あの番組のパロディです ずっと心に残したい風景 | == 肖蟲軒雑記 ==

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ツボに籠もっているタコが、「知っていても知らなくてもどっちでも良いけど、どちからというと知っていてもしょうもないこと」を書き散らすブログです

ニッポン横断なごみ旅 静岡県二日目

 

おっはよーございます。静岡県二日目。昨日の雨は止みましたがまだここはちょっと曇っています。雨の中の御殿場、寒かったよねー。
ええと、今は裾野市中央公園というところにいます。富士山の溶岩で堰き止められてできた滝が五つあって、五竜の滝って言うんだって。でも三つしか見えませーん。

 

 

 

(スタッフの声:吊り橋の上からだと見えますよー)

 

 

いや、オレはいいから。君たちだけで確認しなさぁーい。

 

注:五条の滝のうち、よく見える三条は黄瀬川本流にかかっているが、支流にかかる残り二条はちょっと見えにくい(赤矢印)実は吊り橋の上からでなくても見えます。

 

 

それにしてもなかなか豪快な滝の音だねえ。これじゃあ、お手紙を読んでもよく聞こえないだろうから、もう少し別の場所に行こうか。
(スタッフの声:そうですね、そうしましょう)
(場所を移動してベンチに座る)
(お手紙を開きながら)さて・と、今日はどこに行くのでしょうか?


トーキチローさん
、ケッタ郎くん★★、そしてスタッフの皆様、いつも番組を楽しく見ています。私は番組が始まるとタブレットにあるGoogle Earthを開いてトーキチローさんがいる場所を探すことにしています。初めにお手紙を読んでいる場所を見つけると、そこから目的地に行く道筋をたどるのです。ここかな、と思う場所に来るとストリートビューで確認します。トーキチローさんが走っている所と同じ風景が出てきた時は、なんだか一緒に走っているような気になってしまいます★★★
(へえ、そんなことしてるんだ)

さて、今度静岡県に来てくださると聞き、是非とも見ていただきたい風景があるので、思い切ってこのお手紙を書いています。それは沼津市熊堂(「くまどう」と読む)にある

(スタッフの声:それ「くまんどう」と読むのだそうです)
(言い直す)くまんどうにある神社の境内から見る高尾山古墳です。

私たちはあちこちを転々としていましたが、縁あって十二年ほど前に沼津市に住むことになりました。新しいところに早く馴染もう、新しい何かを始めようと、焦って参加したボランティア活動で私は人間関係に悩むことになり、一時期はメンタル的に凹んでしまっていました。そんな頃、ある方から「古い貴重な古墳があるのだけど、それが道路工事で壊されてしまうの。なんとか保存できるようにしたいので、一緒に活動して」と誘われたのです。考古学や歴史に興味があった私にとっては、心を惹かれるお誘いでした。

 

発掘の結果わかっていたのは、あの卑弥呼よりも古い時代の古墳だということ、その時代の東日本では最古級、最大級のものだということでした。そんな大事なものを壊してはいけないと思い、「道路と古墳保存の両立を」というテーマで署名集めのお手伝いをしました。夏の暑いさなか、街頭に立って署名を呼びかけたり、知人を訪ねて依頼をしたりしました。当初は「計画通り工事を進める」と頑なだった行政でしたが、だんだんと『英雄達の選択』で有名な磯田先生をはじめ、後押ししてくださる方々にも恵まれ、また非常に多くの全国からの署名もあって、既定路線の方針が、古墳を保存する方向にと変わったのです。

 

しかし、新しい道路はどうしても必要です。なので、工事を変更しようということになりデザインコンペが行われたのが三年前のことでした。変更になったプランは、片側車線はトンネルにして古墳の下を潜らせ、もう片側は橋で古墳の横をまたぐというものです。複雑な工事になりますが、土木関係の方と考古学関係の方双方が力をあわせて考えた斬新なデザインになるとのことです。準備期間を経て来年度から工事が始まります。

