99 「木村くんの悲劇」と「TVの向うで」
3rdアルバム「Rolling DOWN HOME」はいろんな挑戦をしたアルバムだ。
歌詞も今までにはなかった世界がある。
19歳からデビュー目指してやってきた。
どうしたら夢は叶うのか?絶対叶えてやる、これがテーマだった。
このテーマしかなかったと言っても過言じゃない。
実際いろんなインタビューを受ける中で「次なるテーマは?」と聞かれていた。
自分の夢がどうなるか?どうしたい?はたくさん歌ってきた。
自分ではなく、誰かの歌だったり、もっと物語的に曲を作ったらどうか?と思っていたし言われていた。
「木村くんの悲劇」という歌ができた。
自分の人生がという歌ではなく、こういうことってあるよねという歌だ。
これはかねてから思っていた「多い方にいると安心する日本人について歌った。
♪手をあげるときに、まわりを見渡してあげたことあるかい?
大勢の人の中に、埋もれているとホッとすることないかい?♪
こういうの歌にすればいいんだ!って思った瞬間だった。
あとは物語を考えればいい、むずかしく取られないように誰にもわかる小学校のシーンを書いた。
学級会で合唱祭の曲を決めるシーン、誰一人手を上げない、たまたま日直だった木村君が指される。
オドオドしながら「若者たち」と適当に答えると、クラスのみんなは「木村君とおんなじでーす」と口々に答えた。
この歌を歌うとき「僕の唯一のメッセージソングです」と笑いながらMCをして歌う。
カトちゃんをイメージしながら楽しい雰囲気で歌う。
コメディタッチの歌なんだけどサウンドは難しい、アルバムの中のアレンジは1930年代のアメリカの酒場を思い出させる。
アレンジャーの佐橋さんは歌詞のこのことをとてもわかっていくれた。
しっかりアレンジされたサウンドが、強いメッセージを広くやわらかく届ける。
これはとても勉強になったし、とてもありがたかったし、とても嬉しかった。
「木村くんの悲劇」は「TVの向うで」とつながっている。
「木村くんの悲劇」は「TVの向うで」の前の物語だ。
戦争を起こすのは結局誰なんだろう?
♪手をあげるときに、まわりを見渡してあげたことあるかい?
この歌詞が「で、今お前はどうしてんのよ?」とあれからずーっと語りかけてくる。