映画「きみの瞳が問いかけている」令和2年10月23日公開 ★☆☆☆☆

 

29歳の明香里(吉高由里子)は、思いがけない事故で視力と家族を失うが、明るく過ごしていた。

ある日彼女が、管理人と間違えて塁(横浜流星)という青年に話し掛けたのをきっかけに、

二人は会話を重ねるようになる。

キックボクサーだった塁は、ある事件が原因で心を閉ざしており、

笑顔を向けてくれる明香里は大事な存在だった。

やがて自分の過去が彼女の失明と関係していたことを知った彼は、

高額な手術代を稼ごうと賭博試合のリングに立つことを決意する。    (シネマ・トゥデイ)

 

駐車場の管理人の仕事をはじめたルイのところへ

いきなり差し入れをもって押し掛けてきたアカリ。

彼女は目がみえないため、前の管理人の老人とまちがえてきてしまったのですが

それをきっかけに毎日やってきては一緒にドラマをみることになります。

 

ルイは、キックボクシングの有望選手だったのですが、

何年もジムを無断で休んでおり、そのお詫びのためにジムを訪れます。

「手塩にかけて育ててやったのに、ふらっと消えやがって!」

トレーナーは怒りながらも戻ってきてくれたのを喜んでいます。

ところが、ルイは、二度とリングに立つつもりはない、と言い切ります。

 

アカリが転んで足をくじいたため、ルイは病院につれていったり、

自宅までおんぶで送ったり、ふたりの距離は急速にちかづいていきます。

アカリはルイのことを知りたがりますが、彼は自分の過去については固く口を閉ざしています。

 

あきらめきれないジムのトレーナーは、ボクシングの再開を強くすすめますが、

ルイの決意はかわらず。

姿を消していた間、地下の違法な格闘技の試合にでていたこと、

犯罪に手を染めて、刑務所にはいっていたことを告白します。

 

一方、アカリは電話受付の仕事をして自立しているのですが、

しつこくつきまとう上司に悩まされています。

ある日家に入ろうとすると、その上司が待ち構えていて、部屋にあがりこんでしまいます。

むりやりレイプされそうになったその瞬間、ルイがやってきて、上司をボコボコにしてしまいます。

翌日、職場にはいられずに、退職届をだすアカリ。

責任を感じたルイは

「おれがアカリさんを守るから」

そして、ルイの「一番古い記憶の場所」にアカリをつれていきます。

 

それは海辺で、幼いころ母につれてここにやってきて、

母はルイを抱いて入水自殺を図ったのです。

ルイは生き残り、養育院でシスターたちに育てられました。

 

「シーグラスを探して」とアカリ。

「ガラスもここまで削れて丸くなったら、もう人を傷つけることはない」

「傷ついた人はもう人を傷つけることはない」

「シーグラスは私たちのお守りね」

 

ルイはボクシングのトレーニングを再開し、

昔の勘を取り戻した彼は、どんどん試合を勝ち進んでいきます。

アカリも陶芸の工房を作りたいという夢を実現しようと

ふたりとも前向きになっていきます。

 

アカリは自分が視力を失った日の話をルイにします。

4年前のクリスマス、免許をとったばかりのアカリが両親を乗せて運転していると

突然上から火だるまの人が降ってきて、横転し、両親は亡くなり

アカリも光を失ったというのです。

その話を聞いて驚くルイ。

その火だるまの男を借金まみれにして追い詰めたのは

ほかならぬルイ自身だったからです。

 

ルイが出所したことをききつけて、昔の悪い仲間が近づいてきます。

「お前のせいで死んだ人間は戻らない」

「はみ出し者同士、仲良くしようぜ」

 

ルイが家にかえるとアカリの姿はなく、病院に運ばれたあとでした。

部屋で転倒して肋骨にひびが入り、数週間の安静が必要とのこと。

さらに、アカリの目は網膜剥離が進行していて、

今手術をしないと完全に視力を失うといわれます。

ただ、それには高額な治療費がかかるとも。

 

