四季・冬 | 本との出会いは、師との出会い。

本との出会いは、師との出会い。

智慧は、先生から指導されて身につけるものではなく、自ら学ぶものです。ですから、先生が本であっても、生徒の意欲が高ければ、学習の成果が期待できます。書店には、素晴らしい先生方が、時代を超えて、いつでも待っています。

 非常に難解であるが、良い本を読んだという余韻があり、それを胸に抱いて自分自身の人生を強く歩き出せるような気がする内容だった。

 四季が感じた父の匂い…四季が聞いた犀川創平の声…四季は、創平を「回転は遅いが、指向性が卓越し、客観性が抜群で(自分のように)いろいろな人格を持った、自分とよく似たアーキテクチュアだ」と評した。そう言えば、唯一『すべてがFになる』の第7章の7に、犀川の中の一番計算の速い一番原始的な人格が浮上するシーンがあったが、犀川も四季のように複数の人格を持つのだろうか?、

 四季は、比類ないほど回転の速い頭脳を持っているが、一方でその能力を持て余しているように見えるが、犀川は、あえて頭脳の回転を抑える人格に意識を支配させることによって、四季が評価するような指向性、客観性を高め、意図的に決断を先送りし、社会に影響を与えない生き方を選択しているようにすら思えた。

 ここに描かれた世界は、私にとって、とても分りにくく、何故、このような筋なのか、このような表現なのか、と疑問がいっぱいだったが、、それは、森先生が執筆を続けるうちに、その文章が、読者に向けられたものだけではなく、ご自身の疑問を登場人物に託したものに変容していったからではないか?と思った。

 しかしながら、読了後の爽快感はなく、続きに自分の人生に接ぎ木して、育てていけそうな気がする読後感が味わえた。


にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