 

私はというと、この活動でたくさんの方と知り合いになり、そこから人間関係の輪が広がりました。小さなまち歩きを企画したり、また去年は大河ドラマゆかりのお寺で案内ボランティアをしたのですが、それもこれもこのご縁が元になっています。私にとっては沼津の中での自分の居場所を見つけてくれた古墳ということになります。

工事が始まると、古墳は史跡公園として整備されますし、道路もできます。ですから、見ていただきたい風景はこの後もう残ることはない風景なのです。土嚢で仮に土止めがされ整備不全、荒地のような古墳ですが、それはそれで大切なずっと心に留めておきたい私の沼津での原風景なのです。熊堂にある熊野神社の境内に立つと、もし天気が良ければ愛鷹山越しに富士山の頂上が見えます。古墳を作った人たちは、古墳に眠る大王、私たちはスルガの大王と呼んでいます、富士山を仰ぎ見ながら大王をお祀りしていたのではないか、という想像をしてしまいます。

私たちは、行政で一度決まったことでも市民が声を上げれば変えることができること、をこの古墳保存活動で改めて学びました。また、遺跡保存で今までは対立関係にあった土木関係者と考古学関係者がデザインで力を合わせるという新しい方向性も出てきました。千八百年の時を越えて、古墳の中の大王さまが私たちに教えてくれたのだとすると、やっぱり偉大な人だったのかもしれません。

トーキチローさん、周りは平坦なところばかりですので、お得意の「人生下り坂最高」ということはないでしょうし、上り坂でヒイヒイ言いながら、「『なごみ旅』なんてタイトルつけた奴、出てこい!オレは和んでなんかおらんわ」というトーキチローさんお馴染みのセリフも出ないでしょう。
(ほっとけ!)
それに「残したい心の風景」ではなく、「心の中に残したい風景」なので、番組の趣旨とは違っているかもしれませんが、多くの方にも知っていただきたく、是非とも公園整備や道路の工事が始まる前の高尾山古墳を見に行ってください。
旅のご無事を祈っています。

という、静岡県沼津市 蛸野宙忠、ん?
タコのチュウチュウ?

(スタッフの声:それ、ひろたださんと読むのだそうです)
そうだよね。タコのチュウチュウではあんまりだよね。失礼しました。
たこのひろたださんからのお手紙で、今日は高尾山古墳に行く。
それにしても、卑弥呼の時代よりも古いって、すごいよね。そういうものがあるんだ〜

(スタッフの声:そうですね。お手紙にもあるように東日本で最大級・最古級だそうです。ただお手紙には「古墳に眠る」などと書いてありますが、調べましたところ、実際には人骨などは残っていなくて槍の先とか鏡とかの副葬品や土器からの推測とのことでした)

いや、それにしてもすごいよ。
一緒に入っていたこれは?

道路と古墳整備の完成予想図を広げる)へえ、将来はこんなふうになるんだねえ。

 

 

こちらは、写真だ。確かに富士山が向こう側にチョコンと見える。今日は曇っているから…見えるでしょうか?

それじゃあ、地図で確認して…

(お後がよろしいようで)



★もちろんあの番組のパロディです。トーキチローさんとは、あの方に私が初めて出会ったドラマでの配役名です。モデルになったあの方とは違い、口癖は「オレは尾張中村の百姓のセガレ」です。

 

★★ケッタ郎くんは自転車の名前。トーキチローさんの出身名古屋(私の出身地でもある)では、ほとんどの地域でチャリ(またはチャリンコ)と呼ぶ自転車のことをケッタと言います。トーキチローとケッタ郎で兄弟という設定です。

 

★★★冒頭のGoogle Earthのくだりは、私が実際にしていることです。途中、コースを見失うと背景に目を凝らして店の屋号などを見つけ、そこから場所を特定します。

なお、この裾野市中央公園から高尾山古墳までの道は、一部を除いてほとんど下り坂です。