イギリスから見る 安倍晋三

 

この度、2022年7月8日に起こった安倍晋三元首相の暗殺に、非常に悲しく残念に思うと共に、日本国の将来に不安を感じている。

安倍晋三と言う人は、私の祖国である「日本」に自信を持たせてくれた立派な首相であった。また、この先の日本の在り方に期待を持たせてくれた。日本丸が海賊に囲まれ、打つ弾もなく如何に危うい航海をしているのか、その船室にいた私は全く気が付かず、今、他の戦艦に乗船して安倍船長の奮闘に気が付いた。

私が憶えている安倍首相のメディア登場は、靖国参拝の時だ(2013年末)。BBCでもヘッドラインの一つで取り上げられ「歴史修正主義者」と言われ、米国から「残念だ(失望した)」とメッセージが出された。イギリスでは第2次世界大戦の記憶から、実は日本が嫌いというのが本音なのだ。大英帝国が滅んだのは日本のせいで、中国やインドの利権を失くした。その善悪の「悪」である日本が「戦後レジームからの脱却」と言い、戦争犯罪者を称えるとは何事だ、ということだ。

 

そしてBBC「News Night」でズケズケ物言いで有名なジェレミー・パックスマンが日中の駐英大使を呼んで「尖閣問題」についてインタビューした(2014年)。日本人の悪い癖で怒りを露わににしてしまい、中国に理がある様に誘導され納得させられた。英国人夫に「日本はあの島を中国にあげたらいいのに」と言われ、「英国こそ北アイルランドをアイルランドに、ジブラルタルはスペインに返せばいいのに」と応戦した記憶がある。

その後、私は日本のニュースで(BSフジをYouTubeにて)小笠原沖の「赤サンゴ密漁」を見た(2014年)。あまりの船の多さに、また場所が小笠原沖ということに非常な恐怖を覚え、「日本は大丈夫なのか」とその時初めて日本の危うさ、味方の無さに気が付いた。

私はその頃、「美しい国へ」を読み、「たかじんのそこまで言って委員会」を見て、日本の存在、過去と未来を考えるようになった。それまでよく聞いていた所謂左翼という人達が美辞麗句で自分に酔っていることに気が付いた。

 

安倍首相は、外に出してもカッコよく、リーダーとして誇れる存在であった。アメリカ上下両院会議での「希望の同盟へ」で、私は泣いた。映画「硫黄島からの手紙」を(英国地上波Film4にて)観ていたので、栗林中将(演:渡辺謙)の孫にあたる新藤議員と米軍との握手に当時の副大統領であったバイデン氏も涙をこらえていた。

ニュースでは、世界会議で安倍がこう言った、くらいの取り扱いだったが、首相辞任のニュースはまたもやヘッドラインであった。

そして今回。

こちらも政治が局面を迎えているのだが、一応暗殺の事件について少しであるが、犯行や犯人、国民の献花等が今のところ毎日報じられている。

その中でも驚きはコレ。

My family and I were deeply saddened to hear the news of the sudden and tragic death of former Prime Minister, Shinzo Abe.

I have fond memories of meeting Mr Abe and his wife during their visit to the United Kingdom in 2016. 

His love for Japan, and his desire to forge ever-closer bonds with the United Kingdom, were clear. 

I wish to convey my deepest sympathy and condolences to his family and to the people of Japan at this difficult time.

ELIZABETH R

そう、エリザベス女王からのメッセージだ。

ここで2016年に訪英されたとあり、2015年に習近平の訪英後と分かる。女王は習氏が嫌いだと色々態度や小言を拾わせたりしてアピールしていたから、その後の安倍夫妻に全然違うことを感じたのだろう。

 

前筆したが、イギリスは日本が嫌い、それは利権を貪ってきた上流社会で強い。ネットフリックスで「クラウン」を観ただろうか(安倍氏も観ていると言っていたが)。女王の夫フィリップ殿下の叔父で父親代わりのマウントバッテン卿。彼は第2次世界大戦中インド総督の立場で日本軍と対峙した。結果インドは独立へと動き出し、最大の利権であったインドを手放した。マウントバッテン卿はアイルランドのテロに爆殺されたが、事前に「私の葬式には日本人をよぶな」と言ってあったくらい日本人の顔は見たくない人であった。ハリー王子の息子アーチ―の名前の中にしっかり「マウントバッテン」を入れていたのは、父方の姓(実際は違うが)つまり自分の家の名前だからだ。

女王とマウントバッテン卿

ついでに戦勝祝いVEデー(ヨーロッパ戦線戦勝日)を盛大に祝うが、VJデー(対日戦勝日)も75周年(2020年)でチャールズ皇太子夫妻が出席していた。その特集ではインド系英国人ジャーナリストや芸能人が、私の祖父は対日戦に参加した、等かなり四面楚歌であった。

とにかく、その様な英王室の長からの異例のメッセージ。

選挙中とはいえ、日本の冷たさ、前例がどう、功罪を批評など、全く信じられない。今、中露連合と東で対峙できる、また世界の要人の仲介に入れる唯一の人を亡くした世界の人々の思いの欠片も日本のメディアからは感じられない。そしてその恩恵を受けるはずだったが、闇に落とされた日本国民自体が気が付いていないのに額残としてる。

安倍首相のようなリーダーは、また日本からは現れるのだろうか。