32 裸足のままで 女の子にもらった手紙
神宮橋の上での路上ライブは続けていた。
スーパーバイタリティーのカズヤもタンバリンとコーラスで参加してくれた。
週によって見てくれる人達はまちまちだ、どの曲を歌ったら立ち止まってくれるかが少しだけわかったような気がした。
人の流れを見て曲を決める、そして誰が来てくれているかを見る。
このセットリスト方法は今も弾き語りのステージでやっている。
一曲目はいつも「オーディエンス」から歌った、感動を思い出すためだ。
オーディエンスはミドルテンポの曲なので歌い出しにもちょうどよかった。
ある日曜日毎週観に来てくれてる女の子から「これあとで読んでください」と手紙をもらった。
あとでと言ったので家に帰ってからあけたら柑橘系のいい匂いがした、その手紙にはは夢を叶えるために故郷を飛び出してきたということが書いてあった。
自分とは違う境遇にいる彼女の物語を想像した。気がついたら町を出ていたという一文がを覚えている。
サビが最初にできた。
「悲しくなるといつも逃げてた 踏み込めない僕を壊そう もっと素晴らしい自分に会いたくて 僕を探しに裸足のままで」
こういう時のための弁当配達だ、タウンエースの中で繰り返しこの歌詞を歌った。
ハンドルを握りながら空歌で歌ってたら涙がでてきた。
これは絶対完成させる!僕の楽曲制作は泣けたらそれはも80%できたも同じなる、あとは言葉の整理だけだからだ。
完成したこの歌を彼女は路上で泣きながら聴いてくれた。
この『裸足のままでは』はその時代のライブで欠かせない歌ににり、その後セカンドアルバムに入ることになった。
はじめはピアノ弾き語りでやっていたが途中からギターとブルースハープで歌うようになった、なぜそうしたかは覚えていない。
路上ライブは自分にとってとても大切なものとなった。
やってよかった、あの日代々木公園でギターケースを開けてよかった。
「やってみよう、その勇気が未来を開く」今書きながら思いついた言葉だ。
青臭く聞こえるかもしれないがこの思いは今の歳になってもアル。
あの女の子元気かなぁ。