ミッキーの誕生については、いろんなエピソードがある。

★最初、ウォルトは蒸気船(スティーマー)にひっかけて、モーティマーと名づけ、シリーズ化する予定だった。
しかし、奥さんが猛反対し、ミッキーに決まった。
あとでモーティマーマウスは背が高く、ピートのようにひねくれた考え方をする存在。

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金持ち役で幼なじみのミニーを誘惑してみたり、いまのミッキーマウスクラブハウスのシリーズでも登場する迷惑な脇役。
最初のミッキーのキャラクター(船主)はドナルドに引き継がれた。

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★ミッキーの原型が黒猫フェリックスだったこと。
なぜミッキーは、パンツと靴をはき、手袋をしているのか?
これはフェリックスと同じキャラクターではないと強調するためのものだった。

しかし【蒸気船ウィリー】のように、
キャラクターが人間のように乗り物を操り、
ストーリーを展開させるドタバタ喜劇は、
まさにフェリックスのアニメ映画と設定は同じもの。
ストーリー仕立ても最初は盗作だったのだ。
ただ、ディズニー映画はレコード(録音盤)で動画に音声をつけ、その大半が口笛やピアノ演奏など、派手なBGMだったから、無声映画のFelixやオズワルドの観客たちをたちまち奪ってしまった。

しかし、ウォルト・ディズニーは何度も周囲から盗作批判にさらされ、
偶然にも現代喜劇ではなく、やがて史劇にストーリーを移していった。

それがミッキー短編映画
55作目
【ミッキーの騎士道】

66作目
【ミッキーのガリバー旅行記】

72作目
【ミッキーの漂流記】

つまり子ども世界名作全集のパクリを始めたのである。

しかし、転機になったのは1933年の【騎士道】YeOldenDaysだった。


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【ミッキーの騎士道】のストーリーはすごく簡単だ。
ミッキーは中世ヨーロッパの騎士道が盛んな時代の吟遊詩人。

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カラバズー王国のミニー姫は、親が決めた隣国プフバドゥー王国の婚約者グーフィー王子との政略結婚を拒否。
侍女役のクララカウベルとともに
お城の中の高い塔に監禁されてしまう。

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ミニー姫、というより、クララカウベルの泣き声は凄まじく、カラバズー城の近くまできていたミッキーが気づいて。

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《カリオストロの城》のルパン三世みたいに、ミニー姫の救出に乗り出す。
そこでミニー姫とミッキーは一目で恋に落ちる。
二人は駆け落ちをしようとするが、塔を下りるときに、みんなに見つかってしまい、ミッキーは逮捕。
ギロチンで首を切られかかる。
そこで、ミニー姫が必死に父のカラバズー王を説得。

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グーフィーとミッキーを騎士道にのっとった決闘で勝負させ、勝ったらミニー姫と結婚することを約束する。
もちろん、ミッキーの勝利。

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めでたし、めでたし、の幕引きで終わり。
すごく単純明快。
お城とお姫さまが出てきてハッピーエンド。
もうわかるでしょ。

こうして、ついにパクリではなく、
白雪姫やシンデレラなどの名作史劇を壮大なアニメーション物語にしようという偉大な構想が生まれたのだ。

これらのミッキー史劇の短編映画は、かなり完成度が高い。
意味のないフェリックスみたいなドタバタではなく、しっかりとムダなくストーリーがまとまっている。

しかたなくやり始めたパクリ史劇。
でも本当にウォルトがやりたかったのが、この史劇だった。

ミッキーを何とかスターダムにあげようと苦悩していたウォルトは、
やがて今日のディズニーランドの基本構想となるファンタジーと魔法の世界を作り出し始めた。

キャラクターたちが名作史劇を演じるというアイデアは、
オリジナリティーにもがき苦しみ抜いたウォルト・ディズニーその人の苦しまぎれに出た究極のオリジナルだったといえる。

その延長線上にプリンセス・ストーリーと世界のディズニーリゾートは生まれたのだ。
論より証拠。

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この1933年の【騎士道】の城は。

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間違いなく、1937年の白雪姫に登場するスペインのゼゴビア城のスケッチと同じものなのだ。

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ディズニー本社の記録によると、確かにウォルト・ディズニーは【白雪姫】の紹介フィルムで、「制作に4年かかった」と述べている。
そしてパートナーのアイワークスが【白雪姫】の背景画のために、マルチプレーン撮影機(複数の背景セルを距離をあけて重ね、3Dのような効果を出すカメラ)を発明したのも1933年。
【ミッキーの騎士道】の完成のあと、ウォルト・ディズニーは【白雪姫】の制作に乗り出したのだ。

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~夢を見ることができるなら、
それは実現できるんだ。
いつだって忘れないでほしい。
何もかも全て一匹のねずみから
始まったということを。
不可能なことなんて、
何もないんだ。
夢を追う勇気さえあれば、
すべての夢は叶えられる。~
Walt Disney