前回、途中まで書いたものがあります。

 

これから映画館でご覧になるかたは

こちらだけ見てくださいね

 

 

映画 「3つの鍵」【再】 2022(令和4)年9月16日公開 ★★★☆☆

原作本 「三階 あの日テルアビブのアパートで起きたこと」 エシュコル・ネヴォ 五月書房

(イタリア語; 字幕翻訳 関口英子)

 

 

 

由緒正しそうな高級アパートから

大きな鉄の扉を押して、臨月の女性がカートをひいて出てきます。

そこへすごいスピードの乗用車が暴走してきて

歩いていた別の女性をはねとばすと、アパートの1階の部屋に激突します。

 

 

1階の部屋に住んでいたのは、ルーチョサラという若い夫婦とフランチェスカという女の子。

幸いけがはしませんでしたが、家のなかはめちゃくちゃ。

彼らは共働きで、となりの部屋の老夫婦によく7歳の娘を預けているのですが

この事故のあとも、朝まで預かってもらいました。

 

車を運転していたのは3階に住む裁判官夫婦の息子、アンドレアでした。

彼は酒を飲んでおり、血まみれになりながらも無事でしたが、

車にぶつかった女性は亡くなってしまいました。

母のドーラは息子を抱きしめ、父ヴィットリオは刑務所で償えと突き放します。

 

臨月の女性は2階に住むモニカでした。

夫のジョルジョは出張ばかりで家に帰れず、

モニカは病院でひとりで娘を出産して、退院して帰宅すると、

部屋の前にはジョルジョの兄のロベルトからの大きなプレゼントが置いてありました。

 

 

(1階)

 

となりの部屋に住んでいるのは、レナートとジョバンナという老夫婦で、

いつも自分の孫のように快くフランチェスカを預かってくれるので、

お願いするのが日常化していたのですが

ある日、フランチェスカが

「レナートおじいちゃんは壊れてるの。

なんでもすぐに忘れるし、リモコンもメガネもこわしちゃうし・・・」

 

母のサラは「ほかのベビーシッターを探さないと」といっていましたが

父のルーチョはさほど深刻に思わず、

レナートの妻のジョバンナの不在を聞きながらも、また預けてしまいました。

そうしたら、その日は、レナートとフランチェスカが連れだって外出し、

行方不明になってしまったのです。

 

警察にも通報し、幸い無事に公園で見つかりましたが、

その時、レナートが娘のひざ枕で寝ていたのが

父のルーチョにはショックでした。

 

警察の聞き取りでは

*アイスが食べたくてふたりで出かけたが

 お店がしまっていて買えなかった。

*レナートが尿意をもよおして、トイレをさがした。

*迷子になり、公園にいればパパが迎えに来てくれると思い

 フランチェスカの提案で公園へ行った。

 

*念のため、性的暴行の可能性も調べたが該当なし

 

ただ、それまでもレナートは娘にキスを強要したり、お馬さんごっこしたり

ちょっと異常な行動があったこと、

また、フランチェスカがその直後に学校にいきたがらなかったり、おねしょをしたり

いつもと違っていたため、ルーチョは「レナートの性的暴行」を疑っていました。

 

「公園で娘に何をした!白状しろ!」

病院に入院中のレナートのところへいって首をしめるルーチョ。

なんとか告訴はされずに済みましたが、それでも彼の気はすみません。

 

 

(2階)

 

やっとジョルジョが帰ってきましたが、家にいられるのはわずかな時間。

はじめての出産・育児をひとりでこなさなければならず、

モニカは不安で押しつぶされそうです。

また、ジョルジュは兄のロベルトと不仲で、プレゼントしてくれた

高そうなベビー用品も箱に戻して返しにいきます。

今は不動産業で成功していますが、あんなやつに金を預ける人の気がしれない、といいます。

 

(3階)

 

アンドレアは酒酔い運転で人を殺しながらも

「知り合いの裁判官に頼んで刑を軽くしてもらってくれ」

「アルコール検知器の数字をごまかすことはできないのか」

などと、反省もなく、他人事のようにいいます。

被害者の夫が事故現場に花を手向けにきても、お詫びの言葉もなし。

ドーラはなんとか息子に有利な証言をしてくれる目撃者をさがしますが

父のヴィットリオはそんな妻と息子が我慢できません。   (前回はここまで)

 

続きです(ネタバレ)

 

(1階)

 

レナートのお見舞いにパリに留学中の孫娘のシャルロットが帰ってきます。

子どもの頃から知っているルーチョは気まずい気持ちに。

でも、彼の祖父への暴行を知ってか知らずか、

やたらとルーチョに言い寄ってくるシャルロット。

適当にかわしていたのですが、

「祖母は(祖父の迷子のことについて)何か知っているはず。

アメリカの友人にメールしてるようなんだけど

私はそのパスワードを手に入れた」

「一緒に家でメールをチェックしてみない?」

 

ルーチョは誘いに乗って、隣家に行くと

シャルロットはいきなり服を脱ぎ始めて挑発、ルーチョも我慢できずに・・・・

「メールの話は嘘。ずっとあなたが好きだった」

 

