人生における時間は相対的だ。
楽しく充実した時間は短い。辛くつまらない時間は長い。
しかし、振り返ったとき、楽しく充実した時間は永遠のように長く、つまらかった時間は短い。
ランニングンにおける1秒は、状況によって、まったく違うものとなる。
1.10秒の差
レースで、スタート地点が後ろのため、自分の目標とするペースメーカーになかなか追いつかないことがある。
折り返し地点を利用してカウントしてみたら、ペースメーカとの差は10秒。
10秒なんてあっという間に追いつきそうに思える。しかし、限界ギリギリで走っているレースでは、この差を一気に縮めることは命取りになりかねない。
慎重に、5kmかけて差を縮めよう。
そう思ってみたものの、6秒程度までくるが、なかなか差が縮まらない。
残り6km、追いつかないと。勝負をかけて追いつく。よっしゃー
ここまで来れば。そう思ったのは数分。
16km地点で脚が限界に近づいてきた。
ペースメーカーがここぞとばかりペースアップしてくる。
なんでスピードアップしてんの!おかしいでしょ!と心の中で叫ぶ。
ペースメーカーがペースアップしてるんじゃない、自分が遅くなっているのだ。
最後はふくらはぎが痙攣しはじめ、給水所で水を飲み、ストレッチで伸ばす。
係のおじさんが、「ほら、もうあとちょっとだよ、最後、頑張れ。追いつけ。」なんて無邪気に言ってくる。
これが3度目のハーフレースでの経験。10秒ってすごい差なんだなあ、と思い知った。
結局、目標の1時間40分には1分1秒届かず。。。
2.永遠の25分
初めての10000mレース。制限時間は45分。400mトラック×25周。
今振り返れば、良くそんなのに出たな、と思う。
初めてといっても、この1回しか出たことないのだけど。。。
後半落ちてくることを考慮して、前半行けるところまで行く戦略。
5kmを21分程度で走れば、残り5kmを24分でも制限時間に間に合う。
場合によってはそのまま42-3分でゴールなんて、と夢想。
まったくレース慣れしていなかったし、分かっていなかった、と今なら思う。
最初から飛ばしてよいことは何もなかった。
あっという間に限界に。
5kmで胃が痙攣し始めた。ヤバい。。。。
酸欠で吐きそう。
もうだめだ。トラックのアウトコースに寄って、吐く。
胃がせりあがるが、何も出てこない。
給水テーブルの係員(おじさんと中学生の女の子)が、心配そうにみている。
これは棄権だな。もうやめよう。
もう一度吐こうとする。何も出てこない。
吐いても何も出ないなら、やるしかない。
もう一度走り出す。
「おっ戻るのか」 おじさんと女子中学生が不思議そうに見ている。
そもそも初めてのレースで、失うものは何もない。
行けるところまで行ってみよう。
5km22分30秒。ちょうど45分の半分。
脚は脛とふくらはぎの両方が攣りそう。
トップは33分。次々選手がゴールしていき、トラックに残っている選手が減っていく。
自分がひどく遅く、スローモーションで走っているような感覚。
この後半25分は、永遠のような25分だった。
時計の針は無情に進み、制限時間がせまってくる。永遠のように長く、同時に、死刑宣告が目前に。
46分19秒。
45分は過ぎたが、最終周回に入っていたため、関門で止められることはなく走らせてくれた。
感謝。