60 アレンジ イントロの大切さ
踊り場プリプロの成果は大きかった。
方法は決まった進行をカセットに録る、これだけだった。
あの頃はこれで十分だったのだ、想像して具現化するだけ。
僕にはサウンドに対する強いこだわりがあって、ピアノのフレーズやギターの鳴り方にとてもシビアだった。
小学校の時の「マルセリーノの歌」も「コンドルは飛んでいく」も楽器の音色やフレーズが僕を感動させた。
感動しながら歌いたいのである、それは今も全然かわらない。
ナッシュビルでレコーディングした「名前のついていない場所へ」はまさしくそれで、
この経験が今もボーカルレコーディングにとても役立ち生きている。
その音色やフレーズに痺れて、心が動き歌になる。
歌、メロ、歌詞はテーマ。
アレンジは風景であり世界観だ。
話は少し遡るがデビュー前ケイさんにデモテープを録ってもらってるときに一曲だけ誰かにアレンジしてもらったことがある。
デモテープの僕の声だけ抜き出してそこにアレンジしてくれた。
プロのアレンジャーさんということでものすごく楽しみに聴いたら驚いた。
オシャレなコードが当てられ、リズムパターンも違い、転調された間奏がはいっていた。
アレンジでテーマの伝わり方も変わる、もっと言えばテーマも変わる、自分が自分じゃない感覚にもなった。
この経験をさせてくれたケイさんには本当に感謝している。
人は歌を歌うときイントロで気持ちを作ってるんじゃないだろうか、イントロに浸ってその世界へ入って気持を解放して歌う。
「勝手にしやがれ」も「UFO」も「いとしのエリー」も「いい日旅立ち」もイントロでその世界へ連れてってくれる。
イントロは物語の案内人だ。
これも持論だが、ユタカさんの「アイラブユー」が「レットイットビー」のようにピアノの4分のイントロでで始まったらあんなにたくさんの人に愛されただろうか?
西本さんのあの「チャン、チャララララーン」のこのイントロがあったから、聴く態勢ができ、歌う態勢ができるんじゃないだろうか?
ただ一言言えるのはユタカさんの「アイラブユー」のイントロは最強だ。
このときからアレンジの大切を噛み締めて今も生きている。