智恵も無ければ 技も無い
僕に有るのは思いやり
料理長は初めてノレン継承を認められた一番弟子。
酒は奥多摩・小澤酒造の澤乃井純米大吟醸。
バカラグラスで。
調理は料理の鉄人と同じ。
全部を短時間にいっぺんに仕上げていく。
コース料理だからこそ可能になっている。
カマンベール・チーズに胡麻白味噌焼き。
西京焼き・黄金チーズ
アワビの柔らか煮も天ぷらで味と香りを閉じ込めている。
白あえのモナカ仕立。ここにも道場さんの思いやりが込められている。
帝国ホテルのなだ万・吉兆の白和えはおちょこに盛られるのが常識。
モナカ仕立にすると器皿が汚れない。
器皿が汚れると、やはり気分を害している。
道場六三郎さんの視点では、器皿が汚れないで、心を汚さず食べてほしいという想いやりが込められているわけだ。
アサリ真薯。
個性のあるワラビの香りを真薯に炊き込まないよう、葛きりでシールドをつくり、
口内調理で味が完成する仕掛け。

大トロが主役。
醤油もいくつか銘柄を合わせて風味豊かに。
ピザの石窯で低温調理されたローストビーフ。
田舎風蕎麦は石臼挽きの食感
ツルツルせず、適度にちぢれ麺になっている。
麺切りはさすがの名人芸。
蕎麦屋やラーメン屋とはレベルがちがう。
kakkamax※

料理長さま

本日は誠に美味しく、また道場六三郎師匠の包丁魂を感じる品々、ありがとうございました。
言い忘れたことですが、尊敬する師匠のお叱りは、必ずや百年後の神話となることをお口添えします。
調理の世界は一面でレシピという数学計量で食品の多くが大量生産されていますが。
実は師匠の伝える塩梅のセーフラインは説明しても伝わらないものです。
出汁のとりかたも、「おい、これはダメだ」と師匠に叱ってもらえないと、どこまでがセーブで、どこからアウトなのか、わかりっこない。
目には見えないものばかりので。
白湯の塩梅、出し汁の塩梅、餡になると魚の種類も違う。
アウト、アウトをくり返すことでストライクゾーンがようやく体感できるのです。
弟子に天才秀才がいて、師匠が何も叱らないと、『師匠の味』はそこで絶滅し、若手が勝手に上書きしてしまう。

これは亡き桂文楽や三遊亭圓生の人情噺で感じることです。
(桂文楽は修行時代、師匠からガラスのおはじき70個以上投げつけでダメ出しを受けながら成長した)
お弟子さんの圓楽や圓歌はなまじ才能があったのが災いして独自の境地で止まって、圓生噺の真髄に近づけず。
(圓楽は浅草生まれだったが、戦争疎開で江戸弁が正確に話せなかった。圓生は吉原遊郭の花魁と京都島原の花魁、新橋芸者、品川芸者を演じ分けた。つまり圓楽は遊郭関係の古典落語の噺を引き継げなかった)
失望した圓生師匠は自分の持ちネタ百話を録音して亡くなりました。

料理長はそこをしっかりと受け継がれた。
今の時代は納得いく説明や理屈がないとしっかり物事が頭に入らない若手も多いでしょう。
道場六三郎さんの思いやり料理道、継いで伝えて極めてさらにご清栄を祈っています。