英国と日本の教育の違い

 

先ず、職業と聞かれて「会社員」Company Employee(会社の雇われ人)と答える日本人が多いが、普通、欧米世界では、そう答える人はいない。会社員は、営業課長なら「Sales Manager」とか経理補佐なら「Account Assistant」とかいった役職に相当する。

教育も大抵職業に通じている。勿論、結局違うキャリアを歩む人もいる。

また、大学で学位を取らなかったら、どの職業に就けるのか。学校も中退してしまったらどんな仕事があるのか。

 

日本では、大学で何を勉強しようが、文系と理系だけに分かれて就職活動に入り、試験やコネや大学名で「会社」に就職し、その中で出世をしていく。再就職しようとすると、大抵、条件が悪くなる。理由は会社のトレーニングでレベルアップしていくので、大抵ジェネラリスト(一般職、経理部から広報部、営業部など何でもやる)でスペシャリスト(専門職、有資格者)でないからだ。

 

それに対し、英国はじめ欧米では、仕事が決まったら契約書のJobDiscription(職務内容)を確認してサインする。例えば職業(役職)「営業補佐」でサインしたなら、経理をやることは無い。「ちょっとこのくらいできるでしょ?」と思って頼もうとすると「It’s not my job.」と返されて終わりだ。掃除に関しても同じ。

 

で、あるから大学の学位は有用で、職業に直結している場合が多い。

とはいえ、よくわからない学部も多く、演劇や環境等の新しいものから所謂歴史や宗教など、教師くらいしか職業が思い浮かばないものもある。そういった場合や学位無しも同様に、取り敢えず出来そうな仕事をトレーニング付き短期雇用更新か、見習い(Apprentice)として安めの給料で実績を積む。そして雇用/契約される役職名を上げていく。その役職名こそ職業欄に書くものだ。

では、勉強ができなければ「負け組」なのか?

英国ではそんなことはない。

英国ではたくさんの個人事業者がいる。別に就職しなくても、自分で事業を始めることができる。

 

例えば、学校を卒業または辞めて「掃除屋」や「庭掃除屋」を始めようと、掃除具や芝刈り機を買い、また「ネイリスト」や「フェィシャル」も同様、ドアをノックするかチラシを作ってポスティングする。こういった個人事業も顧客がつくと、中々の収入になる。ちゃんと会社登録をすれば、彼らの職業は「会社社長」(Company Director)になる。

であるから、キャメロン政権の時に18歳まで義務教育になり、17,18歳は全国共通大学入学資格試験の勉強期間であるが、進学しない人のためにキャリアにつながる技術教育コースを設置した。これで失業者を減らすことができるからだ。全く理にかなっていて、勉強が嫌いでできない人にいくら数式や古代史を教えても無駄だと分かっているからだ。

例えば「左官」「水道」「調理」など、見習いを必要とした職業を、学校で教えてしまい、言い訳無しに即戦力で働けるようにした。(仕事が無いと、職探し中の失業手当が出る。技術が既にあると職を斡旋され、採用される確率が高くなり、手当より給与が高い場合が多くなるので税金も減る構造だ)

 

そして実はこういった「技術者」が不足しており、安定収入は無いかもしれないが、高収入であり、暮らしぶりは十分である。ちなみに子供の通っていた私立校の親の半数が医師・弁護士・ファイナンス系であと半数が土木業、水回り改装業などの事業者であった。

 

要するに、学歴も親から受け継ぐものが無くとも成功者になれる。

却って日本では学歴がないと、と幼稚園から塾通いでいつも競争に参加させられる。そこで日本から英国で教育した方が伸び伸びと幸せ度も高く生きられるのではないか、と引っ越してくる人がいる。片親が英国人だったり、有名人だったりする人が英国で教育を受けさせたがる。ついでに英語の勉強もできるのだから一石二鳥だ。

勿論、英国の教育はゆっくりしていて、無理強いも無いものだから、物足りないとシンガポールで東アジア型教育受けさせたいという人をTVで観たことがある。

 

まとめると、日本を含めたアジアでは科挙制度の名残か(日本は科挙制度を採用しなかったのだが)共産思想の名残か高学歴至上主義で、そのレースが幼少時から続き、それにはみ出てしまった人が引きこもりや自殺となってしまうように見える。英国では、レースが過酷でなく、また色々なコース、レーンがあるのでその人のスピードで進める。そこが魅力ではないかと思う。