ルイは高額のファイトマネーがもらえる違法な格闘技にでることを決意し、

前金をアカリと自分が死なせた被害者の妻に送ります。

対戦相手はドレッドヘアの野獣みたいな外人で、

グローブもつけずに相手が死ぬまで戦いつづけるというデスマッチ。

ルイはこの試合に勝ちますが、みんな相手側が勝つと賭けていたようで、

試合後、車で轢かれた上にフードの男に何度もナイフでさされて意識をうしないます。

 

2年後、

手術のおかげで視力を取り戻し、アカリは陶芸の店をオープンしていました。

偶然ボランティアのマッサージで入院中のルイに遭遇しますが、

顔がわからなくて気づかず。

ただそのあと店を訪れてくれた風変わりな客がルイだということに気が付きます。

                                                  (あらすじ おしまい)

 

 

 

目の見えない娘に恋した男が、犯罪すれすれのことをやってお金を手に入れ

娘は手術で視力を取り戻すも、男の顔がわからず、男はそっと立ち去る・・・・

的な古典的な話、人生のなかで何度か聞いたことがあります。

チャップリンの「街の灯」もそうだし、ほかにもあったような・・・・

 

元ネタの韓国映画「ただ君だけ」もその一つのようで、本作はそのリメイク。

日韓のリメイク合戦はかなり多くて、

「みえない目撃者」「サニー」「あやしい彼女」「いま、会いにゆきます」・・・

この辺りは観ましたが、私とは相性悪くて、よかったのは「見えない目撃者」くらいです。

 

韓国映画「ただ君だけ」は観てないので、比べようもないんですが、

そもそも、「お金があれば手術をして目が見えるようになる」って

こんな寓話的な設定を現代にもってくること自体、かなり無理無理ですよね!

お金が払えないだけで、若いアカリが視覚障がい者になってたの?

 

たとえば、重度の白内障とかだったら、手術でかなり見えるようになりますけど、

これは老人の病気。費用も保険適用で5万円くらいです。(老人はもっと安い)

これすら払えない、あるいは手術が怖い、他の病気があって手術できない・・・

そんな理由で(手術で治るのに)見えないままの老人の話ならアリでしょうけど。

 

そもそも最初に登場したとき、アカリは(こっちを見ているのに)

ルイが声を発するまで、いつものおじいさんとルイの区別もできませんでした。

実は、あの時、ちょっとは見えてたの?

視覚障がい者が長い階段の上の部屋に住んでいたり、

部屋のなかがあまりに美しいのも違和感。

もしかして、見えないふりしてルイに近づいた?とまで思ってしまいました。

 

こういう、見えてるのか見えてないのか、脚本のご都合でころころ変わるのって

演じる吉高由里子はやりにくかったでしょうね。

 

この映画、脚本はグダグダですが、キャストは最高でした。

 

ジムのトレーナーのやべきょうすけとか、シスターの風吹ジュンとか

裏社会の半グレのみなさんとか・・・

 

そのなかでもルイ役の横浜流星が頑張っていて、

ストイックな役作りと肉体改造で臨んだ格闘シーンは見ごたえありました。

彼、ジュニアの空手チャンプだったんですよね。

今までこれを生かせる役がこなかったことのほうが不思議ですが、

なんか、もっとクオリティの高い作品で

この実力を発揮して欲しかった気はしますけど・・・

 

でもそれは私の感想であって、本作は世間的には人気が高くて

鬼滅の刃ばっかりのシネコンでもしっかりスクリーン数を確保しているのだから

これはこれで良かったのかな?

 

 

 


 

学園胸キュンドラマ系はほとんど観ないのですが、

彼の過去作では線の細い訳ありな役が多かったです。

本作もかなりワケアリですけど、体重を10キロ増やして(それでも細いですけど)

お顔も体もひたすら美しい・・・・

 

とにかく彼がこの先、いい作品に恵まれることを祈っています。