映画 「逆転のトライアングル」 2023(令和5)年2月23日公開 ★★★★★

(英語: 字幕翻訳 稲田 嵯裕里)

 

 

上半身はだかの細マッチョな男性モデルたちのオーディション。

カール(中央)もそのなかのひとりで、審査員の前で自己アピールをし、

ウォーキングを披露します。

 

 

パート1 「カール&ヤヤ」 

 

場面変わって満員のファッションショーのトップバッターのヤヤ。

彼女は人気沸騰中のモデルで、インフルエンサーでもあります。

そしてカールとヤヤは交際中。

 

高級レストランでディナーのあと、ふたりは

どちらが支払いをするかでもめて、気まずい雰囲気になります。

帰りのタクシーのなかでもその話が蒸し返され、いったんは収まるも

タクシーの運転手から

「お客さん、戦うかずっと奴隷になるか

決まるのは今だよ!」といわれ、エレベーターまで追いかけて

伝票を見た見ない、払う振りをしただけ、

男だから女だからは関係ないとか、延々と・・・・

 

それでもけんかをしながらも

ふたりは関係はつづけているのです。

 

パート2 「ヨット」

 

接客クルーのリーダー、ポーラが

みんなを集めて喝をいれています。

「お客様に最高のおもてなしをするのが私たちの使命」

「そしてその見返りはチップの形で帰ってくる」

 

この超豪華客船のクルージングには

マヤとカールも参加しています。

ヤヤは企業からの招待で、カールは彼女の撮影係。

 

 

インスタ用の写真を撮っていると

ロシア人夫婦、ディミトリとベラに話しかけられます。

彼らは肥料で大儲けしたオルガルヒのようです。

 

上品なイギリス人老夫婦、クレメンティンとウィストンは

手りゅう弾や地雷の会社で財産を得てきたらしく

車いすのテレーズに話しかけますが

テレーズは脳卒中の後遺症でうまく話すことができません。

 

IT富豪の中年男ヤルモは独身で

ヤヤたちといっしょに写真を撮ることに成功。

ロレックスを何本ももってきており、

お金も使い切れないほどもっているといって

なんでも奢ってくれます。

 

この船の船長トーマスはアル中で、全く部屋からでてきません。

ポーラがなんども呼びにいきますが応じず。

一等航海士のダリウスに相談するも埒があきません。

 

「船長主催の晩さん会」にも非協力的。

「(天候の荒れる)木曜日以外の日を選んでください」

というと

「じゃあ、木曜日で決定だ!」と。


カールはヤヤとアイコンタクトをとってる有色人種のクルーが気に入らず

ポーラに

「デッキで上半身裸でタバコをすっているクルーがいる」とチクると

その男はすぐにクビになって、船から追い出されてしまいます。

 

デッキでは水着のベラが女性クルーのアリシアに

「あなたもジャグジーに入りなさい」

「いえ、仕事中ですから」・・・

ところが、

「夫のディミトリに船ごと買い取ってもらう」とか言い始め

アリシアだけでなく、最後には船内のクルーたちが全員水着に着替え、

スライダーで海に飛び込むイベント大会になってしまいます。

 

そして晩餐会がはじまり、トーマスも着替えて客を迎えますが

続々と高級な料理が運ばれてくるなか

船は激しく揺れ始めます。       (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

 

 

去年、是枝監督の「ベイビー・ブローカー」がカンヌでダメだった時

見事パルムドールをとったのが本作でした。

邦題は「逆転のトライアングル」ですが、原題は

『TRIANGLE OF SADNESS(悲しみのトライアングル)』で

これは眉間のしわのこと。

セレブ達がボトックス注射で消そうとする場所です。

最初のモデルのシーンでも

「悲しみのトライアングルをもっとリラックスさせて」

というようなセリフがありましたね。

 

最初のモデルのシーンは、ストーリーには関係ないコントですが

予告編にも登場して、やたらと印象に残ります。

 

 

「バレンシアガ」を着るときは冷酷無比な冷たい顔をして

「H&M」みたいにお安いのでは歯を出して笑い、陽気でハッピー~♡

みたいな・・・

何度見ても笑っちゃうんですが、カンヌに出すような作品に

ブランドの実名出して笑いにするか?

ただ、高いのも安いのも同等に笑いものにしてるから、

別にいいんじゃないかな?(個人的意見です)

 

さて、本編に入って、

ディナーのあと、伝票が来て、(食事前には奢るといってたヤヤが)

「ごちそうさま」といったことから

どっちが払うかでけんかになるのです。

「自分が払う」とレジ前でもめるのは日本ではありがちですが

これは逆。

収入は明らかにヤヤのほうが上だけど

たまにはカールが払ったってよさそうなものですが

ジェンダーまでもちだして、しつこくこの話を引っ張ります。

 

 

同じオストルンド監督の「フレンチアルプスで起きたこと」でも

「雪崩のときに子どもたちを置いて 自分だけ逃げたこと」を

夫は妻から何度も繰り返し問い詰められていました。

 

「ねちねちとしつこい」

「しかも悪意をもってやってる」

というのは、まさに私の性格でもあり、

一般的にはウケないと思ってたけど

けっこう皆さんも好きなんですね(安堵・・)

 

さて、恐怖の晩餐会がはじまります。

予告編ですでにネタバレしていますが、

一応ネタバレということで・・・・

 

 

