映画「TENET テネット」 令和2年9月18日公開 ★★★★☆

(英語; 字幕翻訳 アンゼたかし)

 

 

 

ウクライナでテロ事件が勃発。

出動した特殊部隊員の男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、捕らえられて毒を飲まされる。

しかし、毒はなぜか鎮静剤にすり替えられていた。

その後、未来から「時間の逆行」と呼ばれる装置でやって来た敵と戦うミッションと、

未来を変えるという謎のキーワード「TENET(テネット)」を与えられた彼は、

第3次世界大戦開戦の阻止に立ち上がる。                     (シネマ・トゥデイ)

 

ウクライナ、 キエフ国立オペラハウス。

指揮者がまさにタクトを振り下ろしたその瞬間、武装したテロリスト集団が乱入します。

鎮圧のために送り込まれた部隊のなかに、CIAエージェントの男が潜入し

「プルトニウムと思われる荷物」を確保しますが、敵につかまり拷問をうけることに。

隙をみて自殺カプセルを飲んだ男は、ベッドの上で意識を取り戻します。

 

男を救ったのは、第三次大戦を阻止する謎の組織(テネット?)で、

「(仲間のために死を選んだ)君はテストに合格した」と。

そして具体的なミッションをしらされないまま行った施設で、時間の逆行する瞬間を体験します。

壁に打ち込まれた弾丸が男のもつ銃口に戻ってくるのです。(これと同じ現象をオペラハウスでも経験)

次にムンバイで、相棒となるニールと合流して、事情を知る武器商人のサンジェイの妻プリヤと会い、

ロシア人セイターという黒幕の存在を教えられます。

 

セイターと別れて息子を守りたい彼の妻キャットの存在を知り、

彼女の弱みであるアレポの書いたゴヤの贋作を取り戻すのを条件に、セイターに近づこうとします。

オスロ空港のロータス社の保管庫にあるその絵を取り戻すために、

なんとジャンボ機を衝突させてセキュリティを解除することに成功しますが、

回転ドアからでてきたマスク姿の男たちに襲撃され、ここでも時間が逆行する体験を。

セイターと会うことはできましたが、彼の信頼を得るために

キエフへ向かうプルトニウム241を盗む作戦を実行しますが・・・・ (あらすじ とりあえずここまで)

 

 

ノーラン監督の作品は、時間軸をいじるものが多く、「メメント」「インターステラー」「インセプション」

それに「ダンケルク」なんて実在のできごとを扱った「歴史ドラマ」なのにもかかわらず、

「陸」「空」「海」で流れる時間が違うという、想定外のものでした。

本作も時間の順行と逆行が同時に発生するという・・・・

これも「タイムスリップ」の一つなのかもしれないし、

アイディア自体は 低予算SF映画っぽいんですけど

それを金にいとめをつけずにやってしまうと、「こうなるのです!」的な??

 

一度見ただけでは、私の頭でわかるはずもないんですが、

とりあえずわかったことだけ書いてみます。

 

まず、タイトルの「テネット」

日本語は「上から読んでもトマト、下から読んでもトマト」ですが、

音声でいうと、トマト(TOMATO)の反対はオタモト(OTAMOT)で

赤坂(AKASAKA)の反対が赤坂(AKASAKA)なんですよね。

そうすると、テネット(TENET)の反対もテネット(TENET)です!

上からも「TEN」下からも「TEN」なので、2点から10キロのところに何かある?

と思っていたんですが、10キロじゃなくて、

こっちから10分、反対側から10分逆行して、挟み撃ちにするんでした(おお、ネタバレですね)

 

セイター(SATOR)の反対がロータス(ROTAS)社・・・というのはすぐに気付いたけれど

アレポ(AREPO)の反対も、最初にテロのあったオペラ(OPERA)ハウス・・・でした。

 

これらの回文を表にするとこんなにシンプルでパーフェクト!

 

「農夫のアレポ氏は馬鋤きを曳いて仕事をする」という意味の有名な回文で

TENETが十字架のように交差しています。

 

 

ところで、ミステリー調のドラマでは、とりあえず出てくる人はみんな疑う必要があるのですが

この計画の黒幕が誰なのか、最後までわかりません。

プリヤがかなりあやしいですが、

いろんなことを知りすぎてるニールは相棒だけど信用できず、

(あらすじではスルーしてしまいましたが)アイブスやマヒアも有能すぎて怪しい・・・

マイケル・ケインが登場したときに、(大物俳優だから)黒幕?と思いましたが、

彼は驚くほど存在感ない役柄でしたね。

要するに、一番あやしいのは記憶も名前もない主人公のこいつです!

 

 

と思ってたら、まさか、当たってしまいました(これもネタバレですね)

男を演じるジョン・D・ワシントンはデンゼル・ワシントンの息子なんですけど、

ブラック・クランズマンでアフロヘアーの主人公をやったときも、

あんまりパパの名前はでてきませんでした。

 

 

彼もけっこう大柄だと思うんですが、キャット役のエリザベス・デビッキがそれより明らかに背が高くて

CG嫌いのノーラン監督がCGで大きくした?と思ったんですが、

なんと彼女の身長は191cmなんですって!

今まで何度か彼女の出演作は見てるはずなんですけど、身長が気にならなかったのは

そういうふうに工夫して撮影していたのかもしれないけれど、

本作に限って言えば、彼女の細くて長い手足あってこそのキャットでした。

高身長バンザイ!

 

 

「高速道路の逆走」は現実世界でも脅威ですが、

予告編でも見られる「逆行世界の車」とのカーチェイスは なんといっても見どころです。

ここにはいろんな「仕掛け」が隠されていて、

ドライバーはあえて見えないようにしてますが、二度目に同じシーンがでてくると

「なるほど」と思って、「(最初のシーンを)もっとしっかり観とけばよかった」と後悔するはずです。

このシーンに限らず、

「何回も観て、すべての意味を解いて、疑問点をなくしたい!」という人も多いでしょうが

それって、映画会社の「思うつぼ」ですね(笑)

私はそこまでは思わないけれど、今度観ることがあるとしたら、

「赤いストラップ」だけはしっかり頭に残しておきたいと思います。

 

「セイターはアルゴリズムの8つまで集めて、あと一つで完成」

「完成して起動させるとこの世の終わりで人類は滅亡する」

なんかね、

アイテム集めって、マーベルとかDCコミックとかディズニーとかハリポタとか みんなやってて

思いっきりベタじゃないですか? なんだかなぁ・・

 

それから、ノーラン監督は、すべてガチで撮影して、

ほとんどCG使わないことで有名ですが、

それをこの作品でやったらダメ!と心から思いました。

だって、俳優(というかスタントマン)を危険にさらしますよ。

 

空港でも本物のジャンボジェットを一機炎上させてましたが、

こんなのCGでいいじゃん!

そもそもこのシーン自体、べつになくてもいいし。

(絵を一枚盗むために、飛行機を衝突させてセキュリティ外そうとか、普通は考えるかな?)

 

IMAXとか4DXで見ていたらまた印象もちがうのでしょうけど、

この作品はお安いCGでチョイチョイと作って、もっと謎解きのヒントを分かりやすく出して

コスパのいいB級SFミステリーの方があってる気がしました。

 

そして、本作がもし賞をとるとしたら、それは監督賞ではなくて、

ずーっと長いこといわれつづけていた(でもまだ実現していない)スタント部門をつくって

監督の「わがまま」で危険にさらされたスタントマンたちを称えるべきです、絶対に。