ようやく家の補修が完了してほっとしているルーチョのところへ

「祖父が死んだわ」とシャルロットがやってきます。

彼女はすべて母や祖母に打ち明けたようで、

「夫を侮辱したうえに、孫娘にまで手をだすなんて!」

とジョアンナからも罵られ、

ルーチョはまたまずい状況に。

妻のサラはさらなる夫の愚行に驚き、寝室から追い出します。

 

(2階)

 

義兄の出産祝いを突き返すと夫は仕事に戻ってしまい

モニカはひとりぼっちの子育てに不安でいっぱい。

カラスが部屋にはいってきて、じっとこちらを見ています。

 

(3階)

自宅で軟禁状態のはずの息子のアンドレアが

街中で酒を飲んで暴れて逮捕されたことを知り、

父のヴィットリオは、もう愛想をつかします。

「ドーラ、もう限界だ。

君が息子とかかわるようなら、私との縁を切ってほしい」

 

そして5年後・・・・

 

(1階)

 

12歳になったフランチェスカのバレエの発表会。

娘の成長に涙ぐむふたり。

未成年で処女だったことを知りながら犯した・・・

と、ルーチョはシャルロットの家族から訴えられていたのですが、

「犯罪事実はない」と、無罪の判決がおります。

 

(2階)

 

義兄のロベルトは、顧客の財産を使い込んだとして重大詐欺で

国際手配されていました。

ある日、(外国に逃亡したと思っていた)ロベルトが、突然モニカのところにやってきて

「明日の朝までかくまってくれ。ひと眠りしたら出ていく」

 

出張でずっと不在の夫にかわって、

モニカの話を丁寧に聞いてくれたり、

5歳になった娘のベアトリーチェもすっかり懐いて、

しばらくの間、こっそりかくまうことにします。

 

(3階)

アンドレアが出所し、待っていた母とハグ。

でも

「父の期待には応えられない、縁を切ってひとりでやり直す」

と、家を出てしまいます。

 

 

そして10年後・・・・

 

(1階)

フランチェスカのスペイン留学がきまり

空港まで送りにいくふたり。

「迷子になったあの日、私はそのままパパが来るのを待ってた」

「怖いことはなにも起こらなかった」

というフランチェスカの言葉に安堵するルーチョ。

 

(2階)

モニカが10年ぶりに出産。

こんどは夫のジョルジュも立ち会っています。

 

(3階)

ヴィットリオが亡くなり、妻のドーラは

夫の留守番電話のメッセージに思いのたけを録音します。

「あの子はあなたの葬式にも来なかった、私たちは間違っていた」

「夫か息子のどちらかを選ぶことなんて無理だった」・・・

 

ドーラは夫の遺した衣類をボランティア団体に寄付し

アパートも売ることにしました。

 

ボランティアの主催者のルージから

「私の車でいっしょに来てほしい」と

人里離れた小屋に案内されます。

「アンドレアは私の娘とくらしている」

「子どもも生まれ、未熟なふたりは、助けを欲しがっている」

 

アンドレアは蜜蜂の世話をしており、ドーラを見つけると

「こっちに来るな!」

「せっかく築いた僕の世界にはいりこむな!」

 

ドーラが事故の被害者の夫を訪ね、息子のことを詫びると

彼は黙って席を立ち、蜂蜜の瓶と手紙をみせてくれました。 (おしまい)

 

 

3つの話がかなり頻繁に入れ替わるので、単純に

1階・・2階・・3階・・の順番に書いてしまったので、ぎくしゃくしてしまいましたが、

とくに10年後のシーンは、3つの話が波が押し寄せるように好転していくので

けっこうカタルシスを味わうことができます。

 

上の画像は左からルーチョ、フランチェスカ(17歳)、サラ、

ベビーカーをもっているのがジョルジュ、ベアトリーチェ(10歳)、そしてドーラです。

 

目の前をバンドの奏者たちを乗せたフロートがゆっくり通り、

住民たちがタンゴを踊ってるという図。

インド映画を思わせるようなラストですね。

 

3つの家族の話を2時間に入れ込んで、さらに5年後10年後まで描いているので、

けっこうあわただしいです。

ナンニ・モレッティ監督の家族ドラマだったら

「母よ、」くらいのゆったりさがいいと思うんだけど・・・

 

 

 

あらすじを書いてみると、やっぱり

「娘がとなりの老人にいたずらされたんじゃないか」

という、ルーチョの確信に近い疑惑がメインだったような気がします。

妻も全く気にしていないのに、あまりに異常。

もしかして、ルーチョは子どものころ

教会の神父かだれかに性的暴行を受けたことが

誰にも言えず、心の傷になってたりするのかな?

とか思ったりして・・・・

 

彼はこの疑惑を追及するために、暴行事件起こしたり

性犯罪まで起こすのは、ちょっとやりすぎですよね。

 

ワンオペ子育てとか、認知症とか、子どもへの期待の反動とか

考えさせられることもありますけど、

やっぱりお国柄で、日本人がつくったらこうはならないでしょう。

(そこが面白いんですけど)

 

3つの家族が交錯することはほとんどなく、

ただ、同じアパートに住んでいるのでニアミスする程度。

↑の場面とか、葬儀とかで顔をあわせたり

モニカが沐浴をドーラに手伝ってもらうシーンがあったくらいで、

群像劇としてもったいない気もします。

 

ただ、絡みの部分が増えるとさらに複雑になるから

私の力では あらすじ書けなくなっちゃいますね。