「退屈」と「つまらない」の違いを一瞬で説明する | 言葉の世界で生きてます Kakeruの日本語ブログ

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日本語教師、書籍編集者、翻訳者の筆者が、日本語を教える際のポイントや、生活の中で見つけた言葉の面白さなどを伝えていきます。

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すみません、一瞬は大げさです💦

日本語学習者が新しい単語に出会った際、必ずと言っていいほど、母国語の辞書や翻訳サイトを使って意味を調べます。

どんなに日本語教育の諸先輩方が「直接法で日本語だけで説明し、新出語は導入して教えなさい」と若手教師に繰り返し強調しても、学生はネットやスマホで調べます。言葉の意味を習得するには母語との対比が一番手っ取り早いからです。

直接法や導入、スマホ使用の功罪はここでは論じませんが、学生がそうやってスマホの翻訳サイトを頼りにした場合、次のようなことが起こります。

「退屈」の英語を調べると…「boring」
「つまらない」を調べても…「boring」

そして「先生、この2つの単語は意味が同じですか?」質問されます。

この時、絶対に「だいたい同じです」で片付けないで下さい。同じような意味の言葉だということを知った上で質問しているので、違いを明確にすることが大事です。

さもないと、後日、
彼は退屈だ。
この本は退屈だ。
つまらない朝は図書館へ行きます。

のようなモヤモヤした文がどんどん出てきて指導に困ることになります。

「退屈」「つまらない」の違いは何か。
まずは品詞です。
「退屈」は形容動詞(な形容詞)、サ変動詞(3グループの動詞)、名詞ですが、
「つまらない」は形容詞(い形容詞)です。
品詞の違いで活用が変わるので、これは必ず最初に伝えるようにします。

次に意味の違いについてですが、
両方とも同じような状態を指すのですが、動作基準か主観的判断かの違いがあります。

授業中に先生の話を聞かず、眠そうにしている学生(A君)と、真面目に聞いている学生(B君)を思い浮かべてください。

A君目線で言えば、
授業がつまらないので、退屈だ。
と言えます。

でもB君はA君を見て、
学校に来て退屈そうにしている、つまらない奴だ。
と思っているかもしれませんし、
A君もB君のことを
勉強ばかりしてつまらない奴だ。
と思っているかもしれません。

この文の「退屈」「つまらない」を入れ替えたら、文がおかしくなりますね。
ここが意味の違いです。

「退屈」は、「したいことがなくて時間を持て余すこと」や「したいことがあっても、時間的あるいは心理的な束縛によってそれができず、現状を受け入れること」、つまり「自分や他の何かが原因で、することがない状態」を指します。
一方、「つまらない」は「面白くない」「くだらない」など、自分にとって「興味や価値がない」ことを形容します。

「仕事が退屈だ」という場合、
「仕事でやることがなくて時間を持て余している」か、「やりたいことができなくて、今の仕事を受け入れていること」を言い、「面白い」かどうかは関係ありません。

一方「仕事がつまらない」という場合、
「この仕事は面白くない、自分にとって価値がない」という意味になります。

これらの例を挙げて退屈」は「何もできない、しないこと」「つまらない」は「面白くない、価値がないこと」と説明すれば、わかってもらえると思います。

上に挙げたモヤモヤした例文ですが
「彼は退屈だ」が彼の状態を指しているなら、「彼は退屈している」に、
彼の人柄を批判するなら、「彼はつまらない男だ」などに、それぞれ変える必要があります。

「この本は退屈だ」は、自分にとって読む価値がないなら、この本はつまらない」の方が適切で、

「つまらない朝は図書館へ行きます」
は、朝やることがない状態なら
「退屈な朝は図書館へ行きます」となります。

本当は授業をつまらないと思っているけど、直接批判するのは失礼だから「あー、退屈」と自分の動作主観表現に変える場合もあったりしますが、
細かく説明すればきりがないので、こちらからそこまで説明する必要はないと思います。


わかってもらえてひと安心していたら、
今度は「退屈だ」と「暇だ」の違いを教えてくださいという質問がほぼ必ず来ます(笑)

なので、そちらも合わせて対処してください🙇‍♂️

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