映画 「ゴジラ-1.0」 2023(令和5)年11月3日公開 ★★★☆☆

 

 

太平洋戦争末期、

爆弾を搭載したゼロ戦が機体トラブルのため、大戸島に不時着します。

この島にいるのは、わずかな漁民と、日本軍の整備士たち。

そこの隊長の橘(青木崇高)はパイロットの敷島(神木隆之介)に声をかけます。

「このガタガタの滑走路に着陸させられるとはなかなかの腕だな」

「ただ機体にはどこにも故障箇所が見つからなかった」

 

ここの整備士たちは、敷島が特攻におじけづいて引き返したことに気づきつつも

彼を責めることはしませんでした。

 

島の周辺にたくさんの深海魚がうかびあがってきて

これは島の住民たちが「ゴジラ」と呼ぶ巨大生物の出現の予兆なのですが

果たしてその晩、「ゴジラ」とおもわれる化け物が島を襲撃します。

ゼロ戦の機関砲で攻撃するようにいわれた敷島でしたが

再びおじけづき、彼と橘を残して、整備兵たちは全員死んでしまいます。

 

日本は戦争に負け、

1945年12月、敷島は帰宅するも、

「生きて帰ってこい」と言っていた実家の両親は空襲で亡くなり

となりの家のスミコ(安藤サクラ)に、

「(特攻のくせに)なんで生きて帰ってきた」

「平気な顔して帰ってきたのか、恥知らず!」と激しく責められます。

 

闇市を歩いていると、いきなり見知らぬ女性から赤ん坊を押し付けられ、

そのまま家にあがりこまれて住み着かれてしまいます。

彼女の名はノリコ(浜辺美波)。赤ん坊はアキコ。

赤ん坊はノリコの子どもではなく、瀕死の夫婦から託されたとか。

 

1946年3月、

3人の生活を賄うため、敷島は危険手当のつく機雷撤去の仕事をはじめます。

金属探知にひっかからない木造船「新生丸」の乗組員は

船長の秋津(佐々木蔵之介)学者の野田(吉岡秀隆)船員見習いの水島(山田裕貴)。

 

仕事にも慣れ、家を新築することもでき、

3人の疑似家族の生活も安定したころ

1947年3月、

ノリコはスミコに子守りを頼んで、銀座で事務のしごとをはじめます。

 

前年の7月にアメリカは、ビキニ環礁で核実験を行いましたが

そのころから、

謎の「超巨大水中生物」に米軍機が撃墜される事件が多発しました。

敷島が大戸島で目撃したゴジラと思われるこの巨大生物は北上し、

日本上陸の危険性がでてきました。 (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

日本製のゴジラの最新作は、けっこう評判良いようで、

ひさしぶりに「みたい映画」のなかに邦画が入りました。

「ゴジラ-1.0」って、なんて読むのかと思ったら

「ゴジラマイナスワン」通称「マイゴジ」だそうです。

(マイゴジラだと意味がかわっちゃうし、シンゴジラにつづき短いのはありがたい!)

 

1954年の最初の「ゴジラ」では、

恐竜の生き残りがアメリカの核実験で眼を覚まし、凶暴化した・・・

みたいな話でしたよね?

で、大戸島に伝わる伝説の化け物「呉爾羅」は実在した!みたいな。

(ちがうかな?)

 

マイゴジでは、もうちょっと遡って、

ゴジラの最初の出現は1945年。

この時は核実験より前なのに

整備士皆殺しで、破壊しまくって帰っていきました。

海での核実験は1946年が最初で、そのまえは砂漠での実験だったから、

「核で凶暴化した」こととの整合性がとれないですよね。

(たしかに大きさは変えてましたけど、それでも暴れすぎです)

 

 

1945年には

「大戸島で巨大生物を目撃した」

「隠れて見守っていたら帰っていった」

くらいで良かったんじゃないの?

(どうしても冒頭でVFXを見せつけたかったんでしょうけどね)

 

 

それから、これを感じた人は多かったと思いますが

ドラマ部分の脚本が全く練られてない感じ。というか、へったくそです。

 

新生丸のなかのシーンも楽しげではあるものの

「三丁目の夕日」をかなり引きずってました。(わざと?)

 

敷島とノリコとスミコのシーンは、人情劇っぽかったり

いきなり直球になったりで、役者さんたち、やりにくかったでしょうね。

ふつうに家庭内で

「あなたの背負っているものを私にも分けてください」

とか

「生き残った人間はきちんと生きていくべきです」

とかのセリフにかぶせて、それっぽい音楽が鳴ったりして・・・

ああ~!こういうの苦手!

 

スミコの突然の態度の豹変も、安藤サクラをもってしても、意味不明。

線が細くてヘタレで自分を追い込むタイプの敷島を

神木隆之介は熱演していたけれど、

少尉だし、もうちょっと年上のほうが良かったんじゃないの?

