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ベビーシッターとして預かった横浜市の2歳男児を窒息死させたなどとして、殺人や保護責任者遺棄致傷などの罪に問われた物袋(もって)勇治被告(28)の裁判員裁判が10日から、横浜地裁(片山隆夫裁判長)で始まる。
 起訴状などによると、物袋被告はインターネットのベビーシッター仲介サイトに女性を装って登録し、2014年3月、横浜市の女性にメールを送るなどし、わいせつ目的で長男と次男(当時9カ月)を誘拐。
埼玉県富士見市の自宅マンションで長男にわいせつな行為をした上、鼻や口を手でふさぐなどして窒息死させたほか、次男にミルクを与えるなどの必要な世話をせずに重度の低血糖症に陥らせたとされる。
 兄弟の他にも、シッターとして預かった幼児約20人に、わいせつな行為や裸をデジタルカメラで撮影して保存する行為などをした。

 ◇男児母「真実話して」

 「最期の日に何があったのか、真実を話してほしい」。
2歳だった長男を失った女性(24)は、事件の全てを知りたいと、被害者参加制度を利用して法廷に入り、意見も述べる予定だ。
被告に会いたくはないが、長男が最期に見た顔を自分も見なくてはと、裁判への参加を決心した。

 大好きなイチゴをほおばる横顔、まだ上手にできなかったピースサイン。手元に残された写真には、成長するにつれ表情が豊かになっていく長男の姿が写っている。シングルマザーとして働きながら懸命に育ててきた命だった。「いつも一緒にいたい」。長男の髪を入れたネックレスを常に身に着けている。

 事件の翌月に長男は3歳になるはずだった。その誕生日にディズニーランドに連れて行ってプレゼントも買ってあげたいと、アルバイトの予定を入れた。
だが、以前に頼んだことがあったベビーシッターの都合がつかず、仕方なくインターネットの仲介サイトで見つけた「子供のいる女性」に2人の息子を預けることにした。それが物袋被告だったと分かったのは、事件が起きた後だった。
 次男のことは、長男が守ってくれたと思っている。長男の年齢に近づくにつれ、顔や好みが似てきた。2人で遊ぶ姿をもっと見たかった。だから法廷で訴えたい。
「大切に育てた私の子なんです。殺されるために生まれてきたわけじゃない」と。
【藤沢美由紀】
(毎日新聞社 06/08 20:44)