- 新参者 (講談社文庫)/講談社
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この物語は、金言の宝庫。『まつ矢』女将が加賀に言った「あの子は使えますよ。料理の腕はいくらでも磨けますが、口が堅いってのは、客商売を目指す人間にとっては財産です」が口の軽い私の心に深く突き刺さった…
犯人が特定されないことに疑問も持ちながらも、最初は短編集だと思っていたのですが、聞き込みの対象が変わる度に章が変わるという作りなんですね。いつもながら中々凝っていますね。読み終わりました…約400頁というのは、文章量としては、決して多くないのですけれど、何度も何度も、前に戻って、人間関係を確認しながら読みました。そのため走れども、走れども、ゴールの見えない迷路を走るマラソンのような物語りでした。体調がわるかったせいもありますが、しんどかった…
『赤い指・麒麟の翼』と同じテーマの物語。加賀は、虱潰しの聞き込みや証拠集めで真相に迫る。そして定年も近い刑事に「上杉さんはわかっているはずです。〇〇が何を隠しているのかを、どうして白状させようとしないんですか」と迫る。上杉は、容疑者に言う「親は、たとえ憎まれても、子供を正しい方向に導いてやらねばならない。それができるのは親だけなんです」と。家族を愛しているが、不器用で気持ちを上手く伝えられなかった人々は、事件に関わることで深く傷ついた。加賀は下町の人情が残るこの人形町で、誰よりも人情に厚い新参者であった。
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