「小僧」の水島の山田裕貴よりは10歳くらい上じゃないとおかしいのに、

実年齢も神木のほうが下ですよ。

 

 

いうのが遅れましたが、VFXの迫力は過去イチで、もう「決定版!」のクオリティなのに

ドラマ部分がおままごと(演技じゃなくて脚本が)みたいで

ほんと、ぜんぜん入り込めませんでした。

 

ゴジラが日本に向かってきます。つづきです(ネタバレ

 

ゴジラが日本に向かって北上するも、日本にはすでに軍隊はなく

アメリカも(ソ連との関係から)手出しできない状況。

ようやく軍艦「高雄」を手配できたものの、それが到着するまでの時間稼ぎが

新生丸に課せられます。

こちらから攻撃するのは無理なので、

「回収した機雷を飲み込ませて爆破する」

という野田の案が功を奏し、多少のダメージは与えられたものの、

ゴジラはすぐに復活。

危機一髪のところに高雄が到着しますが、

ゴジラはこの大きな軍艦をなんなく沈没させ

そのまま品川から日本上陸。銀座の街をなぎ倒していきます。

 

省線に乗っていたノリコは車両ごと投げ出されますが、なんとか生還。

奇跡的に敷島と会えたのもつかの間、爆風に飛ばされて行方不明に。

 

 

ノリコを失った敷島は、元海軍の駆逐艦長、堀田のもとに集まった

民間のゴジラ駆逐計画に賛同し、秋津たちと共に参加を決めます。

 

 

野田を中心とした学者たちが考案した「わだつみ作戦」とは

火器をつかった攻撃はあきらめ、フロンガスでゴジラの体をつつんで

相模湾の深い海底に沈め、それをまたフロートを使って海面まで浮上させて

急激な減圧で殺すというもの。

「東洋バルーン」は大量のフロートとそれを扱える技術者を派遣してくれました。

 

「自分が戦闘機に乗ってゴジラを誘導する」という敷島のことばに

廃棄をまぬがれた「震電」という機体が見つかりますが、

この機体の整備のために敷島は橘を探し出してきます。

 

ゴジラは体内からの攻撃に弱いことを知っている敷島は

自分が爆弾を搭載してゴジラの口に飛び込み

自爆するつもりでいました。

 

ゴジラは想定外に早く出現。

上陸を許してしまいますが、敷島の的確な誘導で相模湾へ。

わだつみ作戦は順調にすすみますが、ワイヤーが切れて失敗か、

と思った瞬間に、水島の声掛けに集まったたくさんの民間船の協力を得て

海面まで上昇させることに成功しますが、決定打にはならず。

 

その瞬間、敷島の特攻機がゴジラの口のなかに突撃し、なかで爆発。

ゴジラの頭部は吹き飛ばされ、海のなかへと消えていきます。

 

敷島は自分の命をひきかえに・・・

と誰もが思ったその瞬間、

パラシュートで脱出する彼の姿が見えました。

橘が最後に脱出装置をつくっていてくれたのでした。

 

帰宅した敷島を待っていたのは1本の電報。

ノリコは記憶喪失で病院に入院しており、生きていたのでした。

                  (あらすじ ここまで)

 

 

 

特攻の生き残りの人の罪悪感

「私の戦争はまだ終わっていない」

ということばに合わせると、最後は自身の命と引き換えに

世界を救うのがすんなりする終わり方なんですが、

今の時代、これはちょっと無理です。

 

敷島の周囲だけに奇跡が起こって

「ご都合主義」といわれてもしょうがないですが、

エンタメ映画にはハッピーエンドがお似合い。

 

 

危機一髪のとき、水島がたくさんの小さい漁船を率いて応援にくるシーン。

絵面は感動的なんですけど、まじか!って思いました(笑)

 

「ダンケルク」とか「ハドソン川の奇跡」でも似たようなシーンあったけど

あれはあくまでも(多少の危険はあるとしても)「人命救助」。

自前の漁船でゴジラと対決しようって人をこんなに集められる?

と思いました。

そもそもワイヤーつなげるだけで半日くらいかかりそうですよ(笑)

 

これは昭和22年の銀座の写真です。

 

戦争で焼け残った(というより敢えて残した)立派な建物は

ほぼすべて進駐軍に接収されていました。

ノリコが「銀座で事務の仕事」といったとき、

まちがいなく進駐軍の仕事だよね、と思ったくらいです。

(あるいは事務は口実で別の仕事だったり・・)

 

 

2万人の死者のなかには米軍関係者も多かったことでしょう。

マッカーサーのいた第一生命館は壊されなかったのかな?

いずれにせよ、自国民がこんな目にあってるのに

「ソ連を刺激したくない」とかいうよくわかんない理由で

アメリカがスルーするわけないと思いますけど。

 

 

日劇は進駐軍に接収されなかったからかもしれませんが

かなり頻繁に映っていたので、ゴジラよりも街ばかり見てしまった!

 

 

 
日劇の裏は昭和22年なんて、闇市しかなかったのにね。
 
 
 

追記

 

「昭和22年の銀座」のことはやっぱり気になるので

後日、ちょっと掘り下げてみました。

ただ、映画を観たのは1回だけで、動体視力にも問題ありなので

見逃していたり、勘違いもあるかもしれません。

その辺ご容赦ください。

 

 

文句ばかり書いた割に★3つもつけたのは

ただただVFXの迫力がすごかったから。

円谷プロの特撮で育った世代なので

こういうのが子ども時代にみられる今の子たちがうらやましいです。

 

こんなのが追いかけてきたら、ビビるよね~

 

 

山崎監督の過去作の一覧を見ていたら、

「海賊と呼ばれた男」までは共同脚本だったのを

「DESTINY鎌倉ものがたり」からはひとりで脚本書くようになったんですね。

(アニメ作品で観てないのもあるけど)この時から総じて、急に素人くさくなりました。

え?自分で気づかない?

とか、ちょっと思ってしまいました。(←失礼な!)