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グリム童話、その約100年前のシャルル・ペローの童話にも、白雪姫に似た≪継母と娘の対立soon少女虐待≫のパターンは多いのですが。

衝撃的な事実があります。
グリム童話の初版本では、白雪姫のストーリーは実母による実娘の虐待だったのです。

間違いではなくて、グリム兄弟は、王侯貴族の中にも子女虐待があったことに最初は注目したのでしょう。

しかも初版本では、白雪姫をかくまう小人たちは、森の中に隠れ住んでいた野盗たちだったと書かれていました。

私は学生時代、いまのメルヘン街道の起点に位置するマールブルグ大学で中世の経済思想を研究していたのですが。
このマールブルグ大学こそ、兄ヤーコプ・グリムと弟ヴィルヘルムの出身校だったのです。

大学図書館で、グリム兄弟の書簡や著作の特別展示をみたとき。
たまたま親しい文学部の教授に話す機会があったので、この白雪姫のミステリーについて質問してみました。

すると教授は、
「中世のドイツは宗教対立が激しかった。支配者はカトリックで、民衆は新教派のルターに従った。」
「だから母親がカトリックで、娘がルター派に傾いた場合、母親は娘を虐待して、新教派からの改宗を迫った。」
「なぜなら公族に新教派が出たりしたら、ローマ教皇の命令で、父の大公の権力までも剥奪されかねなかったからだ」と。

なーるほどね。

上の話が全然わからなかった人は、ぜひDVDでケイト・ブランシェット主演の[エリザベス]を見てください。

旧教派(カトリック)と、新教派(ルター派soonプロテスタント)の血みどろの対立は、親子、兄弟の殺し合いに及び、
偉大な女王エリザベス1世も少女時代、旧教派に押し立てられた異母姉の女王メアリーによって牢獄に入れられ、処刑寸前までいくところから始まる凄まじい映画です。


宮殿から逃亡し、群盗と言われ、追放された新教派の民衆にかくまわれた公女の伝説が、
何百年も後の民話で語られていることにグリム兄弟は興味をもったのだと。

さて母親の魔女には残酷な最後が待っていました。

最終的に白雪姫と王子が結婚するときに。
ディズニーでも小人たちが追い詰めて、深い谷底に魔女は落ちていくラストシーンですが。

グリム童話初版だと、火に焼けた金属の靴をはかされて、魔女は踊りつづけたとなっています。

これは明らかに、中世の魔女裁判の光景が民話に織り込まれたのだと納得。

白雪姫のストーリーの舞台、ヘッセン公国は、現在でもカトリックが多い南のバイエルン公国と、
ルターをかくまって最初にプロテスタントの本拠地になった北のザクセン公国、そのちょうど中間地域だったからです。