「生ガキのキャビア添えでございます」

ミニスカートの女性クルーたちがサーブする料理はどれも高級ですが、

はげしく揺れる船内に客たちはみな船酔いで、

食べた料理はみなゲ〇となって

メインダイニングのなかは大変なことに。

 

トイレにこもる人ばかりになりますが

そのトイレも逆流して、船内は地獄の様相。

 

そんななかでも、アル中のトーマス船長とディミトリだけは船酔いせず、

酒を飲み続けます。

ロシア人の資本主義者とアメリカ人の社会主義者は

お互いを罵りあいながらも意気投合。

泥酔したふたりは船長室のマイクでも大声で叫びだし

それが船外にまで聞こえたことから

海賊に襲撃されてしまいます。

 

船に手りゅう弾が投げ込まれ

クレメンティンが

「あら、うちのブランドの手りゅう弾だわ」といっているうちに

爆発し、船は大破。

みんな船外に投げ出されます。

 

 

パート3 「島」

 

数時間後、ヤヤとカールは無人島に流れ着いていました。

ほかに生き残ったのは

① ディミトリ(ロシア人富豪)

② ヤルモ (独身の金持ち)

③ ポーラ (クルーのリーダー)

④ テレーズ (車いす)

⑤ ネルソン (?)

 

ネルソンは機関室の乗組員と言い張っていますが

どうやら、海賊の一味だったようです。

 

そして、脱出用の救命船が到着し、なかにはひとりの女性が・・・

彼女はトイレ掃除スタッフのアビゲイルで

救命船のなかのエビアンやポテチを配ることで

ここでのビラミッドの頂点はアビゲイルとなります。

 

しかも彼女はサバイバル能力に長けており、

海でタコをつかまえて、火を起こして料理することもでき、

今まで金にものをいわせてやりたい放題だった金持ち連中も

アビゲイルのご機嫌を損ねると

食べることすらできなくなってしまうのです。

 

 

 

カールはリュックに入っていたスティック菓子をネルソンと盗み食いして

それがバレてお仕置きをうけますが

そのうち、アビゲイルの「夜のお相手」を要求され

ヤヤは心配でなりません。

 

「アビゲイルをおだてて、つまんないジョークにも笑うのよ」

「でも境界線は守って!キスはダメ、性的なのはもちろんよ!」

 

今までなにもできなかったメンバーたちも、

すこしずつ狩りや漁ができるようになってきますが

山の方も探索してくるというヤヤにアビゲイルも同行します。

 

ヤヤが山のなかで見つけたのは、なんと(稼働している)エレベーター!

この島は無人島ではなく、リゾート地だったのです。

「ちょっとおしっこしてくる」

とその場を離れたアビゲイルは、ヤヤの背後で大きな石を振り上げます。

 

山のなかを必死に走るカールの姿・・・・・    (あらすじ ここまで)

 

 

パート1 → カールとヤヤのモデル業界カップルがお金のことで険悪に

パート2 → 豪華クルーズ船での格差とその後の悲劇

パート3 → 無人島でのサバイバル逆格差

 

3つの章にわかれていて、

予告編でもほぼ話の流れはわかるようになっているんですが

なんか、尺のわりふりが理解不能(褒めてます)

 

パート1はストーリーとしてはそんなに要らないし

2でも、あんなに盛大にゲ〇吐かせなくてもよさそうな気が・・・

 

 

そもそも無人島に漂着したら、まずは助けを呼ぶことですよね。

あの立派な救命船にはきっと発信機とか発煙筒とかありそうだし

豪華クルーザーが消息を絶ったら

海から空から 救助隊やら取材ヘリが来そう

 

でもなぜか、つっこむ気も起こらず

まんまと監督のペースに乗せられてしまった・・・

 

今まで金にモノをいわせて、わがまま放題してきた金持ちが

ヒエラルキーの下位に落ちてしまうのですが

これも不思議と「ざまみろ!」とは思えないんですね。

 

 

女性3人は立場も違うし、ぜったいに憎みあっていそうなもんですが

女性同士、なんとなく阿吽の呼吸でわかりあってる雰囲気なのも

そんなものかなぁと思います。

 

それにしても、船内ではチップ目当てにバリバリ働く

有能なクルーのリーダー、ポーラが

無人島では全く使えないやつ、でしたね。

 

 

これはアビゲイルがひとりで乗ってきた救命船。

右端のネルソンはクルーザーを襲った海賊のひとりだから

本来なら袋叩きにあって追い出されそうなものですが

もうここでは運命共同体の一員になってしまうのもスゴイ。

「1回の襲撃のギャラが3000ユーロ」と聞いて

あんまり儲からないんだね、と同情するのも(笑)

 

まあ楽しくみられはしたんですが

心から笑えるシーンはほぼ無くて、

常に何かイヤ~な感じが残るんですよね。

 

なんでもないシーンにも、気になるアブの羽音とかワイパー音とか、

それから赤ちゃんの泣き声もよく聞こえていました。(赤ちゃんなんていたっけ?)

 

アビゲイルはトイレ掃除係といってたけど

ヤヤとカールの部屋に掃除に来た人が似てた気がするんだけど

違ったっけ?(ああ、もやもやする)

 

ラスト、カールが全力で山を疾走しているところで終わるのですが

あれはなんだったのか?(考えられることはいくつもあります)

ああ、モヤモヤする~!

 

結局、終始、監督の手のひらで転がされ続けてた感じです。

参りました!★5つ進呈します。