映画「カポネ」 2021(令和3)年2月26日公開 ★★★☆☆

(英語・イタリア語、 字幕翻訳 藤本聡)

 

 

1940年代半ばのフロリダ。

長い服役生活を終えたアル・カポネ(トム・ハーディ)は

大邸宅で妻のメエと平穏な隠居生活を送るものの、

暗黒街の顔役として恐れられていたころの威厳はなくなった上に

梅毒の影響による認知症も患っていた。

だが、FBI捜査官のクロフォードは病気を装っているだけだと考え、

1,000万ドルともいわれている隠し財産を押さえようとしていた。

クロフォードの監視が続く中、症状が悪化したカポネは

現実と悪夢のはざまから抜け出せなくなってしまう。         (シネマ・トゥデイ)

 

1931年10月17日、脱税で有罪判決を受け10年投獄されたカポネは釈放され

家族とフロリダの豪邸で晩年(と言っても40代後半)を送っていましたが

梅毒の後遺症で認知症が進んでいました。

 

右手に棒をもち、恐ろしい顔で暗い部屋を歩きまわるカポネ。

ドアを開くとクロゼットには幼い女の子が隠れていて、悲鳴をあげて逃げていきます。

ほかの子どもたちもぞろぞろ出てきて大喜び。

なんのことはない、屋敷のなかで孫たちとかくれんぼをしていたようです。

子どもたちに組み伏せられて泥だらけのカポネ。

「大丈夫か?フォンス」(ここでは彼はそう呼ばれています)

 

感謝祭の食卓。

妻のメエ、息子のソニー夫婦、兄のラルフィとその子どもや孫たち・・・・

たくさんの使用人のいる豪邸で、豪華なごちそうが並びますが

彼らはカポネの親族というだけで仕事もできず、資産は減る一方。

やむを得ず、屋敷内のコレクションを少しずつ売却するしかなく、

庭の神々の彫刻も運び出されていきます。

「レディ・アトラスを持って行ったら首をちょん切るぞ」と

庭師を脅しますが

「あんな悪趣味な彫刻!」とメエは不満顔。

 

釈放された後も、カポネは依然として監視対象で、屋敷のなかには盗聴器がしかけられ

敷地のまわりからFBIの捜査員が見張っています。

そのことはもちろんカポネもわかっており

「悪魔め、見えてるぞ!」と痰まじりのしゃがれ声でどなります。

 

ある日、久しぶりにやってきた親友のジョニーをカポネは歓迎し 釣りに誘います。

船の上でふたりっきりになったとき

「1000万ドルを隠している」とジョニーにうちあけ

「だたどこにかくしたか分からない」と。

「お前は絶対、変なところにかくさない」とジョニー。

釣り竿に魚がかかるも、釣り上げる前にワニに食べられてしまいます。

激怒したカポネは銃でワニを殺し、まわりは血まみれ。

カポネの奇行にジョニーも驚きます。

 

その後も、悪夢にうなされて派手に脱糞したり、異常行動が増えたり

脳卒中で倒れたり・・・・

心配したメエが医師に相談しますが

やってきたカーロック医師は(司法取引をダシに)FBIに買収されており

治療の名目で隠し金のありかをさぐろうとしますがうまくいかず。

 

業を煮やしたクロフォード捜査官は屋敷にやってきて

直接カポネに尋問しますが、答えるのは同席した弁護士ばかり。

クロフォードはカポネの仮病を疑っているのですが

尋問の最中にまた豪快に脱糞してそれっきりになってしまいます。

 

屋敷にはクリーブランドから何度も電話がかかります。

カポネは隠し子のトニーからだと感じますが、無言のまま電話は切られてしまいます。

その後カポネの夢のなかに風船を持った幼いころのトニーの姿がでるようになり

アートセラピーでは、トニーの絵もかくようになります。

これをみたソニーは自分以外の息子の存在を知り、メエに話すと

彼女は度々かかる無言電話の主だと察します。

 

妄想がさらに進んだカポネはマシンガンを手によろよろと歩き

ガウンの下はおむつ、葉巻のかわりにニンジンを加えたまま、屋敷内の人々を銃撃します。

池に落ちてワニに襲われ、波にのまれると田舎の一軒家があり、トニーもでてきますが、

ここで意識が途切れます。

目を覚ましたカポネはまた屋敷にむかってマシンガンを撃ちまくります。

(たくさんの人が銃撃されますが、ほとんどがカポネの妄想のように思えます)

