車は高い,。

英国は鉄道発祥の地、というのも今は昔。昔々の話である。

 

国鉄民営化等、サッチャー首相時代に国営事業は次々に民営となったのだが、鉄道は全く改善されないまま、人々の脳裏に「鉄道は頼りにならない」という考えがしみ込んだ。その反面、道路は整備され、フランスから車で入れるし、高速道路(モーターウェイ)や、国道、県道レベルの道路もコネクションが良く、しかも無料、という事で車は便利である。(国内で何か所かだけお金がかかるところがあり、今はナンバープレートを読み取り、支払いがされていなければ違反料金請求が来る)

勿論、ロンドンに住んでいると、そう不便は感じないが、英国では機能の整っている大都市といえばロンドンしかないので、それ以外では車は必需品だ。

 

私が初めて英国に来た90年代は、まだ英国は景気がそう良くなく、街全体が煤けたイメージであった。その当時走っていた車も10年、20年も昔の車種で、フォードやプジョー、VWが殆どであった。町ゆく人々も、カバンや靴はNextやMarks&Spencerで買ったような10ポンド程度のモノで、服の色も黒、茶、紺であった。

ところがどんどん景気が上向いた2000年代から車は一気にドイツ車が増える。ドイツのユーロによる為替有利のポジションのせいでもあるが、走る車にBMW、メルセデス、アウディが大勢を占めるようになった。2010年に入ってからは、女子高生でもヴィトンのバッグを持ち始め、保守的な英国人も明るい色が見られ始めた。

 

車も、一人一台だったりするので、女性の車はFiat500やMiniで、可愛い色だったりする。対照的に日本では、変なミニバンや軽ばかりで、輸送機能と燃費ばかりを重視し、デフレから抜けきれないのが良くわかる。(車番組Top Gearでは散々馬鹿にされてきた)

じゃあ、車は安いのかというと、全然そんなことはない。(付加価値税は20%である)

例えばトヨタ自動車のCH-RのGR-Sportで比較、それぞれ今日のレートでみてみると、日本で281万円のところ、フランス等ユーロ圏で435万円、英国で532万円となった。

メルセデスの電気自動車EQAでは、日本で640万円のところ、フランス等ユーロ圏で658万円、英国で717万円となった。

じゃあ、維持費が安いのかというと、それも違う。ガソリンだって、保険だって英国の方が高いのだ。ただ、高速道路は基本無料だが。

そうはいっても、車を購入するのに、全額ポンと払う必要はない。クレジットカードで払ったり、手付金だけ払えば用意されたローンにサインすればいい。(社用車にすれば税抜で購入できる)

クレジットカードには、後払いできたりするので、1年くらい払わず、後払いを選ぶこともできる。そして、1年後に別のクレジットカードを始めて、未払い分を丸々新しいカードに移して、また後払いをすることもできる。こうして何もかもを未払いで後回しにすると、いつか雪だるま式になり、資産差し押さえや破産となったりする場合もある。

ローンも、五分の一くらいの前金をどうにか払ったら(これもクレジットカードで済む)、3年くらいのローンを月々払う。しかし、3年で払い終えない計算になっており、その後、残りを払わないといけない。とはいえ、急に残りを払います、という人も少なく、買い取ってもらって、新しい車に乗り換えて、新しいローンを始めるのがパターンである。

払える金額かどうか、は大抵月々の月賦が払えるかどうか、で決めている場合が多い。

 

英国では、日本車は、それなりに人気が出ているが、お金があると、やはりドイツ車が人気だ。ドイツ嫌いなくせにドイツ製を信用している。しかし、もっと人気があるのはランドローバー、レンジローバーだ。私立校に子供が通っている時、一家に一台はローバーという割合が半分以上であった。

日本では燃費や小回り、機能性が重要みたいだが、こちらでは安全性と見た目が重要である。保守的な英国人らしく、奇抜でない変わらぬデザインと色。大切な我が子を乗せるのに、ちょっとやそっとでは死なない丈夫さ。王室も乗っている(一応英国ブランドだからね)ステイタス。座席も上からなので見下ろし感満載。そして雪でもぬかるみでも浸水地でも坂道登れる4輪駆動。

 

今は電気自動車が増えてきて、5年くらい前(2017年)から駐車場などで充電施設が設けられている。これはパリの方が早かった記憶がある。その頃、友達がテスラを購入した。しかし、学校のお迎えで込み合うところ3ポイントターンができなかったらしく、でかすぎる、といってすぐ売ってしまった。まあ、確かに長い車だ。(ジャグアーも長い)他に日産リーフやBMWi3(?)なんかに乗っている人もいた。今は車種ももっと増えてきている。

日本車では、日産のキャシュカイ(SUV)が人気が高い。近所や同級生のお母さんがよく乗っている。天気の悪い英国では4輪駆動車が人気がある。大抵の旅行も車である。国内は勿論、ヨーロッパ方面へも車。もし飛行機で行ったとしても車を借りる人も多く、車無しではどうしていいか分からないほどだ。ウーバーなどタクシーが使えるところは、それも良いが、公共交通機関を使わない人も多い。これは日本と違うところだと思う。

キャンピングカーで旅行に行く人もいるし、テントを持ってキャンプに行く人もいる。ドイツに行ったとき、トロいキャンピングカーを見ればオランダ人だ、と言われ、ナンバープレートを見るとなるほど。オランダ人はケチと言われるので、安上がりの旅行、燃費よく運転するところから、そう言われていた。英国人も結構好きで、さすがは狩猟民族、と思った。

 

そういう狩猟民族の性質か、昔は馬での移動、今は車での移動が性に合っているのだろう。