映画 「WAVES / ウェイブス」 令和2年7月10日公開 ★★★☆☆

(英語; 字幕翻訳 松浦美奈)

 

 

フロリダで高校生活を送るレスリング部のタイラーはスター選手で、成績も良く、美人の恋人もいた。

厳格な父親と多少の距離はあるが、満ち足りた毎日を過ごしていたある日、

タイラーは肩を負傷してしまう。医師は大事な試合に出場することを許さず、

さらに恋人の妊娠が発覚して順調だった人生が狂い始める。         (シネマ・トゥデイ)

 

フロリダ州マイアミ

高校生のタイラーはガールフレンドのアレクシスを隣に乗せて

大音量で音楽をかけながらノリノリでハイウェイをぶっ飛ばします。

(この画面からはイカレたチンピラっぽいですが)

実は彼は奨学金ももらってるレスリングの花形選手で、

日々ストイックなトレーニングに明け暮れています。

優等生でピアノも上手くて、恋人のアレクシスは学校で女神といわれている美女。

スクールカーストの最上位に君臨しているような生徒です。

 

彼の家族は、建築業の父ロナルドと医師?の継母キャサリン、妹エミリー。

豪邸に住むけっこうな金持ちのボンボンだから、

甘やかされてそうですが、そうではない。

父のしつけは厳しく、礼儀にもうるさいし、口答えはNG、

常にトレーニングの成果や学業のレベルも監視されています。

彼自身は、期待されていることに重圧は感じるも、当然のことと思っているようにみえるんですが・・・

 

ある日、タイラーは左肩に痛みを感じ、父の鎮痛剤を飲んでごまかしてトレーニングしていましたが、

病院で診察を受けると、重症のスラップ損傷で、

試合はもちろん練習も無理と医師から告げられます。

 

このことは両親にも学校にもいわずに、痛みを我慢して試合に出場するタイラー。

フォール勝ち寸前まで行くも、痛めた肩を攻撃されて、動けなくなってしまいます。

病院送りで、スラップ損傷だといわれていたこともばれ、

レスリングできなくなってしまいます。

痛みが治まると、久しぶりにアレクシスとビーチにいって気晴らしするも、

「生理がこない。妊娠したかも」と告げられます。

 

「だれにも相談できない」と泣くアレクシスに

「僕がいるから大丈夫」と、車でクリニックに行くと

「中絶反対」「地獄に堕ちろ」とかプラカードをもった活動家が騒いでいます。

養子縁組で詐欺をしたり問題のある団体のようで

警官からも「刺激するな」「無視しろ」といわれ、診察を受けます。

クリニックをでると彼らにまた汚い言葉をあびせられますが

「ニガー」といわれて我慢できず、タイラーは殴りかかりそうになります。

 

帰りの車のなかで

「やっぱり中絶はできなかった」というアレクシスに激怒するタイラー。

「なぜだ!高校生で赤んぼなんか育てられるわけない」

「わかってないのね、私の体なのよ」

大げんかの末、車から降りて歩き出すアレクシス。

むしゃくしゃしたタイラーは怪しげなパーティで酒やドラッグをやって、

夜中に家のトイレで吐いていると

妹が起きてきて

「パパやママが起きるから静かにね」といわれ、抱きしめられます。

 

アレクシスとやっと電話がつながり、謝りますが、

「私の親が力になるといってくれるから、子どもは生む」といわれ また激怒。

別れをつげられ、スマホもブロックされると、もう自分をおさえられず

部屋のなかで暴れまわります。

 

彼女がパーティ会場にいることがわかると

父の車のキーを盗んでそこに向かうことに。

両親にとがめられますが

「お前は母親じゃない、ガキも産めねえただのクソ女だ」

とののしり、車を走らせます。

 

母は友だちに電話して行先をつきとめ、車で追いかける父に住所を転送しますが

そのころタイラーはアレクシスをみつけて、口論になり殴り倒します。

血まみれでうごかなくなった彼女をみつけて誰かが悲鳴をあげます。

逃げさるタイラー。追う警察。

妹のエミリーも会場にいて、父に保護されます。

家に逃げ帰ったタイラーは逮捕され、救急車で運ばれたアレクシスは亡くなります。

                                 (前半  あらすじ ここまで)

 

「ミュージカルを越えたプレイリストムービー」という触れ込みだったので

新しい曲を全く知らない私には良さがわからないのは承知の上で鑑賞。

「ムーンライト」風の黒い肌の映える映像に

ほぼ何も起こらないストーリーなんだろうと思ってました。

 

そしたら、びっくり!

