あの頃は世界が違っていた。

まるで別世界みたいに。


世間は緊急事態宣言とか多分あまり効果のないものをいそいそとやっていた。

その頃の政治家はお金に目がくらんでる、とじいちゃんも社会科の先生も言っていた。


やっと高校生になれたのに。

本当ならやっとできた友達と夜間バスに乗って東京1泊2日の旅!なんてやりたかったのになぁ。

学校は休校になるわ、ワクチンは出来ないわで何にもできない。


中3の春、合格が決まってから高校生になったらやりたいことリストを意気込んで作った。

けど、コロナが流行して卒業式もあいまいに終わったし、リストを全てクリアすることは難しくなった。


期待を胸に高校へ登校。

そこに広がっていたのは光景は、ドラマとはかけ離れていた。


弁当は自席で食べなさい、前を向いて食べなさい。

会話はマスクをしてから。

行事は短縮。



本当につまらない。



そう思ってた。


呆れて窓の外を見てたら、一人の女の子が世界に色をつけてくれた。

真っ赤な赤みたいな原色じゃなく、薄い桃色。

桜の花びらを水に溶かしたみたいな桃色。


「どうして外ばっかり見てるの?」


[どうしてって、こんな現実を見るより外の景色の方がよっぽど面白いからだよ]


「へぇー。じゃあさ、私と友達になって毎日を楽しくしない?ちょうど相棒探してたとこだし」


[どういうこと?]


「だから、私といれば毎日が楽しくなるの」


[へぇ]


「なんでそんな興味無さそうなの!私渡邉理佐。よろしく!」


多分この子も人と話すのが苦手なんだろうな。

慣れてない笑顔に顔が引きっってる。


「…小林由依。よろしく」


それから何となく楽しい、とまでは行かないけど、つまらないからは抜け出せたように感じた。


普通に笑って普通に話して。

それって意外と楽しいんだなって。

たまにちょっと涙が出る。

勘がいい理佐はすぐ気づく。


「由依また泣いてる」


[そんなことないよ。見間違えじゃない?]


ちょっとした会話だけでも、一緒に入れることがすごく嬉しい。


2年生のなってクラスが別れた。

それでも昼休みは毎日会いに行った。

理佐は毎回笑顔で迎えてくれる。


「クラスに友達いないのかよ」


って笑いながら。


いい、私には理佐がいればいい。

それだけで十分。

余計な色はいらない。


それから一緒に暮らそうよって約束をした。

その頃にはコロナなんて収まってればいいのにな。

理佐と一緒に色んなとこ行きたい。

もっと思い出を作りたいな。