 

家財道具はレディアトラスもふくめ、ほとんどが売却され

がらんとしたテラスに座るカポネのそばにやってくる人物。トニーでした。

カポネの手を握るトニー。カポネもその手を握り返します。

 

カポネの死後、家族たちは名前を変えて転居し、

隠し財産の1000万ドルは未だ見つかっていない、と字幕がながれます。  (あらすじ おしまい)

 

暗黒街の顔役といわれたカポネの晩年。

 

 

「シチリアーノ 裏切りの美学」のマフィア、トンマーゾも最後はフロリダの邸宅で病死していたので

そんなイメージをもっていたのですが、

カポネの最期はなんとも想定外でした。

「スカーフェイス」といわれるほど顔の傷は有名ですが

おそらく梅毒のせいで顔はボコボコで、声もアヒルみたい。

いつも葉巻をせわしく吸い続け まだ40代なのに認知症でオムツをあてられています。

 

トム・ハーディが演じるというので、回想シーンでバリバリ現役のときも出てくるかと思ったら

なんと皆無で、ずっと廃人の姿でした。

常に現実と妄想をさまよっており、どこまでが現実なのか

観客にもわざとわかりづらく描いているようです。

 

特に最後の乱射シーンは 違和感のないはっきりした映像で

現実に起こったのかと思ってしまうんですが、

死んだはずのひとが次のシーンでは無傷だし、

そもそもあんな飾り物みたいな銃にそんなに弾は充填できないよね、と思ったりして・・・・

 

現実ではないとわかりながらも、拷問したり、目玉をくりぬいたり、なかなかハードなシーンも多いです。

臭ってきそうなシーンも2回あるしね。

 

カポネはブルックリン生まれのイタリア系アメリカ人で、縄張りもシカゴだったから

全編英語でもいいように思ったんですが、カポネはよくイタリア語を使います。

どう使い分けているのか気になったんですが、ちょっとわかりませんでした。

音楽の方はイタリアのクラシック曲が中心でした。

プッチーニの「誰も寝てはならぬ」、ヴィヴァルディの四季「夏」・・・

モーツァルトはオーストリアだけど「フィガロの結婚」はもともとはイタリア語のオペラ台本です。

「パッヘルベルのカノン」とか「カルミナ・ブラーナ」は・・・・あ、正確にはドイツですね。

また、カポネはジャズファンだったようで

妄想シーンでは、サッチモみたいな人が「ブルーベリーヒル」を歌っていました。

 

アル・カポネのような人物の「晩年だけ」を描く映画があってもいいとは思いますけど、

あとで調べたら、フィクション部分がほとんどみたいで、ちょっと唖然としてしまいました。

面白くするための脚色はある程度はOKですけど、基本、史実に基づいて欲しかったです。

私のような知識がない人は、すっかり騙されて知ったかぶりして恥かきそうですから・・

 

カポネの隠し財産はまだ見つからないということですが、

どう考えても「レディアトラス」が怪しいよね?

でもこれも「カポネのお気に入りの石像があった」ということ自体フィクションだったら

なんか拍子抜けしてしまいますよね。

 

(追記)

そうそう、今日シネマカリテであの「新宿タイガー」さんに遭遇しました。

自転車移動しているところはお見掛けしたことあったんですが

こんな至近距離(というか、私がぼーっとしていて軽くぶつかってしまった)なんて初めてです。

 

 

 

ご存じない方のためにネットからの画像を貼っておきますが

(すでに映画にもなってます!)

虎のお面に女物の着物に大量のぬいぐるみやいろんなものをぶら下げているのに

おどろいたことに

ぜんぜん気配がな~い!

これだけ派手派手なのに、無臭で無音なんですよね!

 

 

そしてスクリーン2の最前列で 私と同じく「カポネ」を鑑賞。

映画が始まったらピンクのふわふわしたのは脱ぐのかな~?

とちらちら見てたんですが、本編が始まる前までは、脱がないものの

頭を低くして後ろの人たちに配慮してたみたいです。

 

これだけ個性的なスタイルでも スタッフさんもお客さんもみんなノーリアクション。

さすが新宿だな~!と感心しました。   おしまい