タイラー役のケヴィン・ハリソンJRが主演していた「ルース・エドガー」並みの

なんかすごい話でした。ついには殺人事件まで起こるし・・・・

特に「2部構成」とは謳っていませんが、

優等生のタイラーが転落して殺人犯になるまでが前半。

妹のエミリーの1年後の話が後半となります。

 

私は音楽がまったくわからないので、ストーリーのことだけを書いていきます。

(★★★はストーリーだけの評価です)

 

まず冒頭の大音量の音楽。

窓をあけてあんな音を鳴らして、体をめちゃ揺らしながら運転して

スピードもかなり出てそうで、ぜったい酒か薬かやってそうな雰囲気。

もうハラハラしてしまって、こんなバカップルに2時間15分もつきあうのかと思って

観にきたことを心から後悔しました。

 

ところが次のシーンで、彼らが街のチンピラじゃなくて、まともな高校生なのがわかり、

しかも家は金持ちで、レスリングのスタープレイヤーだということがわかります。

ルース・エドガーも親も知らない顔をもっていたけれど、タイラーは家ではあんなに従順なのに

外ではリア充というか、かなりやりたい放題ですよね。

 

 

父はとにかくタイラーに対して常にハードルを上げてきます。

試合に勝っても

「教えたとおりにすれば20秒は早く勝てた」とか

コーチじゃないんだから、親として褒めてあげろよ!って思ってしまいます。

「独立して責任を負うようになってから文句をいえ」とか

「訓練も家の手伝いもレスリングも無理にやらせたわけじゃない。お前が望んだからだ」

「お前に厳しくするのは親の義務だからだ」とか

すべて自分が正しいんですね。

 

妻ともよく言い争いになるけれど

「よく話し合おう」とか「いっしょに立ち向かおう」

とかいいながら、結局自分の意見を押し通します。

 

タイラーも父のいうことに「反発しない子」でいるうちに

自身もだんだん父に近くなっていきます。

アレクシスが妊娠したときも

「おれをみろ」

「何も心配するな」といいながら

「妊娠中絶」の一択で、話し合いの余地なんて残しません。

ただ、父は妻子に手をあげるようなDV親父ではないので、

タイラーの暴力性はどこからくるのか・・・・?

 

それにしても、日本の一般的な高校生とあまりに生活スタイルがちがうから

とまどうことばかりです。

① 酒・ドラッグは自由

② 車の運転もOK

③ 手術が必要な重篤な診断も親にいわない

④ 親の承諾なしに中絶できる

 

車の運転はともかく、親がいなくてもなんでもできちゃうのはどんなもんかと・・・・

とくにタイラーの父は「子どもの自由をかなり限定してる人」なので

絶対にありえないと思うし、

キリスト教信者のくせに、中絶の一択ってありですか?

 

アメリカの実情がわからないから強くはいえませんが

かなり粗い強引な脚本であることは事実です。

 

特になぐったわけでもなく、床に倒れただけなのに

アレクシスがあっさり死んじゃうとか、

彼女の親はなんにもいわないのか?とか

スター選手の肩の故障をチームのコーチが気づかないとか、

文句言いたいことは山ほどあります。

 

映画「マンマ・ミーア」なんかだと、アバのヒット曲の歌詞をそのままセリフのように使っているから

ストーリーに無理がでてもしょうがないですが、

本作では、歌詞の字幕を見る限り、曲にはそれほど縛られてないように思えるのですが

もうちょっと共感できる話にしてほしかったかな。

 

 

 

 

長くなりますが後半です。

 

