「シンゴジラ」の時も、鉄オタや自衛隊フリークの人たちが
けっこうザワザワしていましたが、
今回の「ゴジラ-1.0」でも特撮オタクやミリタリーオタクの方たちが
わずかな映像の断片からいろんな情報を読み取っていて
すごいな~!と感心するばかり。
私の興味は、怪獣や武器や車両よりも
「昭和22年の銀座」のほうなので、
映画をみているときも、そっちばかり見ていました。
一般的には「当時の銀座を忠実に再現している」といわれていて
プロデューサーの座談会記事もこんな感じでした。
頑張られたのはわかるけれど、最後の
「映像資料としての価値もある」はちょっと言いすぎでしょうよ!
昭和22年には、私も生まれてなかったから、
両親から聞いた話とか、
写真や地図や古い映画の知識なので
そんな偉そうなことは言えないんですが、
みてる間も、日劇のあたりは違うよね~と思ったし、
TOKYO PXの看板を出しながら米兵がひとりもいないし、
80代以上のリアル世代の方たちに通用するのかな?
と思ってしまいました。
細かいこといいたいけど、「私のみまちがい」ってこともあるので、
とりあえず予告編に使われているこの画像から。
このシーンは自信があるから予告編に使ってるんですよね?
この銀座の街並みは昭和22年に実在するのか?
ここには銀座の有名な老舗宝飾店「天賞堂」が映っています。
天賞堂といえば、松坂屋の並び(尾張町2-16)にあった
屋上に天使の像があるこの建物が有名。
空襲で焼けて、戦後、今の場所に移ったんですけど、
こんな地味になったっけ?と思ったら・・・
↑
昭和21年の天賞堂(お店のHPより)
ほんとだ!天使はなくなったんですね。
天賞堂の左隣には、映画では「クラブニューモアナ」があり、
引きの画像だと、そのとなりが「エシール洋装店」「銀座シルク」
そして奥まったところに大きな白っぽいビルが見えました。
昭和26年の写真ですが、右端に銀座シルク、道をへだてて富士銀行が見えます。
道路の向かい側にあった
スキヤカメラのサイトからお借りしました。
⇩
昭和22年の火保図があればよいのですが、
残念ながらこの時期にはつくられていません。
東京風物名物誌(昭和26年)より
北が右側になっていますが、
服部時計店、天賞堂、銀座シルク、
そしてちょっと後ろに引っ込んだところのビルは富士銀行でよさそうです。
そして、火保図(昭和25年~)には、「エシール洋装」もあります。
「クラブニューモアナ」は地図からは見つからなかったけれど
進駐軍相手のクラブという設定かな?
(それなら看板が「カタカナ書きだけ」というのは絶対ありえない!)
あと、エシール洋装店の黒い垂れ幕ですが、
昭和22年に「五周年記念の特売」やるわけないですよね。
ということで、お店の並びについては、
昭和26年レベルで再現していることは分かったけれど、
厳密にいうとアウトですね。
(自信のある予告編でこれ?と思ってしまった)
それから、ゴジラは晴海側から有楽町駅方面へ進んだと思ったんだけど、
人の逃げる方向が逆ですね。(これでよかったんだっけ??)
ゴジラの身長は50.1メートルの設定らしいですが、
そうすると、この右側の建物も同じくらい?
これは東芝館(当時は松田ビル)でしょうね。
その後数寄屋橋阪急が入ったビルです。
私の勘違いかもしれないけど、いくつかのビルが
服部時計店より高かったような気がしたんですが、
服部時計店の39.39メートル
(30.3m+屋上工作物に相当する時計塔が9.09m)というのが
建築基準法ぎりぎりの高さだと聞いています。
(見間違いだったらごめんなさい)
↑
これがリアルな昭和22年の銀座です。
進駐軍に接収された建物が目につきますが、
それ以上に水色の部分が気になりますね。
これはすべて「川」です。
昭和22年の銀座は水路に囲まれた「水都」だったのです!
ノリコが車両から落ちて外堀川へ・・・というシーンはありましたが、
(浅いから、絶対助からないと思いますけどね)
ゴジラが橋を渡ったり、川のなかを歩くシーン、あったっけ?
(普通に考えて、2万トンのゴジラは橋を渡れなそうだし、
最初から水の中を進みそうですが・・・)
これは昭和28年なので、新しい建物が増えてますけど、
外堀川にかかる数寄屋橋、けっこう大きいです。
数寄屋橋といえば「君の名は」(アニメの方じゃありません)
ドラマ化は昭和27年からでしたが、
舞台となったのは昭和21年くらいでしたよね?
「君の名は」を夢中になって見ていた世代
まだたくさんご存命なのに、数寄屋橋を無視したらダメだと思います。
外堀川だけでなく、築地川、三十間堀川、京橋川、汐留川・・・
ゴジラがどっちに進もうが必ず川に当たるのに、まるっと無視でした。
ネットで画像を見ていたら、上のよりも広範囲に映ってるのを発見。
ゴジラのしっぽの先になんとなく「橋っぽいもの」は映ってるんですけど・・・
模型の土台だけ?
なんやかんやあって、数寄屋橋は写さないことにしたんでしょうけど、
この象徴的な場所はカットしたらダメでしょう!
進駐軍・・・闇市・・・都電・・・街娼・・・英語ばかりの看板・・・
このあたりもリアル世代の鮮烈な記憶だと思うんですが
闇市が終戦直後のドラマパートで登場した以外はスルーでした。
(メイン通りの露店のテントは一応再現できていましたが)
「アメリカに助けてもらえない」という設定のために
昭和22年の銀座で米兵を「いなかった」ことにするのも
それは絶対「時代を再現」してはいないと思う。
↑
上2枚も「スキヤカメラ」のサイトより
今も天賞堂の裏のビルで営業してるから
お願いすればもっと昭和22年の写真
見せていただける気がしますけどね。
そもそも「ゴジラが日本を襲う」とか、荒唐無稽な話で
細かいこといいたくないけど、
「時代考証にはこだわって、資料映像の価値ある」までいわれちゃうと
片腹痛いです。
「写真や映像が見つからない」という理由で、
バレないと思って?(昭和22年でなく)26年を再現したのもだけれど、
それ以上に、
「76年前の記憶がある世代」を
「ゴジラ-1.0」の観客層に想定していないのが、悲しくて、腹立たしいです。
この世代に成り代わって文句言いたくて
若干過激になってしまい、すみませんでした。
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