8 ツヨシ登場 俺15歳
カワノ君から借りたLP(アルバム)はツヨシ。
今はこう呼ぶ人はいないが僕や友人はもれなく全員ツヨシと呼んでいた。
カワノ君から借りた3枚を聴いて興味をもち貸しレコード屋でライブ盤をかりてカセットに録音して聴いた。
「おーぉおおお!」探していたものが見つかった感覚。
よく擦り切れるほど聴いたと言うが、擦り切れるほど聴いてほんとに擦り切れた。
一曲目の「巡恋歌」を聴いた時はたまげた。
「これどうやってんの?一人でやってんの?」。
早いスリーフィンガーにハーモニカ、途中から情熱的なストロークが新しい扉を開けた。
「祈り」のテンポのない丁寧なアルペジオ。
「ひざまくら」の3カポの12弦ギター 美しさ。
「俺らの旅はハイウェイ」の爽やかなスリーフィンガー。
「逆流」のミュートからのチカラ強いカッティング。
「乾杯」のオーディエンスの大合唱。
「夏祭り」の4カポEmのスリーフィンガーからでる淡い恋。
ツヨシを聴いてから、カポ、ハーモニカ(ホルダーつけてやるやつ)サムピック、様々な奏法を知った。
アレンジされたアルバムの中に入ってる曲よりも、ギター 弾き語りでやったライブ盤に絶対的に惹かれた。
このときにカポの重大さを知る。
「逆流」を聴いて「そうか、Eは2カポのDなのかぁ」。
「ひざまくら」を聴いて「オリジナルは2カポのCなのにライブは3カポでやってるんだぁ」。
「二人歩記」という曲に関しては7カポ「こんな高いとこにカポつけるのかぁ、綺麗な響きだなぁ」。
「巡恋歌」がやりたくてハーモニカも買った、同時にハーモニカホルダーも購入。
流行っていたんだろう、近所のレコード屋さんに普通に売ってた。
Keyは2カポのEm、オリジナルKeyはF#m。買い方がわからなくてF#mを買ってしまった、そしたら全然音が合わず吹けない。
慌ててその日にもう一度チャリンコ走らせて楽器へ。
か「すみません、ちょっと吹いちゃったんですけど間違って買っちゃったんです」
レ「わかりました、今回はいいですよ」
と笑顔で言ってくれてAのハーモニカに変えてくれた、本当にありがたかった、高校生のこずかいでは高い買い物だったから。
ちょっとだけ話しはそれるが、こういうことって本当大事だなって今痛切に感じる。トモちゃんとのリコーダー合奏を黙って聴いてくれてた近所の人も、ハーモニカの交換に応じてくれた店員さんもあたたかい。そのもらったあたたかさを抱えながら子供は成長していく、いつかそうなったとき僕もそうしよう、そうしてあげたいって。
そして。
家に帰ってホルダーにセットしてギターは2カポのセットしていざ!これだ!感激!
このころから僕のステージは階段ではなくて2階の廊下になっていた、ここもリバーブが効いてる。
そこには古い足踏みミシンがあってうた本やハーモニカを置いた、のちにカセットレコーダーを置いて録音もしたっけ。
チハル、マサシ、チャゲアス、ミユキ、カグヤヒメ、イルカ、アリス、オフコース、色々やったけど。
15歳の僕はもっぱらツヨシだった。