「ね、今日は何にする?」家でご飯を食べる機会が増えて、そんな会話も自然になった。それでも新婚というより子ども連れてる気分になってしまうのは、スーパーでお菓子の新商品チェックを怠らない彼のせい。「何度か作ったヤンニョムチキンはどう?」
「あ、それ好き」
「え?」意外な相槌に振り返ると、彼は棚から3つめのスナック菓子を音もなくカートに落とし込んでいるところだった。たぶん言い訳をしようと開いた口が、いつもと違う私の表情に気づいて和らぐ。
「味が、俺好み」
いつだって美味しい美味しいと完食してくれるけど、無理してるんじゃないの?どちらかと言えば料理は苦手。外食できないから仕方なく始めた自炊は簡単なレシピばかり。「居心地良いんだよな〜」と私の家に入り浸る彼だけど、そろそろありきたりのメニューにうんざりしてるんじゃないかと思ってた。
緩んだ頬をぎゅっとつままれて、我に帰る。
「アイスも買おうぜ」お菓子の追及を受ける前にスキップしながら冷凍ボックスへ向かう。毎回同じにならない味付けのどこが俺好みなのよ?駆け寄って腕を掴んだ。「お菓子は次の週末にするから、1個だけ、な?」めずらしく愛嬌。思わず、ちゅ、と頬にキスするはずが、唐突に顔を寄せてきた彼の唇の端に触れた。フリーズしたのは一瞬で。今さらはにかむ笑顔で私の手を握ると、カートを押して全速力でレジへ向かう。「今すぐ食べたい」「そんな簡単に溶けないよ」「アイスじゃなくて、お前」