35 停滞 焦り 背伸び
ビクタースタジオでデモテープを録ってから連絡はなかった。
「ダメだったのか」なんて思わないのが長所だと思っている(笑)。
どんな苦境にたたされても人生は続くのだ、だったらやれることをやるしかないのだ、歯を食いしばってじゃない、楽しむのだ。
これはいくつになっても変わらない、栄枯盛衰、諸行無常、運もある、運とは踏ん張れる土台があるという意味だ。
もちろん落ち込む時はズシーンと落ち込むけど、落ち込みは節目になると思っている。
弁当配達のバイトは長く続いた。
配達先から「おう!歌う弁当屋!」と言われたが「弁当を配るシンガーです!」とふざけて返していた。
なんかバイトもプロみたいになっちゃって、口もうまくなっちゃうのだ。
バイトをミスなくちゃんとやって口も上手くなる、これやばい、バイトがいい感じになっちゃってる。
とにかく新しい曲を作って認められたいと焦っていたのかもしれない。
一緒にステージやってたヒロさんに「これテキトーに作ってる?」なんて言われて。
「テキトーになんか作ってないよ!」と言い返したこともある。
そんなつもりは毛頭ないけど、ねらった感みたいなものがあったのかもしれない。
「一風変わった」とか「ムリくり背伸び」は全部見破られてしまうんだな。
焦るとこうなる、テーマを忘れて盛って着飾る。
これがダメなんだから違ったものをと勘違いしてしまうんだな、コーさんに週二回デモテープを渡してた時の気持ちが蘇る。
わかっていた筈なのにいつのまに『感動』を置き去りにしてしまうのだ。
珍しいもの流行っているものを取り入れることに躍起になってしまうことを、またやっていたのかもしれない。
そう、感動がなければ勉強も工夫もない、前に反省してわかってた筈なのに。
停滞。
こんな時期もある。