
「美女と野獣」
ロシアで“16禁”扱い
同性愛への根強い偏見
【モスクワ=黒川信雄】米ディズニーの新作映画、「美女と野獣」の登場人物に同性愛者のキャラクター(ルフォウ)が含まれているとして、ロシアの議員が「上映禁止」を検討するよう当局に求める事態が起きた。
露政府は7日までに、観劇の対象を16歳以上にするとの条件で上映を許可したが、ロシア社会の同性愛への根強い偏見を改めて浮き彫りにした格好だ。
露メディアによると、露与党「統一ロシア」のミロノフ議員は3日、メジンスキー文化相に映画公開までに内容を審査するよう要求。
同氏は「子供向けの物語」を装い、「道徳上の罪や歪曲(わいきょく)された性的関係」が映画館であからさまに公開される事態は黙認できないと主張。
映画に「同性愛の宣伝」の要素が含まれるならば「ロシア全土で上映を禁止するべきだ」と訴えた。
国営ロシア通信によると、これに対し露文化省は7日までに、観劇対象を16歳以上とすることで上映を許可したと明らかにした。
モスクワの大手映画館によると、この場合16歳未満の子供が観劇する場合は親が同伴し、さらに書面での同意が必要という。
「美女と野獣」はロシア国内で16日に公開予定だったため、直前で上映禁止になるという事態だけはかろうじて免れた格好だ。
ロシアでは2013年にミロノフ氏らが推進した「同性愛の宣伝」を禁ずる法律が発効したが、同性愛者の人権擁護の観点から、欧米などから激しい批判を招いた。
法律が制定された背景には、同性愛者に悔悛(かいしゅん)を求めるロシア正教会の影響も指摘されている。
ロシアでは同性愛者に対する襲撃事件なども繰り返し発生しており、今月6日には同性愛擁護の活動家らが露西部で拘束される事件が起きた。
米CNNテレビによると、「美女と野獣」のコンドン監督は登場人物の男性が同性愛者という設定は認めつつも、映画の最後のダンスパーティーにおいて他の男性と一瞬抱き合う姿が描かれている程度だと強調している。
ただこのような反応はロシアだけでなく、CNNによれば米アラバマ州の映画館でも同性愛批判の立場から、上映を拒否する事態が起きたという。
(産経新聞 03/09 09:56)
