したい受験生のために書きました。
技術士第二次試験は筆記試験が最大の難関になっています。その筆記試験は一言でいうと「採点マニュアルに適い、採点委員が読みやすい」解答を作成することでパスできます。本書は技術士試験の公開情報を分析し、受験生が採点基準に向かって真っすぐ準備出来る方法をお示しします。
私は最初の受験から5回連続で失敗し、6回目でようやく合格しました。仕事面で自分は技術士に比べて遜色ないと思っていたのですが合格できず、5回目の不合格の時は「見えない壁」に絶望感すら抱きました。6回目の受験で「見えない壁」の正体が「採点基準」であることに気が付きました。
基準があるということは何らかの「型」があるということです。私が講師として技術士受験の支援をしていると「言うことは分かりますが、それをどうやって論文にするのかが分からない」と受講生から言われたことが何度かありました。その声に応え、採点基準の「型」にはめ込むため、「テンプレート式論文作成術」として本書を纏めました。
本書の第1章では、技術士試験の公開資料から、受験生がとるべき対応を解説します。文部科学省のホームページに公開されている情報から採点事情を推測し、出題予測、受験準備、受験で何をすればよいのかをお示しします。
第2章では採点基準である「コンピテンシー」を解説します。今の試験では問題の設問ごとに採点基準である「コンピテンシー」が定められています。このコンピテンシーの定義、考え方、応用例を詳しくお示しします。
第3章では採点委員が採点しやすい論文の書き方を解説します。「問われていることを忠実に答える」基本から、技術士試験で使う「2つの論理の型」で説明する方法までお示しします。
第4章では第1章~第3章の内容を踏まえ、受験勉強において模範解答を作成する方法を解説します。出題予測、出題元の資料からのインプット、コンピテンシーによる整理、論文への反映方法をお示しします。
第5章では読者プレゼントとして、出題元の資料を論文に当てはめるための「論文整理シート」、コンピテンシーを論理の型として筆記試験論文に当てはめるための「論文テンプレート」の入手方法をご案内しています。
例えば迷路やゴルフなど、スタートとゴールがあるゲームはスタート側からは難しく見えます。これをゴール側から見れば、不思議と簡単に見えることは経験された方もいるでしょう。
技術士試験もスタート側に居る受験生から見ると難しく見えます。視点を変えて、ゴール側にいる試験官の側から見ると、そこまで難しい試験ではなくなります。本書も技術士試験を試験官側の視点でお示しして、受験生の方に「なんとかなりそう」と思ってもらえることを意図しています。
本書の読者は、仕事は出来るのに、技術士試験の論文作成を苦手である方を想定しています。そんな方こそ本書に示す「公開情報から読み解いた合格基準」を知り、「テンプレート式論文作成術」を使っていただきたいです。そして、今年こそ技術士試験に合格し、技術士という看板を得て、本来の実力をさらに発揮されることを願っています。
なお、本書は筆記試験に特化した内容になっています。出願や口頭試験に関する内容が必要な方は技術士試験の他の書籍を参考になさってください。本書はあくまでも今年こそ合格したい受験生が「筆記試験にパス」することだけに集中して執筆しています。
令和4年12月
技術士(建設部門、環境部門、総合技術監理部門) 近藤一寿