20 二十歳 20万円 大人買い
具体的にどうすればデビューできるんだろう?20歳になっていた僕は真剣に具体的な方法が知りたかった。
デビューできる具体的な方法なんて実はないんだけど(あるところにあるだろうけど)、少しでも可能性が見える方向に進みたかった。
今思えばあの方法しか思いつかなかった、一番近い音楽関係者に聞く(笑)。
ビブレのコーさんにどうすればデビューできるのかを聞きに行った。
だかコーさんは「今忙しいんだ」「急に用事はいっちゃった」「ちょっと待ってて」といって2時間待ったらやっぱり今日は無理とかなかなか会ってくれなかった、そんなことが続き5回目でやっと会ってくれた。
粘り勝ちである。
なんせのちにビッグアーティストがゴロゴロ出る毎日稼働してるライブハウスだったから本当にバタバタだったんだと思う。
ライブハウスの隣の喫茶店でストレートに切り出した。
か「僕プロになりたいんです、デビューしたいんです」
コー「正直、今のままじゃ全然ダメ、まず曲がダメ、何曲つくった?」
確かにライブ一つやったらもうないくらい、それも出来た曲を全部OKにしてたから実は一曲もない状態。
コー「いろんな曲聴いて曲をつくれ、デモテープ作って持ってきな」
か「デモ……テープってなんですか?」
コー「……わかった(デモテープも知らないか)!明日バイト終わったら空いてるか?」
か「空いてます」(どんなことしても空けるに決まってる)
コー「明日録音機材買いに行こー!20万くらいかかるぞ」
か「にじゅ……う……わかりました!」(母親がいなくてももうローンは組める)
次の日横浜駅にある帝都無線という楽器屋に行って、MTRカセットレコーダー(フォステック4CH)、マイク(シュアー58)、スタンド、シールド、リバーブ、なんちゃらかんちゃらで本当に20万かかった、ある意味大人買い、二十歳の大人買い。
その日から週2に曲つくって10分カセットに録音してコーさんに週一で届けた、1週間に2曲の制作を約束したのだ。
コーさんはこの方法をもう一人のシンガーにやっていた、彼はそのあとしばらくしてデビューしていった。
彼は週1曲だったので「俺は2曲作ってきます!」と言ったのだ、一曲にしときゃよかったとは思わなかった(笑)
このおかげで常に音楽のことを考えるルーティーンになった。
そう、こういうことがやりたかったんだなぁ、バイドして家に帰ってギター弾いてだけじゃないやつ。
叱咤激励してくれる人が出来たことは本当にありがたく幸せなことなんだと心のそこから思い毎日にハリができた。