93 柴田さんとジョージと3人 アコースティックユニット
レコーディングから帰ってきてからも相変わらずリュウさんとギターを一本づつ抱えて色んな街を回った。
ラジオ公録ライブや学園祭、イベントライブ、CDショップ回りと毎日歌っていた気がする。
一つ新しい試みが始まった。
今までは弾き語りかバンドでの行動だったが、ピアノの柴田さんとギターの鎌田ジョージさんと僕の三人のアコースティックユニットを作った。
岡山、福岡、金沢、富山、宮崎、そして東京の日清パワーステーションの6箇所をやったと思う。
ピアノとギターとギターは実は意外に難しい。
コードもリズムもソロも取れる楽器はアンサンブルが難しい。
この時初めて弾いてはいけない弦、ちゃんとコードを出すということをやった。
今までもやっているつもりだったが詰めが甘かった。
ロスナッシュビルに一緒にいった柴田さんは音の積み方はとても丁寧だった。
し「柿島、いまのとこどういう風に弾いてる?」
か「こうです」とコード名を言ってギターのネックを見せる。
し「なるほどぉ、この音は出さないでくれる」鍵盤で弾いて見せる。
か「こうですか?」
し「オー!イエイ!」
ギターを始めた頃はCコードを弾いてると6弦のEを弾いてC/Eになったり、Aを弾いて6弦のEを弾いてA/Eになったりしてた。
特にDのストロークは難しい、5弦と6弦を一緒に弾いてしまうとぐちゃぐちゃになってしまってた。
盛り上がっちゃうとどーでもよくなっちゃうみたいな感じだった。
この三人でやったアコースティックセットはとても勉強になった。
Rolling DOWN HOMEのレコーディングで音の折り重なりに興味を持った。
力づくじゃない、根性じゃないサウンド、路上ライブをやってきた僕には目から鱗のことが多かった。
曲によって楽器の役割がある、フレーズやボイシングを工夫して互いに支え合い高め合うのだ。
積み木をただ縦に積んでいくアレンジではなく、絡み合うアレンジ。
力いっぱいやるからパワーが出るんじゃない、ちゃんとアレンジされてるからパワーが出る。
丁寧に音を鳴らすということがとても楽しかった、どんなに燃えていても丁寧に。
スプリングスティーンのギターは力ずくでガチャガチャと弾いてるように見えるがフレーズを一音一音丁寧に弾いている。
ちなみに分数コードの美しさはジャクソンブラウンから学んだ。
なぜかライブ会場で「東京ラッキーボーイズ」という名をつけてふざけて自己紹介してた。
二人の先輩はとても寛容だった、僕のリクエストをちゃんと具現化してくれた。
僕も思いっきり甘えていたと思う、とてもとても頼りになったのだ。
長男の僕にとっては兄貴みたいな存在だった。
またあの時のようにこの編成でやってみたい。