こんばんは。またしても島根大学の竹田です。
佐賀大学の江戸都さんからの感想をUPします。去年、一昨年とセミナーに参加した江戸さんは、プライマリケア関連3学会が合併するという話を去年聞いて、家庭医療学会とあと2つの学会の それぞれの成り立ちが知りたくなって調べてみたそうです。それを学内新聞に寄稿しているので、今回はその一部を投稿します。
表1(下記)は、日本家庭医療学会の2002年設立趣旨です。私達が小さい頃からお世話になってきた町の開業のお医者さん、かかりつけのお医者さん、そのイメージを発展させて、一つの専門分野としたものだとも捉えられます。「プライマリ・ケア」という言葉についても、皆さん聞いたことがあると思います。やはりこちらにも、消化器学会、循環器学会などと同様に、1978年から日本プライマリ・ケア学会が存在しま
す。プライマリ・ケア学会の掲げる5つの理念は、
〃Accessibility(近接性), Comprehensiveness(包括性),
Coordination(協調性), Continuity(継続性), Accountability(責任性)〃
です。日本家庭医療学会の設立趣旨と似ていますね。
さらに、わが国には日本総合診療医学会(1993~研究会として発足)もあり、こちらは大学病院など大きな病院の総合診療部のリーダーが集まって作られました。診療だけでなく、教育、研究にも力点をおいた基本理念をもっているところが特徴的です。
診療に関する理念では、特定の臓器にこだわらず、患者のニーズに応じて心理社会面にも目を向ける。医療面接、身体診察、簡易検査などの基本的臨床技能を重視した診療を行う。臨床推論や行動科学を活用し、EBMを実践する。チーム医療を実践する。以上のような項目が挙げられています。
以上の3学会はとても似ているということで、2010年4月から一つの集まりに統合されることが決まっています。後期研修の学会認定プログラムも全国各地の病院に多数設置され、将来「家庭医」を目指す医師が日々研修しています。
また専門医制度もあり、家庭医療学会では今年の7月に初の「家庭医療専門医(「家庭医」)」の認定試験を行います。総合診療医学会と、すでに以前から認定試験が行われているプライマリ・ケア学会とも協力し、内輪で自慢できる看板ではなく、地域社会のニーズに応えられる新しい制度を作ろうとしているようです。それには地域住民や国・地方自治体と一緒になって議論していく必要があり、今、まさに3学会の先生方が積極的に動かれているところです。
さて、ここまでだらだら説明しましたが、そんなこと言われてもまだまだ学生だし、関係ないと思う方もいると思います。しかしそんな世界にもうすでに片足突っ込んでいる医学生(含1年生)も、世の中にはいるのです。
家庭医療学会には、学生・研修医部会という下部組織があり、200名近い医学生が活動しています。主な活動内容は、毎年夏に2泊3日で行われる「医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」の企画・運営です。「家庭医って何?」という低学年の学生から、高学年、また5年目医師までを対象に、20個以上のセッション(家庭医療学会の先生から講師に来ていただく)を用意、また夜は懇親会&花火大会。経験豊かな先生方や、全国の研修医の先輩、医学生仲間と気軽に交流できる楽しい機会です。毎年200人規模で開催され、今年で21回目になります。
学生スタッフは全国各地に散らばっていて、みな東西医体や大学の勉強などの合間を縫って、ネット上でやりとりしながら準備しています。私も4年生の夏休みにふと旅行を兼ねてセミナーに参加し、5年の夏にスタッフとして参加しました。
今年は8月7日(金)~9日(日)の開催(群馬県高崎市)に開催します。詳しくは、日本家庭医療学会 学生・研修医部会HP(
これで宣伝目的も果たせたので話は変わりますが、1年生の皆さん、これから4年間(または6年間)どんな学生生活プランを立てていますか。
部活やバイトなど、何か一つを学生時代ずっと続けていく事は、とても重要だと思います。その中で学びたいことは色々ありますが、集団に属していることに安心して、排他的になっていったり意固地さだけを身に付けてしまったりしてはまずいと思います。上も下も同級生もいる中で、お互いの意見をまずは受け止めあって、一緒に問題解決していける能力を身につけられるといいと思うのですが、どうでしょうか。
医療現場はどの場面においても(前述の家庭医療の分野では特に)年代も考え方も違う他者とのコミュニケーション能力が求められます。それを培う場を自分で見つけて欲しい、できれば複数見つけて欲しい。と、キャンパス内で後輩達を見ると思ってしまう卒業間近の6年生であります。
年齢層も経験もばらばらで、しかし家庭医療に少しは興味があるという共通点を持つ人が大勢集まる場で、ざっくばらんに話を聞き語り合える夏期セミナー。今年、関東方面への旅行(ディズニーとか!)を兼ねてぜひ参加してみてください。きっと予想以上に多くのものが得られると思います。
(表1)
特定非営利活動法人 日本家庭医療学会 設立趣旨書
現代の医療は、その著しい進歩の一方で、専門細分化、身体面の偏重、研究の重視、営利主義などのために、医療において本来実現しなければならない大切なものを失いつつあります。
病んだ一人の人間を、その人の家庭を、そしてその背後にある地域を一個のまとまりのあるものとして取り扱うことが軽視されつつあります。
人間と家庭と地域とを統一体としてとらえる医療を求めて、私たちは次のような特徴を持った医療の実現と、それを実践する家庭医の養成をめざしています。
・家庭に特に重点をおく。
・対象とする人の年齢、性を限らない。
・臓器や原因や治療法を限らない。
・予防、治療、リハビリを含めたあらゆる健康問題に対処する。
・ありふれた病気、症状、訴えを主な対象とする。
・人の精神心理面を始めとした幅広い人間理解、その人と家庭や職場や地域との連関を重視する。
・対象者の生涯にわたる継続性、健康時と病時を通じての継続性、医療のあらゆる段階での継続性を 重視する。
・他の家庭医、専門医や健康問題に係わるあらゆる職種との連携と調整、地方の方々との協同を重視する。
・地理的、時間的、精神的、経済的に最も身近である。
・患者の主体性、自発性、承認性を重視する。