八つ目うなぎがあちこちの店に出回ってる。本物と偽物で目が8つ並ぶ

どこの店も生きたものをポリ袋に空気をたっぷりいれて膨らませたものを風船にいれたように売ってる。
生命力が強くて水なしの風船のなかで空気だけで1日ぐらい生きてしまう。うちの店にも4匹ほど1980円で袋が並んだ。
仕事も終盤の昼前に続けざまに2人のお客さんからクララちゃんが頼まれたので切ってもらえますかと助けを求めるようにビクビクしながら袋の八つ目を持ってきた。ああ了解と袋を破るとまな板の上でまだニョロニョロ動く40センチちょっとの八つ目。ブラシで汚れを落としまずは頭を押さえて首のところで斜めに切り落とす。
生命力はハモやウツボほどではないにしても切られた胴体がニョロニョロ動き回る。それを押さえ込みながら30度ぐらいの斜めに5ミリぐらいの幅でスライス、切り口は広く切り数は多くなるのをそのまま血をつけたままでトレイにポイポイ入れていく。細い八つ目も薄く斜めに切ると結構な数がとれて値段分に見えてくる。血も流さないで鍋に入れる。
気持ち悪そうに袋をつまむように持ってきたクララちゃんが息を呑んで僕の後ろから覗き込んでた。気持ち悪そうにしながらも興味津々、さすが魚屋勤め。一匹目を見てたから2度目は余裕で引き受けてきてまたぼくが切るのを見ていた。
終わってから2匹目は動きが悪かったねと言ったら彼女も1匹目は元気でしたという。生きてるものを血と一緒に味噌鍋にするのが秋田流。ぼくも小学校のころよく祖父が買って作ったのをご馳走になった。
うちのは鍋というより味噌煮という感じ。野菜とか豆腐とかはまったく入れず、八つ目うなぎだけを酒と味噌で煮詰めた酒のつまみ。生臭みも消えてコリコリ味噌で煮込んでまぶされた八つ目うなぎはトロリと美味かった。
でも祖父は舌が肥えて贅沢もあったせいか7ミリぐらいの筒切りで煮ていた。昔は近くの川でもとれて安かったから何びきかまとめて煮込んだろう。でも今は細くて短いのを切ってくれと頼まれると薄く斜めに切ることでかさを増やして見せる贅沢品だ。
八つ目うなぎを切っただけで今日の新鮮な体験に感じた。