タイラーには終身刑、30年後に仮釈放という重い判決が下ります。

殺人者の家族だと心ない書き込みがされるのでエミリーはSNSを閉じてしまいます。

エミリーは兄ほど期待されず、親からも放置されていたから

孤独には慣れています。

ある日学校でルークに声をかけられ、エミリーはデートに誘われます。

彼は兄のレスリング部の仲間で、すべてを知った上で誘ってくれたのです。

「みんなバカばっかりだ」「そんなのほっとけ!」「知るかよ」

エミリーの心がちょっと楽になっていきます。

 

ルークと家族の話をするうちに、

彼の両親は離婚していて、別れた父はDVで酒浸りのひどい男だったと聞きます。

「ママは僕を連れて縁を切った」

「今はガンにかかってる。クソ野郎だからいい気味だ」

 

実の母は過剰摂取で死んだけど、

今の母(キャサリン)はよくしてくれる、とエミリーも話しますが

キャサリンとロベルトは事件以降うまくいかず、いつもケンカばかり。

「タイラーを追い詰めたのはあなたよ」

「エミリーのことはほったらかしで私に押し付けた」

両親の言い争いを聞くたびにエミリーは悲しい気持ちになります。

 

父とひさしぶりに釣りにでかけたエミリーは

父から母とうまくいっていないこと、

事業も損失がふえる一方なこと、などを聞かされます。

泣く父をやさしく抱きしめるエミリー。

そして、ずっと心にかかえてきたことを告白します。

「事件の日、私は彼女をおいかけるタイラーを見てたの」

「すぐに追いかければ、止められたかもしれないのに、

私は体が動かなかった」

「私のせいなの。 私が悪かった」

 

「今はタイラーが憎くてたまらない」

「邪悪なモンスターよ」

というエミリーに

「強い憎しみは人を破滅させる」

「お前はあふれる愛で生きていけ」

「愛はすべての罪を覆う」

 

エミリーはルークから、彼の父の死期がせまっていることを聞きます。

「すぐに会うべきよ」

「(車が修理中なら)私の車でいけばいい」

エミリーは親に嘘をついて、フロリダからミズーリまでの長い運転を請け負います。

 

病院にはすっかり痩せた父がいました。

「意識が安定しているうちに 安心させてあげて」と看護師。

「後悔することばかりだ」という父に

「そんな必要はない。安心して」

「もう戦わなくていい」

「心を平安にしてよりよい場所にいける」

そして安らかに父は旅立ちました。

涙をながすルーク。

 

エミリーの両親は和解し、

母はタイラーの面会へ。

 

自転車にのり両手をひろげるエミリーの後ろ姿・・・・    (後半 あらすじ  ここまで)

 

 

 前半が幸せの絶頂からの 角度のついた転落劇だったのに対し、

後半はどん底からのゆっくり時間をかけた再生劇になっています。

エミリーはほんとに素直ないい子なので、おかしな男にひっかからなくてよかった。

ルークでよかった!って、もう親目線です。

 

このふたりも良くドライブするけれど、安全運転だからとりあえず安心。

お酒も飲まないし。

初々しいふたりなんですけど、やることはちゃんとやっちゃうから(笑)

これで「エミリーが高校生で妊娠」

てことになったら、どうしようと、そこだけはちょっとひやひやしましたが・・(再度 親目線)

 

最後にちょっと俳優のことを書きます。

タイラー役のケルヴィン・ハリソン・Jrは、「ルース・エドガー」のとき、

スピーチはすごく上手いけれど、陸上の選手というわりに、走るところだけ画像処理で

スピード感をだしてるように見えて、個人的に「運動オンチ疑惑」があったんですが、

本作ではガチな肉体派のスポーツ選手でした。

パンプアップ度では父に負けるけど、役者さんはなんでもできるんだなぁ~

 

実は、私が、確実に自分の好みではない本作を公開日にみたのは

ルーク役のルーカス・ヘッジズが目当てだったからです。

ライバル(と勝手に思ってる)ティモシー・シャラメの主演作も公開中ですが、

最近どんどんティモシーが もてキャラで王子さま化してて

同年代なのに、なんかちょっと納得いかない気もしますが。

https://ameblo.jp/kak-dela/entry-12461252789.html

 

 

 

前にこんな記事をかいたので重複はさけますけど、

私は断然ルーカス派ですから、

8月と9月に公開予定のこの2作は絶対にみるつもりです