


京都二条河原町の一保堂茶舗は宇治茶を抑えて宮内省御用達を保持した老舗だ。
しかし茶業は明治から、と時代区分に応仁の乱が生きている京都では新参の部類になる。

茶畑そのままの薫りがするドロっとした濃茶。
飲み終わったらお湯を入れ、茶筅でたて直し、普通の濃度の抹茶でおかわり。
だから普通の抹茶は別名「お薄」というのだ。

今日の菓子、つぶ餡モナカは、北野白梅町の中村製餡所(明治41年 1908年創業)の出品。

京都の地図を検索するのは実に楽しい。
友達の住所を確認するみたいに。
それに京都大内裏遺跡の西方に当たる大将軍八神社と一条通りは大昔に参拝で往来したことがある。
でもこの製餡所は知らずに通り過ぎて全然気づかなかった。
そんな記憶も楽しくよみがえる。
もう行くことはなかろうが、それでも縁あって行った気分になるわけだ。
いくら和菓子好きでも数の多い京菓子の食べ歩きなんて不可能だ。
だから一保堂の目利きで出してくれる和菓子は、実は京菓子探訪のディープトリップ・アドバイザーになっている。

この中村製餡所はテレビ大阪でも第一話のロケ地に選ばれた隠れた名店であるらしい。


現店主4代目の中村吉晴(よしはる)さん。
あん作りに関して一番神経を使うのは、やはり原材料の小豆の仕入れだそうだ。
「やっぱり安い豆から取り合いになるんです。でもそっちは、はなから見てないですね。農家の方は、100パーセント小豆の良し悪しをわかってます。わかって値段をつけてる。だから、安いのはまずい。逆に、高くてまずい豆はないんです。うちは北海道産の豆を仕入れていますが、品種は決めず“その年最高の豆”という決め方をしています」
勉強になる。

https://www.nakamura-seiansho.com/

今さらながら。
一保堂の菓子皿は菓子切を据える穴と溝がついている。
茶道のおもてなしの真髄はこういうところにある。



