うちは兄弟の弥勒的イメージSS。 | 【弥勒記】

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弥勒のあ~んなことやこ~んなことが分かってしまうかもしれない戯れ言ブログ。

毎年NARUTOキャラでお祝いしているのは2・3人のみ(笑)なのですが、今回はイタチ兄さんを偲んで抽象的なSSを書いてみました。

というかふっと浮かんだまま書き連ねたので抽象的過ぎて訳分からないかもしれないです。(苦笑)

固有名詞がないからオリジナルと言っちゃっても通用しそうだし。


うちは兄弟ってお互いが大切過ぎてかけがえのない存在を通り越しているイメージがあるのですよ。

一族を惨殺した時のイタチ兄さんは当時の恋人よりもサッスンを選んでますからね。

天秤にかけることなくそうした心情的にもう…ね。

禁忌の匂いが漂ってくるの。(笑)


弥勒が持っている二人に対してのイメージがなんとなく伝わると嬉しいですがうちは兄弟という先入観なしでも読めるようになっているので取り敢えずブログにアップしてみることにしました。




うちは兄弟もオリジナルも読みたくねーよ!と言う方もいらっしゃると思うので一応下げますね。

























『比翼塚の椿』






そこはかとない闇が広がっていた。


その中で黒褐色の枝に咲く一輪の真紅の椿だけが色彩を放っていた。
見事な程に大輪の、華麗な姿の後方には血のように赤い花弁が果てしなく敷き詰められていた。



―――何処までも何処までも。



見据える先には黒い闇しかない筈だのに、時折対岸と思われる場所に姿形が瓜二つの、小ぶりの椿が蜉蝣のように揺らめいてみえた。
闇にぽっかりと浮かぶその椿は穢れを知らない凛とした白色をしていた。
まるで水面に映る己が姿を覗き見ているような、欠落した半身がそこにあるような幻影を抱き、その危うさと眩さに焦がれた。
ひとたび触れれば腐食してしまいそうな儚さに幾度も夢を見た。


だから純白の美しさを賛美するためならば全てを闇に葬り去ることができた。
茎が枯れ根が腐ろうとも厭わない。
ただ一つの愛しくて穢れのない小さな世界だった。


雪白の椿もまた暗闇にぽっかりと浮かぶ色鮮やかな紅を羨望していた。
いとも容易く何色にも染まってしまいそうな、己の心許無さに対極しているからこそ深く憧憬し崇拝した。
ほどなくして焦がれ身悶えていた椿は何者かの気紛れな悪戯によって対面を果たした。


花弁に触れられそうな程近くに互いを感じた時の、歓喜に満ちた命の奮えの中に眩い閃光が走った。
暖かく柔和な光に包まれ、一つの完全体となれた錯覚に陥った刹那に、真紅の椿は音もなく静かにその身を落とした。
既に壊疽が始まっていた椿は至福の中で永遠の臥房へ入ることに喜悦し、眠りについた。



―――幸せだった。



雪白の椿は朝露を滴らせ、ただなす術もなくその様を眺めていた。
花弁が醜悪に変色しようとも構わなかった。


焦がれていた半身はもう何処にもいない。
暫くして欠けた椿は黒い闇の中で鎌首をもたげた。




だが抱懐した視界に映ったのは、いざなうように何処までも果てなく続いている血のように赤い花弁だけだった。





〈了〉