映画 「枯れ葉」 2023(令和5)年12月15日公開 ★★★☆☆

(フィンランド語; 字幕翻訳 石田泰子)

 

 

ヘルシンキのスーパーマーケット。

開業前の店内に、バーコードを通す音が響きます。

アンサも棚に商品を入れ替える作業をしていますが、

それをじっと監視する男が・・・

 

 

工場で働くホラッパ(左↓)は、先輩のフオタリに半ば強引にカラオケに連れて行かれます。

 

 

 

アンサも偶然、同僚のリーサに連れられてそこにいました。

 

フオタリは自慢の喉?を披露したり、リーサにちょっかい出したり楽しそうですが

ホラッパは黙って酒を飲むだけ。

ホラッパとアンサはお互いが気になっているようですが

ふたりとも内気で声をかけることもできません。

 

ある日、アンサが期限切れ商品を廃棄していると

やってきた若者に「欲しい」といわれ、どうぞと言っていたのがチェックされ、

バッグのなかから賞味期限切れの食品が見つかると、

いきなり解雇されてしまいます。

それに怒ったリーサも、いっしょにスーパーを辞めます。

 

 

ネットで職探しをしようとネットカフェに行くと

30分10ユーロといわれます。

なんとか8ユーロに負けてもらって仕事を検索し、洗い場の仕事を始めますが

そこの経営者は麻薬の密売をやっていて

給料日の月曜日に逮捕されてしまいます。

 

呆然としているアンサのところに偶然通りかかったホラッパ。

一文無しのアンサはコーヒーとシナモンロールをおごってもらい、

映画館へ。

 

 

ゾンビ映画「デッド・ドント・ダイ」を見て

「また会いたい」というホラッパに、アンサは電話番号をメモして渡し、

頬にキスをして別れます。

 

ホラッパはその直後にタバコを吸おうとしたとき

メモが飛んで行ったことに気が付きませんでした。

                  (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

シネマカリテで観たのは、アキ・カウリスマキ監督の「枯れ葉」でした。

 

12月に公開されてもう3か月もやってるのって、なかなかのロングランですね。

カリテでは夜の遅い回だけになって、いったん諦めたんですが、

なぜか先週くらいから昼間の回も復活していました。

 

北欧映画は私は基本的に好きで、無音の凍てつく空気感だったり、

逆にカラフルな色遣いのガーリーな映画も好き。

ロイ・アンダーソンの不条理映画も嫌いじゃありません。

(北欧を一緒くたにするのは日本と韓国と台湾を一緒にするような無神経なことかもしれませんが)

 

カウリスマキ監督作品は・・・なんかよくわからない。

でも評価がかなり高いようなので、とりあえず鑑賞。

 

 

冒頭のスーパーのシーンは、これ↓によく似ていました。

 

 

今をときめくザンドラ・ヒュラーの主演作。

 

旧東ドイツの巨大スーパーで働く無口なふたりがひかれあう話で、

登場人物は全員「わけあり」っぽいんですが、

やっぱり大きな話の進展はありません。

 

本作のふたりも訳あってこんな孤独な生活なんでしょうけど、

想像したくても、ほとんど材料が示されないのです。

(後半、アンサの父と兄がアル中で死んだ、ということくらい)

 

ホラッパは「禁煙」と書いてある前でタバコを吸い、

職場でも酒瓶が手放せないちょっと共感しづらい人物像。

 

アンサは美人だし真面目だし、なんでこんな境遇なのかは不明。

ひとり暮らしの女性が

スーパーをクビになったとたんに、10ユーロも払えない一文無し、

というのがちょっと理解できなかったけど、

それを言っていたらきりがないので、先にすすみます。

 

ネタバレです。

 

 

ホラッパは、仕事中の事故でけがをしたの時の呼気検査でアルコールが検出され

(その前から気づかれていたんでしょうけど)上司からクビを告げられます。

アンサの電話番号のメモをなくしたのもショックで

フタリオに愚痴をこぼします。

「このまえカラオケバーで会った小柄なほうに再会して

結婚しようとおもったけど、電話番号をなくした」

「名前も聞いてないから探しようがない」

 

ホラッパは最後に別れた映画館の前で漠然と待ち続け

ある日、アンサと再会します。

 

「ほかにいい人ができたのかと思った」

「番号をなくして電話できなかった」

 

アンサは別の肉体労働の仕事についていました。

ホラッパを家の食事に誘い、食材と食器を購入します。

 

 

食前酒のグラスが小さいというホラッパ。

「父も兄も酒で死んだ。母はそれを嘆いて死んだ」

「酒飲みはもうごめんよ」

というアンサに

「指図するな!」とホラッパは怒って帰ってしまい、

アンサは食器をゴミ箱に捨てます。

 

 

アンサはホラッパのことをリーサに愚痴ります。

「私の部屋をパブだと思ってる」

「男なんてみんなクズよ」

 

 

アンサは道で殺処分されそうになっていた犬と出会い

家につれてかえってチャップリンと名付けます。

 

ホラッパは次の職場でも飲酒が原因でクビになり

モーテルで酒を飲んでいますが、

急に思い立って、酒を捨て、断酒することにします。

 

「君に見捨てられた酔っ払いだ。君のために酒を断った」

「会ってくれるかな?」

「すぐに来て」というアンサのことばに

隣の部屋の男に上着を借りて、外に飛び出すホラッパ。

 

ところが次の瞬間、路面バスに轢かれてしまいます。

 

アンサはフタリオから事故のことを聞き、いそいで病院へ。

意識不明の重体でしたが、毎日チャップリンをつれて見舞いに行き

毎回辛抱強く話しかけています。

そしてある日、意識が戻ったと連絡が入ります。

 

看護婦の元夫の服を借りて退院するホラッパ。

外にでると、チャップリンを連れたアンサが待っていました。

ウィンクするアンサ。        (あらすじ ここまで)

 

 

チャップリンを演じたのはカウリスマキ監督の愛犬だそうで

この子が一番いい味だしていたかも。

「ドックマン」の直後に見るとちょっと物足りないですが、このくらいがいいかな?

 

シネマカリテにもちゃんといました。

 

不器用でかみ合わないふたりの間を

この子がしっかりつなぎとめてくれそうな予感です。

 

あらすじだけふりかえると、

「なんじゃこれ」って感じで、

「君の名は」の時代ならともかく、

毎日たくさんの情報や選択肢をくぐりながら生きてる私たちにとっては

ちょっといろいろアレなんですが、その乖離具合が人気の秘密なのかな?

 

時代設定は「ない」そうですが、

ウクライナ侵攻のニュースを聞いてると2022年くらいだし、

「デッド・ドント・ダイ」の公開は4年前だし、

フィンランドがワールドカップでブラジルに勝ったのは??これはちょっとウソですね。

 

それから使われている楽曲も多岐にわたります。

タイトルにもなっているシャンソンの「枯れ葉」もですが

最初の方で、アンサの部屋のラジオからは「竹田の子守歌」がかかっててびっくり。

 

カラオケバーで歌う人、みんな上手でした。

(フタリオの音程はかなりビミョーだったけど)

「シューベルトのセレナーデ」私は歌いたいのに

カラオケにはあんまり入ってなくて、いつも「流浪の民」を歌ってます。

(↑いらん情報で失礼しました)

 

カウリスマキ監督は寡作なので、DVDや配信で半分くらいは観ているのですが、

あまりブログに残していないので、

どんな話だったのかほんとに覚えてないんですよ。

ただ、観終わってほっとやさしくあたたかな気持ちになれることは確かです。